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KYOTO Hardtech & Health Batch 1 採択スタートアップ紹介(EXPO予習)

こんにちは!京都Hardtech & Health担当のHaruです。サウナ大好き人間ですが、数ヶ月サウナに入れずうずうずしています。

さて、スタートアップ紹介の続きを近日公開と言いながらだいぶ時間が経ってしまいました(汗 

お待たせしてしまい申し訳御座いません。しかし、私は気持ちを切り替えてポジティブにいきますよ!!

そして!!

COVID-19で延期されていたKYOTO Batch 1 EXPOが開催されることになりました。5/26(火)にOnline開催(無料)です!!まだの方はご登録お待ちしております。

EXPO前の予習ということで、全15社を一気にご紹介致します(国内10社中京都企業5社、海外企業5社)。目次から気になるスタートアップのリンクに飛んでいってください。

それではいってみましょう!!


1. 株式会社アドダイス:医療・産業の専門家の言葉にできない知見・経験を客観化する自立型AI

所在地:東京
設立年:2005年
代表名:伊東 大輔氏
Keywords: #AI #デジタルトランスフォーメーション #DeepLearning

ここに注目!:Deep Learningの活用により、地方の現場に残る労働集約的な検査・診断プロセスを自動化します。

この技術は製造業だけでなく「医療」にも応用可能です。例えば、がんの診断(種類・ステージ判定)には多くのケースで顕微鏡を使用した病理検査が必要となり、判定まで数日〜2週間程度要します。病理判定には病理専門医の知識・技術が必要となり、全ての医師が判定できるわけではありません。病理医不在の病院も多くあるため、癌診断には時間がかかってしまいます。

しかし、アドダイスの技術を使うことで、専門家の言語化が難しい勘や経験を客観化することが可能となります。がん細胞は元々正常細胞が多段階的に遺伝子変異を起こしてガン化したものであるため、正常細胞とがん細胞の境界線を見極めるには経験が必要ですが、病理専門家が自ら教師となり境界部位をAIに学ばせていくことで、判定を最適化していきます。

現在、伊東CEOのご出身地である県立広島病院をはじめとした複数の病院と共同研究を実施中、エンタープライズ市場でも大手企業でサービス導入が進んでいます。

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AIを利用した転移がんにおけるがん細胞が広がっているエリアの判定 (提供:アドダイス社)

さらに、診療を通して得たリアルワールド・ビッグデータを解析して、新型コロナウイルス感染症の診療と研究を急速展開する「COVID-19-ResQプロジェクト」を立ち上げ活動中です。


限られた医療設備を最大限に生かすために重症度・重症化速度をAIで示し、患者さんの症状の重さにより取扱いを切替えていくトリアージを支援するとともに、オンライン診療サービスで非接触診療を支援しています。

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「リスクファクターをAIで解析したResQスコアを提示しトリアージ支援(※ResQ: Real-time estimating severity Query)」(提供:アドダイス社)

第二波に備える行政・医療関係者・研究者の方は、アドダイス社にお問い合わせください。

2. 株式会社MOLCURE:AIとバイオテクノロジーを融合した次世代創薬技術

所在地:東京
設立年:2013年
代表名:小川 隆氏
Keywords:#AI #バイオテクノロジー #ロボティクス #分子設計 #ドラッグディスカバリー


ここに注目!:医薬品開発は高コスト且つ長い時間が必要です。医薬品の候補化合物が上市まで到達する確率は1 / 20,000〜30,000とも言われ、研究開発には5〜10年程度、コストは1,000億円かかることもあります。

Molcureは、従来の研究手法では発見が困難な新規バイオ医薬品分子の探索/設計を支援する独自のAI技術を製薬企業に提供することで、創薬プロセスの効率化・低コスト化を図ります。

具体的な事例の1つとして、抗体医薬品の分子設計が挙げられます。抗体とは、病原体が体内に侵入した際、病原体と特異的に反応する物質として体内に生じるもののことで、いわゆる身体の免疫応答に必須のものです。

