『デジタル激弱な作家ですが、Kindle出版できるでしょうか?』 ~5、作品紹介編(主人公の不適切っぷりに困ってしまったこととか……)
こんにちは、野村美月です。
初めに、この記事で使用している過去作出版時のモノクロイラストについてのお断りです。
本来イラストレーターさまの了承を得るべきですが、出版社さまでお調べいただいても、現在の連絡先がわかりませんでした。
どうしようか迷ったのですが、当時こんなに素敵なイラスト描いていただいたことを、みなさんにお伝えしたいと思い、一部使用させていただきました。
もしイラストレーターご本人さまがこの記事をお読みになり、不快な点や不都合な点がございましたら、ご連絡ください。
すぐに対応いたします。
では、本文をはじめます。
今回は、Kindleに自主配信した作品について語りたいと思います。全部で7冊ご用意しました。
『りんご畑の樹の下で』
こちらは最初にデータを作成してアップロードした、記念すべき1冊です。
りんごを巡る中編が3つ収録されています。
2編目が表題の『りんご畑の樹の下で』で、コバルト・ノベル大賞、大賞受賞作になります。
当時選考委員をされていた私の大好きな作家さんが、選評で「明るい潔さに満ちている」と、それは美しい言葉で彩ってくださった思い出の作品です。この選評の際のお言葉が、その後の私の作品の指標になりました。
二人の女の子のお話なのですが、イラストがっ! 素晴らしかったです!
どうです? この艶やかな表情!
髪のなびきかたも雰囲気抜群ですよね。
そして、このころから三つ編みの女の子が大好きで、登場率が高かったのでした。イラストレーターは耒世可恋(るいせかれん)さん、繊細な絵柄に何度も撃ち抜かれました。
『森の祈り1~花冠の姫君』
『森の祈り2~太陽の恋・月の恋』
『森の祈り3~ふたりの聖女』
おとぎ話のようなファンタジー。
一族が滅びて一人だけ生き残ったお姫さまが、森の教会で子供たちに字を教えるところから後の歴史が紡がれてゆきます。教え子の男の子たちがいて、訳ありの女の子がいて、幼ななじみで運命の出会いで、戦いがあって、悲恋でロミジュリで三角関係で、最後は幸せに、みたいなお話です。
3冊構成でしたが、当時は売り上げが振るわず2冊までしか出せませんでした。
もう読んでもらうことはないとあきらめていた3冊目! ワープロ専用機で執筆していたころのデータを3度に渡って入れ替えて、今日まで残しておいたことに、震えました。
こんな未来は予測していなかったのに!
人生ってなにが起こるかわかりません。
当時、ど~~~~しても出したかった大好きな物語です。
文庫から手入力しながら、登場人物たちの運命に涙してしまいました。
ぜひ、最後までお楽しみください。
『薔薇の主張~悩める女優篠原あやか』
さて、記事タイトルの不適切主人公が登場するお話です。
美人で演技がうますぎて悪役しか回ってこない名女優あやかさんのアクトレスコメディです。
当時、私が出した本の中で、多分一番読者さんの人気が高かった作品で主人公です。
今でいう悪役令嬢系ですね。
どのへんが不適切なのかといいますと、あやかさんは十八歳なのに、飲酒シーンががんがん出てきます。リビングの床にビールの空き缶が、ごろごろ転がっていたりするのです。
さらに、あやかさんと共演する十四歳の少年アイドルが、タバコをすぱすぱ吸っておりました!
当時は割とよくあるシーンで、校閲が厳しめだった出版社からもまったくチェックが入らなかったのですよ。
今だと完全にアウトですね。
※ちなみに、『本屋さん』『八百屋さん』と書くと、『書店さん』『青果店さん』と直すよう指示されるほど厳しかったのでした。
あやかさんの言葉遣いがちょっぴり乱暴だったり、すぐに手や足が出るのも、当時は珍しくなかったのです。
けど、このキャラクター造形も、今だとあれこれ言われてしまいそうで。
それはちょっと切ないので、配信すべきかどうか悩みました。
今も迷っています。
あやかさんのお話は、出版されなかった続編の原稿(あやかさんが清純派女優として偽名でヒロインオーディションを受けて再デビューする話)もあるのですが、こちらもさらに、今出すのはどうなのかというシーンの連続で……。今回は控えさせていただきました。
みなさんの感想によっては、現在配信中の作品も停止します。
あやかさん、根はとびきり優しい人情派なので、楽しんでいただけたら嬉しいです。イラストレーター楠本こすりさんによるあやかさんも、こんなにゴージャスですよ。
ちなみに、あやかさんの飲酒シーンはカットしました。
十四歳の少年アイドル陽(よう)くんの喫煙シーンは、ストーリーに関わってくるのでそのままにしてあります。
『香山暁子短編集
助手席に赤い薔薇~悩める女優篠原あやか・他』
当時雑誌に掲載された短編などの詰め合わせです。
あやかさんの最初の短編『薔薇の主張』(長編『薔薇の主張』の冒頭部分にあたります)や、表題タイトルの中編(あやかさんが免許をとりにゆく話)の他にも、以下のような短編が詰まっています。 ↓
『決戦は風日和』
正体を隠して騎馬試合に出場する落ちぶれ貴族のお姫さまの恋愛コメディ。イラストの楠本こすりさんが描いてくださったお姫さまが可愛いのですよ~。アンケートの結果も良くて、今でも好きなお話です。受賞作掲載後の初作品で、実質的なデビュー作ですね。
『夏が大嫌いな園子さんと夏男の話』
雑誌未出の習作ですが、実はシナリオを担当した大人向けゲームのスタッフ同人誌に、設定をちょこっと変えて掲載していただきました。
こちらは元のバージョンです。
夏が苦手な完璧少女の園子さんと、夏にパワーが増す夏馬(なつま)くんのラブコメ。酷暑続きの現在こそ共感してくださるかたも多いのではないでしょうか。リズミカルな文体に挑戦してみました。スキップを踏んでいるようなイメージです。
『月姫さまは花婿を探して』
男装が似合う、おっとりのんびりしたお姫さまが、カッコいいお付きと、幼なじみの騎士と一緒にお忍びで世直しする話。これも趣味で書いていた習作です。ああ、これ、残っていたんだ……とほのぼのしました。
『お姫さまの手紙』
そう、お姫さまが好きなのです! お姫さまをたくさん書きたかったし、イラストレーターさんに、ひらひらのドレスやふわふわの髪を、たくさん、たくさん、描いてもらいたかったのです。
文通が趣味の引きこもりお姫さまが、狩人さんに恋するお話です。狩人さんの名前がギルマーだったりして、これも後に別作品で使っています。あ、『森の祈り』にガストンもちらっと出ていました。
『約束は森の中で』
赤ずきんちゃんの生まれ変わりの女子高生真雪(まゆき)ちゃんが、狼さんの生まれ変わりの不良高校生久遠寺(くおんじ)くんに追いかけ回されて、どうなっちゃうの、なお話。主人公の名前は、『うさ恋。』の真雪ちゃんに流用しています。「雪」や「夏」という字が好きみたいで、長く書いていると似たような名前が増えてゆきます。
久遠寺くん、野生味があって素敵です!
