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【ドラマ】無職中に出会えてよかった『0.5の男/沖田修一監督』
無職期間中に絶対に観ておきたかったドラマがあって、やっと観ることができた。
控え目に言って、最高過ぎるドラマだった。40歳、無職、引きこもりニートの主人公雅治と自分が重なってしまう部分もたくさんあって、気がついたらいろんなシーンで涙してしまっていた。
物語は、両親とともに暮らしている雅治の実家を、妹である沙織が家族を連れて、2世帯住宅に建てかえるというシーンからはじまる。
引きこもりである雅治にも居場所を作っておきたいと考えた両親の強い要望で、雅治の居住スペースも兼ね備えた2.5世帯住宅という、新しい形の家族の物語がスタートしていく。
作品中では、日本が抱えているさまざまな社会問題が取り上げられている。
主人公雅治に関して言えば、引きこもり問題。それを支える家族の高齢化の問題。そもそも雅治が引きこもるきっかけとなった、職場のパワハラ問題。
引っ越してきた妹家族だって、課題を抱えている。働く母親の働き方問題、長女恵麻の不登校問題、長男蓮の幼稚園に行きたくない問題。
そんな問題だらけの家族が、2.5世帯という新しい選択の中で、少しずつ少しずつ、あたたかく変化していく様子がとても素敵だった。
上記に書き出した社会問題はよく、メディアでも報道されているけれど、それらを単体でそれぞれ解決しようと思ってもそんなに物事は単純じゃない。
日本で暮らしている家族の問題は、多種多様で、それを1つにシンプルにまとめることはできなくて、100家族あれば、100家族通りすべて違う家族の問題の形がある。
そういった各家庭の問題を解決しようと試みたとしたとして、残念ながら、すべてが金で解決するのか。と言われてもそんなことでもないし、だからといって、たとえば、引きこもりになった責任を本人だけの自己責任論として追及したりするのも違うし、誰かが我慢してその問題に耐えるというのもまた、話が違ってくる。
それだけ家族の問題は根が深くて、複雑で、難しくて、終わりがない。私の場合で考えてみたって、私個人含める家族の問題は、毎日のように溢れかえっている。
それだけ大変な問題がたくさんなのに、家族だからこそ、その問題は身近で、逃げ場がない。誰だって、放置してしまいたくなるし、誰かに責任を放棄してしまいたくなる。
そんな時間もあっていい。
そんなに毎日毎日解決しようと必死にならなくても、しばらく休んでみてもいい。
そんなメッセージを受け取るシーンがことごとく散りばめられていて、私はそこにいちいち感動して泣いてしまっていた。
大切なのは、そんなに早急に解答を出そうとしないこと。
早く解決したくて、誰か1人に責任を押し付けたり、逆に自分ひとりで責任を抱え込んだりすることが一番よくない。
みんながみんなで、それぞれで潰れてしまわない程度に、問題に当事者意識を持って、少しずつ、少しずつ、助け合いながら、日々を過ごしていたらいつのまにか、その問題が解決していることもあれば、その問題自体がなくなっていることすらあるのかもしれないのだから。
そもそも、そうやって家族の問題に向き合っていることそのものが、家族の営みであり、ひとりひとりの人生であるのかもしれないのだから。
そんなようなメッセージをこのドラマから受け取ることができて、すごく自分自身の心が軽くなったような気がした。
この無職の期間中に観ることができて本当によかったドラマだった。