例えば、癌細胞を医薬品でピンポイントで狙い撃ちしたい時には、目印が必要です。癌細胞の表面には、その種類の細胞にしかないタンパク質が過剰に作られていることがあります。この細胞特異的なタンパク質に医薬品が結合することで、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。

ある企業では、従来手法で1つしか候補化合物が見つからなかったところ、Molcureのビッグデータ収集・AI解析の活用により新たに14個の候補化合物を発見することに成功しました。

また、HAIVEと名付けられた実験のオートメーション技術も開発中です。ロボット好きにはたまらない、ドラッグディスカバリー実験の自動化に向け開発が進行中です。

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ドラッグディスカバリーの自動化システム(イメージ) (提供:MOLCURE社)

3. エニシア株式会社: カルテ要約支援ソフトウェアの開発・販売

所在地:京都(京都大学発スタートアップ)
設立年:2017年
代表名:小東 茂夫氏
Keywords: #医師の働き方改革 #デジタルヘルス #電子カルテ #非言語処理 #クラウド

ここに注目!:皆さんは病院の外来で長時間待った経験はありますか?前の患者様の診察が終わったら早く次の患者さんに移ってほしいと思うのですが、医師はその間、カルテ作成や次の患者さんの過去のカルテ確認作業に勤しんでいます。

多くの医師が長時間労働をされている現状があります。過労死等防止対策白書によると、その理由として一位として挙がるのが「診断書やカルテ等の書類作成のため」となっています。

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引用:平成30年版 過労死等防止対策白書

エニシアのカルテ要約支援ソフトウェア「SATOMI」を使用することで、下記のような現場医師の負担軽減効果が期待されます。
・診療効率の向上
・引継ぎの効率化
・文書作成の負担軽減・文書作成の負担軽減

カルテ入力の効率化・標準化を目指す音声入力ソフトを開発する競合は存在しますが、カルテ要約に着目に医師の働き方改革を目指している点が他社とは異なります。

病院での試作品導入や共同研究を進め、大学病院を中心とした系列病院への展開や、各地域の医療情報連携基盤と繋がることで普及を図ります。

4. 株式会社Atomis:独自技術を用いたナノレベルでの気体制御、未知なる価値創出

所在地:京都(京都大学発スタートアップ)
設立年:2015年
代表名:浅利 大介氏
Keyword: #ガス #多孔性配位高分子 (PCP/MOF)#新素材

ここに注目!:京都大学高等研究員北川進教授が発見した多孔性配位高分子(PCP/MOF)という独自技術を用い、新しいインフラ・サプライチェーンの創出を目指しています。

具体的には、金属イオンと有機配位子を三次元的に合成することができます。この技術により1m㎥になんと100京個もの穴が空いた材料の作成、自在に設計することが可能となり、活性炭やゼオライトに替わる新素材として注目されています。また、安価、環境負荷が低く大量合成が可能な合成方法も開発しています。

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多孔性配位高分子(PCP/MOF)(提供:Atomis社)

この技術をどこに応用するかというと、ズバリ!!ガス業界です。なぜなら、ガス業界は100年間ブレイクスルーが起きていない業界だからです。IoT化が浸透していく中、高圧ガスボンベは非常に重く、容積も大きく、運びにくく、サプライチェーンの改善があまり進んでいない現状があります。

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高圧ガス業界の現実(提供:Atomis社)

高圧ガスボンベに多孔性配位高分子(PCP/MOF)技術を用いガスを圧縮することで、ボンベ重量の軽量化、容積削減が可能となります。コンパクトかつキューブ状にすることでロボットフレンドリーな運送を可能にし、またIoTモジュールを付加することでGPS、温度、ガス残量なども自動で把握することができます。

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次世代高圧ガスボンベCubiTan®︎(提供:Atomis社)

ガスボンベを単に売るのではなく、ガスを運ぶサービスを売るGaaSモデル(Gas as a Service)の実現を目指しています。

5. 株式会社T-ICU:ICTを用いた遠隔集中治療支援サービス

所在地:兵庫県
設立年:2016年
代表名:中西 智之氏
Keyword:#Telemedicine #救急  


ここに注目!:集中治療専門医からなるチームが提供するICTを利用することでDoctor to Doctor遠隔支援サービスを利用できます。

重篤状態にある患者様の治療を扱うのが集中治療です。日本には集中治療専門医がいますが、日本のICU(集中治療室)の70%では1人も専門医がいない状況です。これは圧倒的に集中治療専門医の数が不足していることと大都市に偏在していることが原因です。例えば東京では237名いるのに対し、鳥取県ではわずか4名しかおらず、医療サービスへのアクセスが限られています。

