フィジカルコーチとして育成年代にできる事vol.2~楽しみながらできるトレーニング~
科学的研究では、若年アスリートでも適切なトレーニングを行えば、身体パフォーマンスが向上し、傷害のリスクが減少することが明らかにされている。(ハイパフォーマンスの科学 p15)
そして子供や青少年に対するレジスタンストレーニングを支持するエビデンスも多くあり、5~6歳の子供でも安全に効果的にレジスタンストレーニングに参加することができるとされています。
しかし、これらの話は
「適切にトレーニングを指導できる人たちが指導すれば」
という前提があればこそです。
もし適切にトレーニングを指導できる人以外が指導した場合はどうなるでしょうか?ハイパフォーマンスの科学によると、
不適切なトレーニング指導や程度の低い教育的なアプローチをすると、実際、トレーニングに対する適応が減少したり、場合によっては障害を招いたり、快適な生活や健康を損なうことにつながる。
と書かれています。
じゃあ育成年代でフィジカルコーチがいないチームではフィジカルトレーニングはしない方がいいの?なんて思う方もいるかもしれません。
もしフィジカルコーチが育成年代に多く普及するまでフィジカルトレーニングをやらないとしたら、いつまで経っても育成年代のフィジカルトレーニング事情は良くなっていきません。
その現状を変えるために、フィジカルコーチの役割とは、でも書きましたが、育成年代に関わるコーチたちにフィジカルコーチっぽくなってもらうしかありません!!
そこで今回はフィジカルコーチがいないチームでも安全で効果的にできるトレーニングを紹介していこうと思います。
今回のテーマを書こうと思ったのはこのツイートをした所
思ったより多くの人から反応をもらえ、また具体的にメニューを教えて欲しいと言っていただいたからです。
では本題に入ります。
今回は楽しいけど気づいたらフィジカル鍛えられてました系を中心に、リフティングウォーク系、鬼ごっこ系、競争系、動物系、二人組系の5つに分けて書いてきたいです。
リフティング系
これは僕のチームのコーチが『モモでリフティングさせるのは股関節を引き上げるのを目的にやっている』と仰っていたのをヒントに思いついたトレーニングです。
多くのチームがリフティングをウォーミングアップなどでしていると思いますが、リフティングを体の使い方と捉えている人たちは少ないと思います。具体的に言うとモモでのリフティングは股関節の引き上げの動作を鍛えたり、インサイドは股関節の外旋、アウトサイドは股関節の内旋のトレーニングになります。
股関節の引き上げはスプリント動作の際にポイントとなる動きにもなり、育成年代では股関節を引き上げる動きが苦手な子供が多いので是非取り入れて欲しいです。
そしてインサイド、アウトサイドは、可動域が確保されていないと真っ直ぐあげることができないので、可動域トレーニングに使うことができます。
『これができないのは硬いからだよ』なんて伝え方をすると柔軟トレーニングに積極的に取り組むきっかけになるかもしれません。
具体的なメニューを言うと
20mのリフティングウォーク、インステップ、モモ、インサイド、アウトサイド、頭のようにしクリアできたら次、または時間で種目を変えるようにするのが良いと思います。
なぜその場ではなく、リフティングしながら歩くのかというと、動きながらリフティングをすると、ボールに合わせて体を運ぶ必要が出てくるのでコーディネーションの要素も入ってくるので一石二鳥です。また20mと言う設定をクリアするという回数とは違う達成感もあるので、選手が意欲的に取り組めると思います。
その時に声のかけ方によって目的を変えることができます。できるだけ細かくリフティングをするように指示をすると、テクニックや可動域に重点がおかれ、できるだけ速くのように声をかけるとボールに合わせてボールを触らないといけないのでコーディネーションの要素が大きくなります。目的に合わせて声かけを変えてみてください。
※距離や条件(右足だけ、左右交互など)も対象者のレベルに合わせて変えてください。
鬼ごっこ系
鬼ごっこは小学生年代では定番のアップとして君臨する最強のメニューです。鬼ごっこはルールによって様々な遊びができます。そしてルールを変更すればフィジカルトレーニングとして利用することも可能です
例を出していくと、逃げる方も追う方もスキップやバック走などにすることでコーディネーションに刺激が入れることができます。
ケンケンで鬼ごっこすることでプライオメトリクストレーニングのような、スプリント能力に必要な短い接地で大きな力を発揮する刺激を入れることができます。またケンケン鬼ごっこに氷鬼の要素を入れることで、サッカーなどの球技で大切な片足での安定性を鍛えることもできます。
