硬貨
これはまだ外出自粛が厳しくなかった
先月のドライブデートでのちょっとした話
彼女とスーパーマーケットに行って
お互いにお互いの買い物をした
現金を持ち合わせてなかった自分は
一旦彼女に立て替えてもらった
近くのATMで現金を下ろすと
駐車場の車内で彼女にお金を渡した
「はい、これが自分の買い物分ね」
そうすると
彼女は嬉しそうに500円玉を見ていた
「いま500円玉貯金してるの
ちょうど無かったから良かった〜」
「あれ、そんなタイプだっけ」
彼女は勤続して5年くらい経つが
初任給の自分より給料は低い
500円玉でそんな喜んでくれるなんて
「じゃあ行こうか」
そう言うと
彼女は軽自動車を走らせた
その日は彼女の車に初めて乗った日だった
いつもの自分の車よりお互いの距離が近い
助手席に座るのもなんだか慣れない
ちょっと浅く腰をかけ彼女の運転を見ていた
立体駐車場をぐるぐると下り
出口まできた
彼女は駐車券を取り
精算機に入れた
精算機には料金が表示されていた
【料金は500円になります】
二人ともあの500円玉がすぐ浮かんだ
「えっ」唖然とする彼女
「あっ」笑いそうになる彼氏
「…払おうか?」と聞くと
「…大丈夫」と言って千円札を機械に入れた
ジャラジャラジャラジャラ
お釣りは100円玉で返ってきた
そして彼女は車を走らせた