樹木図鑑 vol.11 シナノキ 迷い、惑い、惑わされ
<シナノキ>
学名 Tilia japonica
アオイ科シナノキ属
落葉広葉樹
分布 北海道〜九州の冷温帯
樹高 20メートル
漢字表記 科木、榀
別名 ー
<オオバボダイジュ>
学名 Tilia maximowicziana
アオイ科シナノキ属
落葉広葉樹
分布 北海道・本州の関東以北
樹高 20メートル
漢字表記 大葉菩提樹
別名 ー
ぼくは関西に18年住んでいたので、関西の常緑樹林の樹木とはすっかり顔馴染みになってしまいました。
おかげで、常緑樹林に生育する樹木はだいたい識別できるようになりました。アラカシーシラカシを遠くから見て判別できるようになったし、トウネズミモチーネズミモチもいける。ぼくはもう常緑樹林をマスターしたね!
青森に行く前は、森の樹木を完全に理解したかのように高をくくっていました。
ところがどっこい、青森で落葉広葉樹林に触れた瞬間、その自信は崩れ去りました。18年間常緑樹林で育ったので、いきなり落葉広葉樹林に入ると分からないことが多すぎる‼︎
落葉広葉樹林には、ぼくが識別できない樹木がいっぱいあるではないか。僕の知らない樹木がまだこんなにあったのか。やはり樹木の世界は広い。
関西とは様子が違う青森の森に入れば、ぼくのこれまでの樹木歴など一切チャラです。一から樹木の勉強を再スタートさせました。
さあ、がんばって落葉広葉樹林も自分の頭の中に入れるぞ。
しかし、その意気込みが、今回紹介するシナノキという樹種にへし折られたのです……
高原で悠々と過ごす樹
青森に来た初日、青森空港から十和田へ向かう途中に、「萱野高原(かやのこうげん)」という場所を通りました。八甲田山の中腹にあるなだらかな高原で、なかなかの絶景スポットです。
高原の向こう側にドーンと聳え立つ八甲田山を見て、「おお、青森に来たんだ」と感慨深くなったのを覚えています。
しかし、この萱野高原でぼくが一番感動したのは、景色ではありません。
シナノキです。
シナノキは北海道や、本州中部以北の冷涼な地域に分布する樹種です。
関西にはあまり分布していないため、青森に来る前はお会いする機会がほとんどなく、あったとしても北海道の親戚の家に遊びに行ったときに近くの森で見つけたぐらい。その北海道で見つけたシナノキにしても、森の奥で細い幹をひょろひょろ伸ばしている感じで、樹木としての威厳はあまり伝わってきませんでした。
↑こちらは高校2年生のときの夏休み、釧路湿原に出かけた時に見つけたシナノキ。幹がひょろっとしていて、周囲のミズナラに押しつぶされそうになりながら空を目指している感じ。なんだか気が弱そうで、威厳を感じられませんでした。
2019年8月17日 北海道釧路市
北海道に遊びに行った時に見つけたシナノキからは、シナノキの魅力をあまり汲み取れなかったのです。(もちろん、これはたまたまぼくが親戚の家の近くで良いシナノキを見つけられなかっただけの話。北海道でも森の中を探せば立派なシナノキを見つけられるはずです。)
ところがどっこい、萱野高原のシナノキを見てシビレました。
シナノキってこんなに美しい樹だったのか……
ご覧ください↓。広々とした高原で、悠々と幹を伸ばし、こんもりと枝を茂らせるこの姿。これを美貌と言わずしてなんと言う。
これだけ立派なシナノキが群生しているところにこれまで行ったことがなかったので、感激もひとしおでした。
↑萱野高原はシナノキの名所。国道沿いの草原に多数のシナノキが生育して形成される景観は独特で、樹木好きを興奮させる。2021年7月15日 青森県青森市
調査でシナノキの恐ろしさを思い知る
さて、萱野高原でシナノキに感動したのも束の間。
青森に来てすぐ、奥入瀬渓流内の調査に加わらせていただきました。
