儚さに恋してる

桜が静かに淡く咲いている。
春独特の生温かい風が、花びらを散らす。
すぐ散るから愛おしい。
もはやすぐに消えていく方が良いのではないか。
別れた恋人との思い出、黄昏時の空、大雨の後の微かな虹、天才が一夜限りで吹いたトロンボーンのアドリブ、友人とのその場限りの会話、全てが消えゆくから美しいのだ。
永遠の幸せを執拗に欲しがる人は多い。
永遠の愛、永遠の美貌、永遠のパートナー、永遠の仲間。
永遠なんてどこにもないことはみんな深層ではわかっている。(はずだ。)ただ、絶望したくなければ、儚くも存在しない永遠にしがみついて生きていく他ないのだと最近ふと思う。
哀れだとは思わない。
それこそが生きているという気がするし、美しい。人生の美しさは、多分人らしく生きるためには必要不可欠だと個人的見解だが思う。

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