T-ICUは遠隔の力でこの課題を解決しようとしています。専門医がいない病院に専門医のサービスをシェアリングという形で提供するビジネスモデルです。サービスは24時間365日利用可能です。

下図のようにバイタルサインやレントゲン写真を確認しながら、一般医から専門医へのコンサルテーションを受けることが可能です。1人の医師で約30病院をカバーすることができると想定されています。アメリカでは20年前からICUサービスの導入が始まり、ICUの20%程度の病院で導入されています。

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集中治療専門医へのコンサルテーション例-1(提供:T-ICU社)

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集中治療専門医へのコンサルテーション例-2(提供:T-ICU社)

遠隔ICUシステム導入のメリットは大きく下記の3つです。

1. 医師・看護師の働き方改革 
 当直業務軽減のため、専門分野に集中できる
2. 医療安全の向上
 早期治療方針決定、的確な治療を受けることができる
3. 医療従事者不足のサポート

現在、複数の大学研究機関や病院と連携しサービス導入を進めています。

先日公開されたPlug and Play Japan「新型コロナウイルスに立ち向かう100のスタートアップeBook」のNo. 48にも掲載されていますのでご興味のある方はチェックしてみてください。

6. HoloAsh, Inc.:日々のストレス・不安を和らげるのを助ける音声AIフレンドの開発

所在地:サンフランシスコ(米国)
設立年: 2018年
代表名: 岸 慶紀氏
Keyword:#メンタルヘルス #ADHD #AIフレンド

ここに注目!:2人に1人の成人がストレスを抱えているアメリカ。友達や家族に話すのは恥ずかしい一方で、メンタルクリニックに通いたくても、距離が離れている、予約が混雑していて取りにくい、高額であるといった問題があり、なかなか気軽に受診・治療を行うことが難しい状態です。

世の中が合理化されていけばいくほど、「違い」がある人はストレスを抱えて生きづらさを感じます。CEOの岸氏自身も注意欠陥・多動性障害(ADHD)と一緒に生きており、自分のように「違い」のある人々が生きやすい社会を創ることをミッションにAIフレンドAshley(アシュリー)の開発を進めています。

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AIフレンド:Ashley(提供:HoloAsh社)

モバイルAppを開いてAshleyに話しかけると、日々のストレスや不安を吐き出すのを促してくれます。会話エンジンには、Motivational Interviewingと呼ばれる不安障害、鬱、ADHDに効果的とされる手法を採用しています。話した内容はテキスト化され、自然言語処理によってAshleyから優しい返答が返ってきます。その時にあった音楽を流してくれることもあります。

また、音声解析により、表面的な返しではなく、感情を理解した返答をするようになっており、批判的な返答でなく、24時間365日使用可能です。アメリカをメインの市場に活動しているため、現在は英語対応になっています。

COVID-19の影響でソーシャルディスタンスを感じ、多くの人が話を聞いて欲しい。ZoomやHouse Partyで話相手は見つかっても、「話を聞いてくれる存在」を見つけるのはなかなか難しいものです。
いつでも気持ちを吐き出せる友人がほしいという需要は伸びていくと予想されるため、HoloAsh社のソリューションが悩んでいる多くの人の助けになることを願っています。

7. ELXR:個人の遺伝情報に基づいたフィットネストレーニングプログラム

所在地:シンガポール
設立年:2018 年
代表名: Steffan Fung氏
Keyword:#フィットネス #DNA検査 #モバイルApp  

ここに注目!:CEOのSteffan氏は10年以上特殊作戦部隊に所属し、国際スパルタンレースのディレクター(上海、北京、香港、台湾、日本)も務めています。これまで4社を設立し、EXIT経験を持つシリアル・アントレプレナーです。彼はコミュニティを健康で健康な生活にしたいと考え、スポーツコーチやカジュアルにスポーツをする層をターゲットとしたモバイルAppを作成することにしました。

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CEO Steffan Fung氏(提供:ELXR社)

それでは、ミリタリー出身のSteffan氏から厳しいトレーニングを受けた人は、自分でトレーニングできるのでしょうか?