シナノキは、奥入瀬渓流の森にはあまり分布していません。近くの十和田湖畔にはたくさん生えているのに、奥入瀬川の谷にちょっと入った瞬間にシナノキが激減するのです。これもまた不思議。
渓流内では珍しい樹種であるがゆえに、シナノキを調査中に見つけた時には、記録をとらなくてはならないのです。
ある日のこと。渓流内の森の調査中に、シナノキを見つけました。
「あ、シナノキありますよ。」
一緒に調査をしていたおいけんの方に声をかけると、
「これ、シナノキなのかなあ、オオバボダイジュなのかなあ」
というお言葉が返ってきました、
↑奥入瀬渓流•子ノ口水門前のシナノキ。2021年7月19日 青森県十和田市
…………‼︎これ、シナノキじゃない可能性もあるの⁉︎オオバボダイジュってなんだよ。聞いたことない樹種名だぞ。
そう思って聞いてみると、オオバボダイジュはシナノキの近縁種(親戚)にあたる樹種であるとのこと。シナノキと同じくアオイ科シナノキ属に属する樹で、分布域もシナノキとほぼ同じ。青森県にはシナノキとオオバボダイジュの、両方が分布しています。
厄介なことに、このシナノキとオオバボダイジュ、ものすごく葉が似ているのです。
いままでオオバボダイジュという樹種の存在を知らなかったぼくは混乱してしまいました。おそらく今まで僕が「シナノキ」と認識していた樹のうちのどれかはオオバボダイジュだったんだろうな……。となると、オオバボダイジュの存在を無視していた、ということになります。それはめっちゃ申し訳ない。
樹木のなかには、この例のように、判別が難しいものがいくつか存在します。そういった樹種の存在はついつい見逃してしまいがちで、「見たことがあるのに会ってない」という状態に陥ることがよくあるのです。
オオバボダイジュと改めて会わなくては。シナノキとオオバボダイジュ判別の修行を開始しました。
オオバボダイジュとシナノキの違いー図鑑バージョン
さて、樹木の識別を鍛えるのに役に立つのはやっぱり図鑑。
まず、図鑑に載っているオオバボダイジューシナノキ識別法を利用することにしました。
樹木の葉を扱うハンディ図鑑によると、
•シナノキは葉の裏の葉脈の分岐点に毛の塊があるが、
•オオバボダイジュは同じ部位に毛の塊がない、とのこと。
めちゃくちゃ微妙な違いです。てか、オオバボダイジュにも毛の塊がちょびっとあるように見えるし。近眼のぼくにとって、これらの違いは存在しないに等しい。
さすがにこれだけで判断するのは厳しいので、「葉の大きさ」も補助的な情報として注目するように、と図鑑に書かれていました。
名前の通り、オオバボダイジュはシナノキよりも若干葉が大きくなります。
↑シナノキとオオバボダイジュの葉の大きさの比較。
よし、葉の裏の毛の有無、そして葉の大きさを見ればシナノキーオオバボダイジュを完全に判別できるぞ!
………となれば最高なのですが、実際にフィールドに出るとそう簡単にはいきません。
下の写真をご覧ください↓。
葉脈の分岐点に毛の塊がある………図鑑の判別法に則れば、これはシナノキという同定になります。
ところが、こちらの葉、大きさは手のひらより一回り大きいぐらい。一般的なシナノキの葉よりもでかい↓。
大きさだけに着目して判定すれば、これはオオバボダイジュという同定になります。
………毛の特徴はシナノキで大きさの特徴はオオバボダイジュ。これほど鬱陶しいものはありません。結局お前どっちなんだよ!
図鑑の判別法だけに頼ると、シナノキ達にこういったフェイントをかけられるばかりなので、自分なりの、別の判別法を確立する必要があるのではないか。
そう思って、シナノキの名所•萱野高原に再び向かいました。待ってろよ、シナノキとオオバボダイジュ。お前たちとの戦いに終止符を打つ時が来た!
