起承転結/番外編 /知らない鍵
起承転結 番外編
わたしのパートナーは調律師
知らない鍵の秘密
相変わらず、多くを語らない彼だった
でも、あの日から
彼は良く笑うようになった
あの秘密の鍵の主も分かった
ある日の日曜日
彼の淹れたコーヒーをのんびり飲んでた
ピンポーン
誰だろう
鍵の主だった
こんにちは
真美ちゃん?可愛い〜
はじめまして
私、白石です
はじめまして
こんにちは
のんびりしてる日曜日にお邪魔して
ごめんなさい
これ!渡したら帰るから
そう言わずに、どうぞ
珈琲淹れますから
彼の淹れたコーヒーと
彼女の手土産のケーキを食べながら
彼女の話に耳を傾けた
ごめんなさいね!わたしの都合で
夜の調律お願いして
その上、この前
風邪の看病までして貰って
と経緯をはなしてくれた
鍵の主、白石さんはクラブのママで
彼女はむかし
ピアニストを目指していたが
家庭の事情で断念した
自分のお店を持てるぐらいになった時に
また、ピアノを始めた
お店に行ってる夜に調律を依頼していた
彼女のピアノのある部屋は完全防音
それで鍵を預かってる彼が調律に行っていた
ピアノの上にメモで指示があって
彼女の思う調律ができるまで
繰り返し現場に行っていた
看病してもらいながら
調律してもらって
わたしの欲しい音になってた
ありがとう村岡くん
こちらこそ、良かったです
白石さんの好みの音になって
どんな音か、聴いてみたいな
とわたしがヒトリゴトみたいに言ったら
さすが音大生
えっ?知ってるんですか?わたしのこと
村岡くんが言ってたよ
彼女のピアノはとっても優しい音だって
えーそんな事、言われた事ないです
本人には恥ずかしくて言えないじゃない?
彼は知らん顔をしていた
何度か調律の後で弾いたことがある
彼はそう思っててくれたんだ
今度2人で
わたしのピアノ聴きに来てね
音大生に聞いて欲しい
下手くそだけど〜
と、白石さんと約束した
多くを語らない彼は
わたしの事を
語ってくれていた
わたしは
あなたを好きになってよかったんだよね
と心でつぶやいた
彼はこちらを見て
うん と、うなずいた
あら?テレパシー?
多くを語らない彼
まだ、わたしの知らない彼がいるみたい
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