イラストの楠本こすりさんは、カッコいいも可愛いも自在で、毎回惚れ惚れしていました。
この短編は作家のお友達からの評判がとてもよくて、『活字倶楽部』さんでも取り上げていただいた思い出の一作でもあります。
『学園天国』
雑誌に掲載された短編を収録した書き下ろし中編集。雑誌のイラストが可愛くて可愛くて、続きを書きたくなって趣味で書いていたものです。楠本こすりさん、本当に良いお仕事をしてくださっています。
同級生の祥野(しょうの)くんに恋する菜乃(なの)ちゃんが、お父さん(理事長)やお兄さん(生徒会長)の妨害にもメゲずに頑張るお話。菜乃ちゃんの名前はものすごく気に入っていて、文学少女見習いシリーズの菜乃に流用してます。性格も見習いの菜乃にそっくりですね。菜乃のように恋に一途で根性のある、可愛い子です。
中編のタイトルは短編のタイトル繋がりで、小泉今日子さんのお歌で統一しています。
美少年が大好きなお父さん(ゴージャス理事長)と、シスコンのお兄ちゃん(パーフェクト生徒会長)のあれこれは、今だとやっぱり不適切かも……。
以上です。
今回配信を見送った『屋根裏の姫君~ガラスの靴をはいた少女』『屋根裏の姫君~裸足の花嫁』『リフレイン!~アムールたちの伝言』についても検討中です。
それと、ポプラ社さんから出していただいた『ミステリー作家朝比奈眠子シリーズ』について。
こちらもイラストが好きで好きで大好きで、新刊が送られてくるたびイラストを拝見して幸せの絶頂を味わっていました。
主人公の眠子(ねむこ)の三つ編み、めちゃめちゃ可愛くないですか?
どのキャラクターも魅力的に描いていただいて、モノクロも全部素敵でした。
この表情も、生き生きしてますよね。
砂漠の王子さまのゲスト回。この巻(5巻)だけ、砂漠の某国からオファーがあって翻訳出版していただきました。そんなことがあるのですね。
髪をほどいた眠子。
三つ編みの魅力はほどいたときとのギャップにもあると思うのです。
この構図がまたドキドキです。
ほどき髪&ドレスアップ眠子。これも可愛かった〜。
イラストレーターは曽我ひかりさん。
本業はアニメーターさんだったそうですが、すっかり大ファンになっていたので、他にイラストのお仕事をされていないかずっと気にしておりました。
ひょっとして別のお名前でイラストのお仕事をされていたりするのでしょうか?
ご存知のかたがいたら教えてください。
こんなふうに今でもイラストを眺めてはうきうきしてしまうシリーズで、主人公の眠子もお気に入りなのですが、あらためて読み返すと、勢い任せの筆運びで、いろいろ大雑把で……。
当時、2ヶ月に1冊のペースで刊行していたのですよね。
しかも、ミステリーなんて私の頭ではとてもとても。毎回ネタ出しに苦心して、書いては没にし、また別の話でやり直して、またまた没にして3度目のやり直しをしているようなギリギリっぷりでした。
あくまでミステリー風であって、ミステリーではありません。それでも本当に大変でした。その後はミステリーの依頼があると「書けませんっ!」と即答するように。
さらにアクションシーンまであって、これがまた赤面ものなのです。
今なら書くのが大変そうだから迂闊に手を出さないような設定やシーンが、てんこ盛りでした。
それでも、キャラクターの魅力と勢いだけはあるこのシリーズを愛おしく思います。Kindleでの配信は今のところ考えておりません。出してみようという気持ちになったらということで、保留させてください。
最後に、ポプラ社さんの『ものがたり洋菓子店 月と私〜さんどめの告白』が10月2日の発売です。
Kindleも読んでいただきたいのですが、まずはこちらを! ぜひぜひよろしくお願いします! 3巻はバレンタインデーのお話で、チョコレートづくしですよ!
全体図はこちらです。
3巻の表紙もごらんのとおり素敵なのです。
そして、今回のキーワードはこちらですよ〜。
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