オオバボダイジュとシナノキの違いー自己流バージョン
7月中旬のよく晴れた日。青森市街地から山道を30分ほど走り、萱野高原に到着しました。
広々とした高原にシナノキが悠々と林立する風景。あーこれこれ。美しい木々と対面し、リラックスしてしまう………心地いい場所だなぁ………
って、いかんいかん、今回はこやつらと戦いに来ているんじゃ。敵の立ち姿にうっとりしてどーする。
樹木図鑑という兵器を片手にいざ出陣。かかれーい!
樹木図鑑の記述をもう一度よく見てみると、
「オオバボダイジュの葉裏の葉脈分岐点にも、毛の塊が付くことがたまにある」と書かれていました。
つまり、「毛の有無」に着目した判別法にはあまり固執しすぎないほうがよい、ということ。
「毛の有無判別法」と「葉の大きさ判別法」の結果に矛盾が生じれば、「葉の大きさ」を優先させれば良いのです。
たとえば、先ほど登場した、「葉は大きいけれど毛の塊もある」個体は、葉が大きいという事実を優先してオオバボダイジュ、という同定になります。
この情報をもとに、確実にオオバボダイジュだと分かる葉と、確実にシナノキだと分かる葉のそれぞれを採って、見比べてみました。
とって並べてみた感じ、一見両者に大きな違いはないように見えます。
ところが、葉っぱを裏返してみると………
オオバボダイジュの裏側の葉脈が若干黄色っぽい気がする。拡大してみると、オオバボダイジュは細かい葉脈にまで毛が生え、全体的にモフモフとした印象なのに対し、シナノキは葉脈に毛が生えておらず、ツルツルした印象なのがわかります↓。
「オオバボダイジュの葉裏は全体的に毛深いが、シナノキの葉裏は毛が生えておらず、全体的にツルツルしている」という違いがあるのではないか。そう思って萱野高原に生えている樹を片っぱしから確認してみると、確かに全ての樹に同じような傾向がある‼︎
これこそ、究極のシナノキーオオバボダイジュ判別法じゃないか。シナノキよ、君に勝ったぞ‼︎
↑上がオオバボダイジュ、下がシナノキ。ぱっと見の外見はほとんど変わらない。
ざっとした雰囲気も大事
さて、自己流のシナノキーオオバボダイジュ識別法を獲得したぼくは、意気揚々と奥入瀬にもどりました。
これでもう惑わされないぞ……
ところがところが、まだ甘かった……………‼︎
奥入瀬のオオバボダイジュたちの葉裏をみてガックリきました。
奥入瀬のオオバボダイジュは、裏にあまり毛が生えていないのです。葉の裏の毛深さでオオバボダイジューシナノキを判別する、という萱野高原で確立した方法が役に立たない‼︎
↑奥入瀬のオオバボダイジュ。萱野高原の個体ほど毛が目立たない。これではシナノキと見分けがつきにくい。
どうやら生えている場所によってオオバボダイジュの葉の形質は大きく変わるようです。こういう、「同じ種類なのに場所が変わると見た目の特徴も変わる」という現象を「変異」といいます。オオバボダイジュは変異が比較的激しい樹種であるがゆえに、識別が途端に難しくなるのです……まったく詐欺師のような樹木だ。
では、この変異にも対応できる識別法は何か。
おいけんの師匠ガイドに聞いてみると、それは「樹木の葉がもつ大雑把な雰囲気を捉える」ということ。
細かい特徴というのは、変異によって薄れたり、無くなったりします。細かな特徴を捉えて樹木を識別しようとしても、その特徴があるかどうかは個体によってまちまちなので、識別の際に惑わされやすくなります。ぼくがシナノキーオオバボダイジュを識別しようとした時の「毛があるかないか問題」は細かいところに固執しすぎて失敗した好例と言えます。
しかし、樹木の葉の外見が醸し出す、おおまかな雰囲気というのは、多少変異が生じても変わることがありません。細部まで見ることも大事ですが、識別のときに騙されないようにするためには、パッとみたときの印象を疎かにしないことも、案外重要なのです。
