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【本紹介】ころんで学ぶ心理療法④


遠藤裕乃著

逆転移をいかしてみよう

逆転移分析を自己開示技法につなげる方法

自分の逆転移分析をありのままに伝えること

→自分の姿が他者の目にどのように映っているのかを知る体験になる
→Thの素直な自己開示によって「よそよそしい」存在でなくなることによって新しいクライエントの自己洞察に向かうこともある

クライエントが新たな対人関係を学ぶ
→ネガティブなコミュニケートをしても壊れない対人関係があることを学ぶことができる
→主観的な思い込みをしていることに気づいてもらうこと

重症のクライエント向けの自己開示

境界例や統合失調症といったクライエントにたいしてはありのままの自己開示が逆効果になる可能性もある

→「あなたを援助したい」というシンプルな自己開示であれば効果的なケースもある

境界例は度があっていない色眼鏡をかけているくらい「認知のゆがみ」が激しいため、悪循環に陥ってしまう
→Thの素朴な援助欲求を知ることはクライエントが「自分に敵意があると思っていた人が実は自分にポジティブな感情を向けてくれていた」と発見するきっかけになると思う。


自己開示使用上の注意

自己開示は薬味である(メインの仕事ではない)
つまり
自己開示すべきか否か迷ったら開示しない方法を選ぶ
自己開示以外の方法が思い浮かんだらそちらを優せんする

面接室をとりまく環境と逆転移

面接室は完全な非日常空間なのか

多くの教科書では
セラピストが一般的な価値基準や社会通念などから解放された状態で話を聴くことによって面接室という非日常空間が出来上がると書かれているが
決してそうではないのではないか

セラピストはクライエントに影響を与えうる
・職場環境の違いによって「難しい問題を持ち込んでほしくない」と思ったり、「難しい問題にチャレンジしたい」と思ったりする
・セラピスト自身の対人関係や経済問題、家族問題などがセラピーに影響を与えることもある

面接室を取り巻く環境がセラピスト(特に若手のセラピスト)の役割意識にどのような影響を及ぼすのか?

・最初の職場というプレッシャー
→このクライエントがいつまでもよくならないと能力のない専門家だと思われるのではないか
→このようなセラピストの不安により間接的逆転移が生じて、クライエントをやたらとほめるといった行動がみられることがある

◇どうすればいいか?→職場環境を図解してみて、自分が誰にどのような感情を抱いているのかをはっきりとさせると◎

・特定のケースに力を入れてしまう
→初心者は特定のうまくいっている、楽しいと思うケースに力をいれて自分の存在意義を見出そうとしてしまう。
→そうすると、援助動機の源泉が自己愛的傾向に傾いてしまう

◇どうすればよいか?→常に自分の持っているケースの全体像を見渡す
(特定のクライエントの面接が重荷になってないか、逆に楽しみになっていないか、何割のケースがうまくいってないかなどを客観的に把握する)

・セラピスト自身の悩みと重ね合わせて同一化してしまう
→クライエントを直接的に保護することで悩んでいる自分を救おうとしてしまうことがある
→クライエントとの距離を適切に保てなくなってしまう

◇どうすればいい?→「個人の自分」と「セラピストの自分」を別々の存在としてイメージする
2つの椅子を用意して、まず「個人の自分」の椅子に座って自分の悩みをつぶやいて、悩みが増幅されたところで「セラピストの自分」の椅子に座ってそんな自分へ肯定的な言葉かけを行いつつ、「でもその気持ちは個人の椅子にいるときだけにしようね。セラピストの椅子にいるときはクライエントのお手伝いをしないとならないから」と話しかける

・セラピストが病気で面接を一時中断しないといけない
→特に見捨てられ不安が強いクライエントは不安定になってしまいがち
→セラピスト側の逆転移によって過剰な罪悪感やそれを取り除きたいという働きが生じることもある
→病気になった自分への動揺も影響を与えることもある

◇どうすればいい?→変わらない態度で接するように心がける。そのためにはまず、セラピストの自分と病気で動揺している自分を別々の存在としてイメージすることが◎


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