答えはNOです。

なぜなら私たちは遺伝的に異なっており、すぐに怠けてしまうからです。

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Steffan氏による個別トレーニングの様子(提供:ELXR社)

そこで、ELXR社はモバイルAppとDNA分析に基づくパーソナライズド・トレーニングを組み合わせたオンラインプラットフォームを提供しています。コーチと顧客のマッチングを支援する「パーソナライズド・クラウド・スポーツクラブ」です。

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ELXR社イメージ(提供:ELXR社)

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DNA検査キット(提供:ELXR社)

ELXR Appの特徴は下記の3つです。

1. チーム機能:ソーシャル・グループを作成、活動をApp上にポストしメンバーを募集できます。また、良さそうなグループを見つけたら、コミュニティに飛び込んでみましょう。モチベーションが向上し、目標達成に近づくかもしれません。

2. プロフェッショナル・コーチ:登録されている認定コーチから自分に合う方を選択肢、オンライン・レッスンを予約できます。

3. イベント検索:お気に入りのスポーツを探し、ワークアウトしてリワードを入手します。

現在、世界最大級のスポーツ総合施設「Singapore Sports Hub」とコラボし、7 Minutes Workoutを提供しています。自宅で過ごす時間が増えている方も多いと思いますので、気分転換にカーディオダンス、ブートキャンプ、ヨガなどのメニューを1日7分だけ楽しんでみてはいかがでしょうか。

8. 株式会社ユカシカド:尿による栄養検査およびパーソナライズド・サプリメントの提供

所在地:東京都
設立年:2013年
代表名:美濃部 慎也氏
Keyword:#栄養検査 #サプリメント #尿解析

ここに注目!:パーソナライズド・ニュートリションを提供する栄養に特化したスタートアップです。世界初、尿で栄養の過不足を評価する検査キット、栄養解析、サプリメントを提供しています。

潜在的な栄養不足の人口は国内5千万人とも言われており、感覚だけで自身の栄養の過不足を把握し、また食事だけで栄養を充足させることは困難です。

そこで、ユカシカド社は厚生労働省「日本人の食事摂取基準」策定などでビタミン・ミネラルなどの栄養素研究をリードしてきた滋賀県立大学農学博士の福渡博士と共同研究を実施し、12年の研究成果をベースとした尿解析技術を用いた栄養検査:VitaNote(ビタ・ノート)を提供しています。専用の検査センター、独自の解析アルゴリズムによる高精度な解析、製造出荷を自社提供しているのも特徴です。

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VitaNote(提供:ユカシカド社)

使用方法は検査キットの箱を開封し、自宅で早朝尿を採取、郵便ポストに投函すると最短1週間でPC/スマホに栄養解析結果が届きます。そのデータを基に、10種類のビタミン・ミネラルを配合したオーダーメイド・サプリメントが届きます。1包約180円、コーヒー1杯分から始められる栄養習慣であり、複数のサプリメントを購入して毎回何粒も飲む必要がなくなります。

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栄養検査の流れ(提供:ユカシカド社)

多くの企業と提携の話を進めており、また、3月末には疾患の早期予測モデルに向けた実証実験を松本地域健康産業推進協議会と実施予定です。

さらに、COVID-19と闘う医療従事者向けに栄養検査キットとサプリメントを無償提供しています(応募期間:2020年4月17日〜4月24日で終了済)。

最前線で尽力されている医療従事者の皆さんも支える取り組みもされています。

9. GATTACO Inc.:指先の血液を用いた迅速血漿サンプル調整キット

所在地:カリフォルニア州(米国)
設立年:2014年
代表名: Michael McNeely氏
Keyword:#迅速診断 #血液サンプル  

ここに注目!:皆さん病院での血液検査や献血のご経験が一度はあると思います。しかし、血液を採取して終わりではなく、約90%の血液検査では成分を遠心分離機を用いて分離させるといった血液サンプルの調整が必要です。サンプル調整時間や機器のコスト、サンプル調整がうまくいかないことによる再検査リスクは次世代診断検査のボトルネックです。