では、シナノキとオオバボダイジュのそれぞれが持つ雰囲気とはどういうものか。
おいけんの師匠ガイドによると、「シナノキはかわいいが、オオバボダイジュはかわいくない」とのこと。
シナノキは葉っぱがやや小さめで、丸みが強く、パッとみた感じ「かわいい」のですが、オオバボダイジュの葉っぱは巨大でボテボテしており、かわいくはありません。そんな大雑把な、と思われるかもしれませんが、この識別法は結構使えるのです。葉っぱの「かわいい」「かわいくない」という大まかな印象は、多少変異が生じても変わることがありません。だから、どこに行っても割と確実に識別できます。
↑こちらは青森市郊外の山で採ったシナノキの葉。シナノキの葉は普通ハート型だが、こちらの葉っぱは全然ハート形じゃない。葉っぱの先端が不自然にギザギザしている。これも変異のなせる技だが、もしシナノキの葉を「ハート型の葉」と覚えていたらこの葉をシナノキだと同定することはできなかっただろうなあ。樹木の世界を制覇するには、このように変異の存在も頭に入れておく必要がある。
調査で十和田湖に近い森に行った時に、おいけんの方と一緒にこの識別法を使ってシナノキーオオバボダイジュを観察してみたのですが、「かわいさ識別法」の的中率は上々でした。
今後は「かわいさ識別法」をメインに活用してシナノキたちと付き合っていきたいと思います。(とはいえ、図鑑に載っていた、毛の塊で区別する方法、萱野高原で編み出した、葉の裏の毛深さで区別する方法がまったくの無駄になったわけではありません。これらの識別法も、同定の際の補助的な情報として大いに役立ちます)
↑シナノキの葉。丸っこくて小さな葉っぱが群がっていてかわいい。2019年8月18日 北海道釧路市
↑オオバボダイジュの葉。葉っぱが大きいため群がらず、かわいい感じもあまり出ない。 2021年7月19日 青森県十和田市
シナノキとオオバボダイジュよ、いままで君たちのことを見ても誰が誰だか分からなかったよ。君たちを見ることはできても、会うことはできなかった。でも、これからやっと「会う」ことができるね。これから、よろしくお願いします。
これで、ぼくが出会った樹木のリストに、堂々とシナノキとオオバボダイジュを加えることができる……ひとまず安心。
シナノキってどんな樹
さて、そろそろ記事を終わらせられる……終わりぎわっぽい文章を残したし、もう次の記事へと移ろうか、なんて考えていると、いままでシナノキーオオバボダイジュ識別法についてしか書いていないことに気がつきました。あかん。このネタはさすがにマニアックすぎる。
ぼく、シナノキとオオバボダイジュを一発で見分けられるんです‼︎という人がいたとしても、喜ぶのは強烈な樹木マニアぐらいでしょう。
識別法の話だけだと、樹の葉で頭が侵食された樹木オタクの狂気をつらつらと見せつけただけの記事になってしまう。そんな血迷ったものを世の中に放出するわけにはいきません。
……ということで、シナノキそのもののご紹介をしてから、記事を終わらせようと思います。
↑植栽されたシナノキ。広々とした場所で育つと、レゴで作った樹のような樹形に育つ。2019年8月20日 北海道長沼町
シナノキは、結構いろいろな場面で活用されている樹木です。
たとえば、はちみつ。シナノキは7月ごろ、甘い香りがする花を咲かせます。その花から採れる蜂蜜には、ビタミン、ミネラルが多く含まれており、栄養価が高いのです。はちみつ屋さんによると、濃厚な味で、お菓子作りに向いている、とのこと。現在、シナノキ蜂蜜は北海道でもっとも多く採集されている蜂蜜となっています。
↑オオバボダイジュの花。オオバボダイジュからも、蜂蜜は作ることができます。萱野高原でオオバボダイジュとシナノキの両方の花を見ようと思ったのですが、行ったときにはオオバボダイジュしか咲いていなかった……。ケチのシナノキめ(笑)。1960年代には、国産蜂蜜の2割がシナノキ蜂蜜だった。2021年7月15日 青森県青森市
