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春名尚子
2018年2月16日 06:14
芳明の風景 その『声』が響いたとき、僕は見た。洞窟に差し込んでいた光がまぶしさを増したのを。 一体なんなのだ。どこから聞こえているんだ。 これが、彼女の言う『声』なのか。 大きな岩の上から注がれている光は、岩を明るく映し出しはじめた。岩の影が背後に映し出されたとき、僕は彼女の腕を取った。「頼むよ、ひかり」 僕はそう言って、彼女の腕を掴んだまま出口へ向かって歩きはじめた。彼女はもちろん抵抗
FILE 正体 天から降り注ぐ光は変わらず大岩を照らしていた。「世界を滅びに導いたものの正体、それをお前は知っている。そのことを認めてこなかっただけだ。だが、お前はそれを既に知っている」「知っている? わたしが?」「お前の世界は、お前のこころの投射でできている。なぜこれほどまでに世界は歪んでいるのか、お前はその答えをずっと探していた。 それは、人々のこころが望んでいるからだ」「望んでいる
2018年2月16日 06:15
芳明の風景「世界を滅びに導いたものの正体、それをお前は知っている。そのことを認めてこなかっただけだ。だが、お前はそれを既に知っている」 鍾乳洞の中で聞こえてきた『声』は、僕らにそう告げた。「僕が、それを知っている?」 僕らは大岩の前で立ち尽くしていた。「それよりも、あんたは誰なんだ?」 闇の中の光は、そっとその力を弱めてしまい、洞窟の中は真っ暗になった。目を開けても、閉じても、その違いが