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従来の血液検査のサンプル調整イメージ(提供:GATTACO社)

このような問題を解決するため、迅速血漿サンプル調整キットSiPONが開発されました。通常、血漿成分(血液から赤血球・白血球・血小板といった血球成分を取り除いた液体成分)を抽出するには、抗凝固剤(EDTAやクエン酸ナトリウム、ヘパリンなど)の入った採血管で採血後、遠心分離処理が必要となります。しかし、コンパクトなSiPONを用いることで、血漿成分を簡単・迅速に抽出することが可能になります。

指先から全血を75μL採取すると、下図矢印の方向に血液が流れていき、5分程度で15μLの血漿成分が得られます。

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SiPON迅速血漿サンプル調整キット(提供:GATTACO社)

GATTACO社はドラッグストアや遠隔医療、臨床試験などの領域でSiPONを導入し、新しい医療サービスを可能にしようと挑戦しています。また、COVID-19の迅速血清学的検査用に高濃度の抗体で血漿を収集するためにSiponを最適化しました。 この製品はA-PON™と呼ばれます。

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(左)Mahmoud Zubaidi/(中央)Michael McNeely/(右)Philip Luk
  チーフサイエンスオフィサー/ CEO/ 製造担当ディレクター

10. 株式会社HACARUS:スパースモデリングを用いたAI技術の開発

所在地:京都
設立年:2014年
代表名: 藤原 健真氏
Keyword:#AI #診断  

ここに注目!:HACARUSの強みはスパースモデリング技術です。AIと言えばディープラーニングが主流ですが、導入するためには学習のための大量のデータセットが必要となり、データセットの用意が難しい企業も多くあります。また、AIによる意思決定のプロセスがブラックボックス化されてしまい、説明することが困難だという課題も抱えています。

HACARUS社独自のスパースモデリング技術は説明可能であり、また省電力&高速動作、少量のデータセットで動作が可能な点が特徴です。

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スパースモデリングのイメージ(提供:HACARUS社)

また、京都はものづくりやライフサイエンス分野の企業が多くあります。これら企業が長年に渡り蓄積されてきた経験、ノウハウを活用することでデータだけに頼らない独自のAI開発に取り組んでいます。

メンバーは50名を越えており、国籍もグローバルなチームであるため、顧客サポートも日本語、英語、ドイツ語、中国語、スウェーデン語に対応しています。

直近では、4月下旬に京都大学と子宮頸がんの予防・早期診断AIシステムの共同研究に関する契約を締結しました。

さらに、Hardteech&Healthプログラムのパートナーでもある大阪ガスからシリーズB資金調達を実施しています。

11. Sleep Shepherd, LLC:睡眠のためのウェアラブルデバイス開発

所在地:コロラド州(米国)
設立年:2014年
代表名: Michael Larson氏
Keyword:#スリープテック #ウェアラブルデバイス #モバイルApp

ここに注目!:Michael氏は機械工学のPh.D.をMITで取得、25年以上大学の教授として働いています。

創業のきっかけは、娘さんのJessicaさんです。Jessicaさんは当時重度の睡眠障害で苦しんでいて、GHBという薬を処方されていましたが容体は悪化しました。

Jessicaさんは、Sleep Shepherdの技術で睡眠が改善、人生が良い方向に変わったと言います。Michael氏は現在、良い睡眠が必要な世界の何百万人もの人々にドラッグフリー技術を提供しようとしています。

デバイスは快適な頭部に巻きつける方式となっており、睡眠中も快適です。

デバイスに内臓された脳波センサーが脳波の活動をモニター、フィードバック・ループのデータを活用することで、最適なバイノーラル・トーンの頻度を決定、睡眠に誘導・維持します。バイノーラルトーンは、脳が活動速度を遅くし、より深い睡眠に至るのを助けるだけでなく、ストレスを軽減させたり認知能力を改善するのにも役立つ可聴音です。