↑上の写真の、花が咲いていた樹の全景。樹全体が黄色っぽく見える。
さらに、シナノキは街路樹としても優秀です。
放っておくと、シナノキは丸々とした、コンパクトな樹形になります。レゴの付属品としてよく袋に入っている、樹の形をしたパーツと非常によく似た外見です。整った樹形が道路に植えるのにぴったり、ということで北国では頻繁に植栽されています。札幌市では6000本のシナノキが道路に植えられている、とされていますが、そのうちの何本かはオオバボダイジュであろう、とのこと。
またこいつが登場したか……。似ているため、どちらも「シナノキ」として苗木が取り扱われたのでしょう。植木業者を惑わせたオオバボダイジュのせいで、札幌にシナノキが何本あるのか、正確には分からなくなっています。
↑天高く伸びるシナノキの枝。萱野高原のトイレの裏にて。2021年7月15日 青森県青森市
シナノキは材が柔らかい樹なので、家屋の構造材にはあまり向いていません。そのかわり、柔らかさからか加工が容易で、アイスの棒、楊枝、割り箸など、加工を必要とする製品によく用いられました。北海道土産でたまに見かける熊の木彫り人形も、ほとんどシナノキで作られています。
北海道長万部では、カジキマグロ漁のさいにシナノキでできた船を使っていました。硬いほかの木材で船を作ってしまうと、カジキマグロに突かれたときに船体に傷がついたり、裂けたりしますが、シナノキの場合は材がしなやかなので船が損傷することがなく、安全だったのです。
……しかし、やはりシナノキの活用法で一番有名なのは繊維でしょう。
シナノキの幹の皮を剥いで乾かし、アク抜き、機織りなどのさまざまな工程を経ると、「シナ布」が完成します。このシナ布は、縄文時代からつくられており、シナノキの分布域のほぼ全域で、着物や袋の材料として使われていました。北海道天塩川流域のアイヌ民族は、このシナ布を魚を捕る網にして海沿いの漁場まで持っていき、交易品としていた、とされています。
↑シナノキはご覧の通り成木でも株立ち樹形。幹が何本もあるので、皮を何回も剥がせます。シナノキのこうした点も、繊維作りに都合が良い。2021年7月15日 青森県青森市 梵珠山
現在は、機械を使って大量に生産できる麻製の織物が台頭しており、シナ布はほとんど使われなくなりました。新潟県北部の山間部では、いまでもシナ布作りが続けられおり、地域の工芸品となっています。
<シナノキーオオバボダイジュ識別ダイジェスト>
・葉の裏の葉脈の分岐点に毛の塊があるのがシナノキ、ないのがオオバボダイジュ。ただし、毛の塊があるオオバボダイジュも存在する。
・葉が比較的小さいのがシナノキ、大きいのがオオバボダイジュ。ただし、例外あり
・葉の裏の葉脈に毛が生えておらず、全体的にツルツルした印象なのがシナノキ、葉裏の細かい側脈にまで毛が生えており、全体的にざらざらした印象かつ黄色っぽいのがオオバボダイジュ。ただし、例外あり。
・ざっとした印象がかわいいのがシナノキ、かわいくないのがオオバボダイジュ。
これらの情報を組み合わせてシナノキーオオバボダイジュを識別してください。
こういった同定の勉強はなかなか骨の折れる作業ですが、その「面倒臭さ」も樹木の世界を旅する上での楽しみのひとつだと思います。樹木の葉をまじまじと観察し、図鑑と睨めっこしながら目の前の樹がなにかを解き明かしていく作業は、知的好奇心を大いに満たしてくれます。あの瞬間、ぼくは確かに樹木の世界の奥へと進んでいるのです。
同定の修行は、ほかには変えがたい充実感をもたらしてくれます。
変異した樹木達にさんざん振り回されながら、森を歩く。そういう時間も、樹木との素敵な交流の一部です。