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解凍せず隠滅する|毎週ショートショートnote:お題【書庫冷凍】参加記事
たらはさん、お題をありがとうございます。貼付記事以下、参ります。
※今回、植物に関する記述がありますが全くの創作物であり、実際の事実とは異なる=間違った 表記をしております。(言い訳で恐縮ですが💦)いわゆる「ネタ」としてお目通しを願いたく(*ᴗˬᴗ)⁾⁾※
常温のものがひとつたりともない。冷蔵も同じく。残されたのは、氷付いた書物の山、また山だ。
せめて雪山なら風情もあろうに…… とぼやいたところで事態が好転するわけでもなく、私はこの乱雑な思考を行動に移すために、頭の回路を切り換えた。
それは、どこにでもあるような雑木林、その林道が緩やかに弧を描いた、その頂点に立つ針葉樹だった。松に目を留めた男は「恐らくクロマツ辺りだろう」と呟きながらその葉と、根元に落ちていた樹皮を採取して帰路についた。
「葉の形と樹皮の特徴が別々だと……? では、これはクロマツではない。アカマツとも思えない。トド松、十四松…… 頭がグルグルしてきたぞ。まずは、どこに報告するべきか……」
自分でも呆れる狼狽振りの後で、男は参加している植物学の民間サークルに、見つけた樹を報告し、
「ああ、松って変異種多いからね。後で特定しないとな、資料貸し出し可能だよ。お疲れさまー」
と仲間にスルッと受け流された。
それから1ヶ月。現実逃避という冷凍庫に仕舞い込み氷蔵していたレポート用紙の束に男は向かい合う。その脇に電動のシュレッダーを抱えながら。
(了)
拙稿題名:解凍せず隠滅する
総字数:503字
よろしくお願い申し上げます。
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