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睡眠ソリューションのイメージ(提供:Sleep Shepherd社)

同社は、アクティブに睡眠を改善するウェアラブルデバイスに加えて、睡眠スコアの計算と睡眠コーチングを提供し、最先端の消費者向け睡眠トラッキングツールとなるモバイルAppも開発しています。

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モバイルAppイメージ(提供:Sleep Shepherd社)

スリープテックの需要は国内外で高まっています。同社は、スリープテックのマーケットにおいて、将来のトレンド・ニーズを満たすのに有利なポジションを取っています。

12. RedEye Biomedical Inc:ヘモグロビン検出デバイスによる疾患の早期診断

所在地:台湾
設立年:2017年
代表名:Nelson Yan氏
Keyword:#ヘモグロビンセンサー #診断 #トイレ  


ここに注目!:日本におけるがん死亡数は肺がんに続き大腸がんが第2位と非常に多くなっています(2018年最新がん統計 国立がん研究センターがん情報サービス)。

大腸ガンの死亡率の高い原因として、発見の遅れが挙げられます。がんはある程度進行しないと症状が現れにくいですが、大腸がん検診や検診で異常を示した場合に精密検査を受診される方の割合は高くないのではないでしょうか。

大腸がんを発見するための検査方法として、便潜血反応検査や大腸内視鏡検査などがありますが、手軽に受けられずコストや時間もかかり、検査時の恥ずかしさもためらう原因になると考えられます。そのため、症状があっても適切なタイミングで検査を受けず、発見が遅れてしまうケースがあるといわれています。

RedEye Biomedical社は、自宅で手軽に大腸がんや腎臓、膀胱がんの早期発見ができるよう、糞便中のヘモグロビンを測定するセンサーデバイスを開発しています。

ヘモグロビンは血液中に含まれるタンパク質の一種で、主に鉄を含む「ヘム」とタンパク質でできている「グロビン」からなります。血液が赤いのはヘムの赤色素のためです。つまり、ヘモグロビンをデバイスで測定できれば、便に血液が混じっているか判定することができます。

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製品使用イメージ(提供:RedEye Biomedical社)

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デバイスの使用方法(提供:RedEye Biomedical社)
製品デモ動画 (提供:RedEye Biomedical社)

デバイスの使用方法ですが、トイレの壁に取り付けられた充電器からデバイスを取り出し、検出部前面にフィルターを取り付けます。 その後、電源を入れて検出ボタンRをクリックし、前端のプローブヘッドをトイレの水に約10秒間浸します。 排泄物に血液が含まれている場合はプラスマークが表示され、含まれていない場合はマイナスマークが表示されます。

測定が終了したら、先端部を押すことで消耗品を取り外します。フィルターキャップは排泄物と一緒に流せる生分解性のものを使用しています。

疾患の早期発見・早期治療への活用が期待されるデバイスです。日本進出のためのパートナーを探しています。

13. 株式会社iCorNet研究所:心臓サポートネットによる重症心不全と致死的不整脈の治療

所在地:愛知県
設立年:2016年
代表名:秋田 利明氏
Keyword:#心臓 #サポートネット #医療機器  


ここに注目!:心不全の患者数は全世界で増加傾向にあり、治療コストも数兆円規模となっています。原因疾患を問わず、心不全が悪化する最大の原因は進行性の心拡大(心臓リモデリング)です。これは心不全の病期が進行すると共に左室の拡大、心収縮力の低下、心筋の繊維化が進行性に起こる変化を指します。心臓リモデリングを抑制することで、予後の改善を図ることができます。

iCorNet社では、国内外の特許取得済のメッシュ状のサポートネットで心臓を包むことで、左室のリモデリングを抑え、これまで改善が必要とされてきた右室拡張機能が損なわれる障害も回避することに成功しています。

サポートネットは患者様の心臓画像(CT/MRI)から3次元心臓モデルを作成、個別に最適化したテイラーメイド方式で設計・製造されるため、手術時間を短縮化、患者様の負担を減少させています。画像データ提供からサポートネット完成までは約1ヶ月となっています。

