『さよなら一太郎さん~機械音痴な物書きはWordで小説を執筆できるのでしょうか?』
先日、大変ショックなことがありました。
私にとって、非常に大きな変換点になるかもしれないので、書き残しておこうと思います。
きっかけは、新しいPCを購入したことでした。
これまでずっとウィンドウズを使っていたのですが、どうにも10と相性がよろしくなくて、アップデートのたびに、あれが消えたり、これが動かなくなったりと、おろおろすることを繰り返し、もうウィンドウズはいや! と思い続けておりました。
今回、またしてもウィンドウズが重くなり、買い換えに至ったのでした。
最初に目をつけたのは、軽いと評判の、グーグルのクロムブックです。
私は機械音痴なので、わけのわからない機能がごちゃごちゃとついているものよりも、シンプルなものに惹かれます。検索ができて、仕事関係のデータの送受信ができて、執筆ができれば十分です。
けれど、クロムブックは一太郎に対応していないということで、残念ながら候補からはずれました。
私と一太郎さんとのおつきあいは長く、もう十五、六年になるでしょうか?
ちょうどファミ通文庫さんで最初のご本を出していただいたころでしょうか。ワープロ専用機からPCでの執筆に移行し、最初はWordで書いていた――いえ、書こうとしたのですが……。
それはもう、お話にならないくらい悲惨でした。
勝手に文字や行が動いたり、打ちたいところに文字が打てなくなってしまったりするのに、毎回涙し、どうにも耐えられず弱りきっていたところ、受賞パーティーで会ったご親切な作家さんから、一太郎をおすすめいただいたのでした。
「買うならlightがいいよ」と――。
早速購入した一太郎lightは、それまでWordに悩まされてきた私には、感動的に書き心地のよいソフトでした。
さくさく動くし、ATOKの文字変換もスムーズだし、Wordのように余計なお節介もやきません。
以降、ずっと一太郎さんとともに執筆してまいりました。
私の最愛はlightシリーズだったのですが、こちらはlight2をもって終了してしまいました。
とても哀しかったです。
今でも復活を切望していますが、それ以外の一太郎さんも、とても頼もしいパートナーでした。
幸いファミ通文庫さんは一太郎の環境を持ってらして、一太郎で書いたものをそのまま送らせていただくこともできたのです。
これは今考えると、非常に恵まれたことでした。
というのは、他の出版社さんでお仕事をするようになってから、当然のように「原稿はWordかテキストで送ってください」と指定されるようになったからです。一太郎には対応していないので、一太郎で受け取っても原稿を開けないとのことでした。
テキストに変換するのは簡単ですが、それだとルビなどのデータが失われてしまいます。
最近ではPDFでデータを送ってこられる出版社さんも多く、これに関しては私はまだまだ未知の世界で、いまだにどういうものなのかわかっていません。
そんなふうに、Wordを求められる中で、最初からWordで執筆できるようになったほうがいいのだろうか? と思うことが増えてゆきました。PCを買い換えるたびに、ほとんど使わないWordとExcelを、データの受け取りのためだけに別購入するのも勿体なく思っていましたし。どうせなら執筆にも活用したい…。
それでも一太郎さんの快適さは離れがたく、たとえウィンドウズとお別れする日が来ても、一太郎さんとはずっと一緒だと思っていたのでした。
ところが、です。
最終的にマックのノートブックとアイパッドを購入し、さて、一太郎さんもバージョンアップしよう、とサポートセンターに電話をかけて、はじめて知らされたのは、一太郎はマックに対応していない! という恐ろしい事実でした。
一太郎さんが使えない!
しかもATOKも、年間契約でしか使用できない!
一太郎でしか書けないのに、一太郎を入れられないのでは、どうすればいいのか?
頭の中が真っ暗で、半べそです。
当然マックでも、使えると思っていたのに。
マックを購入したお店のスタッフさんも、一太郎は対応していないとはおっしゃっていませんでした。
クロムブックをやめたのは、一太郎が使えなかったからなのに。
マックでも使えないだなんて!
もうマックは検索用と割り切って、新しいウィンドウズを購入して、これまでどおり一太郎で書き続けるべきか迷いました。
ウィンドウズ10のストレスと、一太郎を使えないストレスを秤にかけたら、一太郎を使えないストレスのほうがはるかに、はるかに、大きいです。
気持ちは、今すぐ家電量販店のPCコーナーに駆け込んで、ウィンドウズを購入したいです。
だけどその前に、マックで小説が書けるかどうか、試してみてからでもいいのではないか。
せっかく御縁があって、うちにお迎えしたのだから、使ってあげたい。
でも、マックで執筆されている作家さんは、どんなソフトを使っておられるのでしょう?
編集さんにうかがったところ、「一番汎用性が高いのはWordだと思います。あとはテキストエディターでしょうか」とのことでした。
汎用性のないソフトは、結局受け渡しのときにデータが文字化けしたりして、苦労することになるので、Wordかテキストが良いですよ、と。
これは私には訃報でした。
あの、本当~に! みなさん、Wardで書いてらっしゃるのですか? Wordのあの勝手に色々動き回る機能を、すべてオフにされているのでしょうか? そんなことは可能なのでしょうか?
一体どこをどう設定すれば、いい子になってくれるのでしょう?
それとも、どんなふうに設定しても、文字がズレるという個性は変わらないのでしょうか?
一方のテキストエディターは、文字を打ち込むという点では最強に思われます。けれど、こちらはページ設定は可能なのでしょうか? ルビは打てるのでしょうか?
私が執筆ソフトに求めるのは、以下のとおりです。
1、ページ設定ができる。
2、ルビ、傍点が打てる。
3、罫線や背景などを、目に優しい色に変えられる。
4、勝手な動きをしない。
5、軽い。
これをすべて叶えてくれて、マックに対応しているソフトはこの世にあるのでしょうか?
ご存知のかたがいたら、ぜひぜひ教えていただきたいです!
特に『ページ設定ができる』これは必須です。
というのは、私は出版社のフォーマットに合わせたページ設定で、一日何ページ、一時間に何ページ、というふうに執筆をしているからです。
ページ単位で把握するのが身についてしまっていて、他のやりかたは厳しく思われます。
以前、若い作家さんたちとお話をしたとき、みなさんページ数ではなく、文字数で分量を把握されているのに驚きました。
「一日××文字くらいですね」
「私は、最高で××文字です」
などと普通に会話されるのですよ。
それだと何ページ書いたのか、わからなくありませんか? と目を丸くして尋ねると、これまたあたりまえのように「だいたい××文字で一冊分くらいなので、大丈夫です」とお答えになるのです。
これは本当にカルチャーショックでした。
文字数だけで分量管理をするのなら、ページ設定は必要ありません。
テキストだけを、打ち込んでゆくことができます。
けれど、空白の分量はそのときどきによって変わってくると思うのです。なのに文字数だけで、今は文庫で何ページくらいまで書けているのか、あとどれくらいページに余裕があるのかなど、本当にわかるのでしょうか?
そうしたやりかたが主流になってきているのなら、私も文字数で分量管理できるようにならなければいけないのかもしれません。
まずはWordとテキストエディターと、仲良くなるところからでしょうか?
はたして一太郎さんと、本当にさよならできるのか?
泣きながら一太郎さんに戻る未来がチラついて、不安でいっぱいです。 が……頑張ります。
そして一太郎さん、どうかマック対応のソフトを販売してください!
そうしたら、ちぎれるほど尻尾を振って駆け戻りますから。