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(提供:iCorNet社)

現在、医師主導治験の準備を進めており、2022年のPMDA承認、2024年までのCEマーク取得、FDA認証を目指しています。

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除細動機能付き心臓サポートネット治療(提供:iCorNet社)

さらに無痛性除細動を可能にする導電性繊維電極を組み込んだ「除細動機能付き心臓サポートネット治療」の開発を進めています。

14. Photo Soni Tech:光超音波イメージングを用いた疾患診断手法の開発

所在地:京都(京都大学発スタートアップ)
設立年:登記前
代表名: 若松 知哉氏
Keyword:#光超音波イメージング #診断 #非侵襲  


ここに注目!:京都大学や内閣府ImPACTプログラムで研究開発された光超音波技術を医療分野に応用しようとしているスタートアップです。

光超音波イメージングを用いると、例えばがんや関節リウマチで認められる異常な血管新生や抹消血管の障害、動脈硬化、脳卒中に置ける血管狭窄を可視化することが可能となります。これにより疾患予防や早期診断、治療支援に貢献できると期待されています。

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掌の血管像およびヒト乳癌を担癌マウス 腫瘍周辺の血管像(提供:Photo Soni Tech)

メカニズムですが、レーザーのような光を当て、生体内部から発生する超音波を読み取ってイメージングします。

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光超音波イメージングのメカニズム(提供:Photo Soni Tech)

従来の光だけを用いた光学顕微鏡やOCTでは、生体の深い部分を読み取ることが難しく、超音波を用いた可視化技術では分解能が不足するという課題がありました。光超音波イメージングはその間をとり持つという特徴を持っています。また、X線/CT/MRIと比較すると低コストであり、造影剤も不使用のため侵襲性が低くなっています

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光超音波イメージングの到達深度および分解能(提供:Photo Soni Tech)

非侵襲、非造影、高解像度の光超音波イメージング技術が医療分野に浸透していく未来も遠くないかもしれません。


15. 株式会社スクリエ :使い捨て入れ歯の開発

所在地:京都(京都大学発スタートアップ)
設立年:2018年
代表名: 岡本 明香氏
Keyword:#使い捨て入れ歯 #口腔 #3Dプリンター

 ここに注目!:京都大学産官学連携本部と元歯科口腔外科医局員から生まれたスタートアップです。75歳以上の後期高齢者では89%もが何らかの義歯を使用しています。

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義歯の使用状況(出所:厚生労働省

また、義歯の有無は他の疾患発症にも影響します。例えば、歯を失い、義歯を使用していない場合、認知症発症リスクが最大1.9倍になることが報告されています(yamamoto et al., Phychosomatic Medicine, 2012)。

スクリエ社では、低コスト、衛生的、手軽、口腔状況の変化に迅速に適応可能な使い捨て入れ歯を開発しています。

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使い捨て入れ歯装着イメージ(提供:スクリエ社)

従来の作製方法では、歯科技工士による型取り→石膏原型→模型→原型ワックス→埋没→鋳造→適合・研磨というプロセスが必要で時間をかかります。

しかし、スクリエ社は3Dプリンターを使用することで、口腔内スキャン→デザイン→デジタル製作→適合というシンプルなプロセスにしています。

使い捨て入れ歯の他、誤嚥性肺炎の死亡率や脳卒中患者のリスク軽減を主な目的として、デジタルマノメーターを応用した圧測定器とほぼ介助者不要の嚥下機能回復用マウスピースの開発も進めています。また、独自のアプリケーションとこれらを連動させることにより、医療のスマート化も進めています。

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デジダルマノメーターを応用した圧測定器(提供:スクリエ社)

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開発中のApp(提供:スクリエ社)

いかがでしたでしょうか。5/26(木)のEXPO当日には各スタートアップやHardtech & Healthのコーポレートパートナーからのプレゼンテーションが予定されています。皆様のご参加お待ちしております!

Batch 2プログラムも6月に開始予定ですのでアップデートをお楽しみに。

資金調達、アクセラプログラムなどに関するお問い合わせはこちら!
大岩 晴矩(Harunori Oiwa)
harunori@pnptc.com