四つん這いので鬼ごっこをすることで姿勢の保持しながらする必要があるので体幹部の安定性に刺激が入ります。
このように鬼ごっこは条件を変えるだけで楽しみつつも色々な要素を鍛えることのできるいいメニューです。
ただし鬼ごっこをする時には、グリットのサイズや何分間やるかを調整することがとても大切です。広いとスプリントする距離が長くなり運動量も増え、狭いと切り返しやターンが増え運動量はそこまで多くないものの筋肉に刺激が入ります。これはサッカーの練習をする時と同じで目的や選手の人数、能力に合わせてグリットを調節する必要があります。グリットの調節は選手の様子を観察しながら調整してみてください。
時間に関しては、長すぎるとだれてしまうし、セット数が多くなってしまうと疲れが出てその後の練習に影響が出てしまうので、1分〜1分半を目安に3〜5セットくらいやるのが丁度いいと思います。もちろんこれもあくまで目安なので選手の様子を見ながら調整してみてください。
競争系
子供たちは誰かと勝負することが大好きなので、うまく競う要素を取り入れてあげるのが有効です。
具体的にはジャンケンダッシュやボール投げ、テニスボール体幹、腕立てヘディング、ボールリレーなどが有効だと思います。
ジャンケンダッシュ
お互いに向かい合いジャンケンをします。そして勝った方が逃げ、負けた方が追いかける。という超シンプルなゲームです。
ここで鍛えることのできる要素としては、反応スピードや方向転換能力、加速能力です。
勝ち負けに合わせて反応する、向かい合った状況から逃げる側は反転してダッシュ、両者とも0からスピードを出す必要があるなど、シンプルな割に多くの要素に刺激を入れることができます。
またスタート姿勢を座る、うつ伏せ、方膝立ちなどに変更するなど様々なバリエーションをつくることができます。
ボール飛ばし
メディシンボール投げの応用みたいなものです。全身を連動させボールを投げる必要があり、またどれだけ高く飛ばせるか競うことも出来るので小学生ウケはいいと思います。そして投げたボールをキャッチするところまでやることで空間認知も鍛えることができます。
バリエーションとしては下から投げる、上から地面に叩きつける。二人組で投げるキャッチするの3種類が考えられます。
※動画ではメディシンボールですが実際にはサッカーボールでやってください。
ポイントとしては下から投げる場合は股関節を曲げて全身を使えているか、上からの場合も腕だけで投げていないか観察することが大切です。
また固まってやると近くの子と衝突する可能性もあるので間隔は広くとって周りに注意してやるように促しましょう。
そして最も大切なのはコーチが見本として超高く投げたり、キャッチを背面キャッチにしたり大人の凄さを見せつけてあげましょう。笑
そうすることで「コーチよりも高く投げてやろう、コーチよりカッコよくキャッチしてやろう」と子供たちのやる気に火がつき意欲的に取り組むと思います。
テニスボール体幹、腕立てヘディング
安定性を楽しく鍛えることのできるメニューです。
今の子供たちは腕立て伏せをまともにできない子供たちも多いので腕で体を支えることを目的にやっています。腕で体を支えることができないと転んだ時に手をついて、簡単に骨折ししまったり、手で相手を抑えることができなくなるので是非やって欲しいメニューです。
ボールリレーは
下半身をこの状態にしたままでボールを転がして10m運ぶリレーです。チームで競争しながら下半身の筋力、可動域を養うことのできるメニューです。
動物系
アニマルフローという動物の動きを真似し可動性や安定性を改善するためのエクササイズが存在します。
とりあえず動画をみてください
こんな感じのエクササイズで動きのしなやかさとでもいうのでしょうか、かなりウケの良さそうなトレーニングが存在します。有効性や効果に関しては僕はなんとも言えませんが子供うけは間違いなくするトレーニングだと思うので是非取り入れてみて柔軟性や可動性を鍛えるきっかけとしてやってみてください。
具体的には、まずコーチが、『みんな真似してね〜〇〇の動き!』と見本をみせましょう。そして子供たちにやってもらい1番出来の良い選手に『〇〇君が1番〇〇みたい!』と褒めることで、他の子供たちも動物の動きに近づくために意欲的になってくれるでしょう。
もちろんアニマルフローをすることが目的になってしまってはいけません。あくまで柔軟性、可動性をトレーニングすることが目的なので、きっかけとして導入することやその他の可動域トレーニングと一緒に取り入れるのが良いかもしれません。
と書きましたが想像以上にアニマルフローは難しいです笑なのでヨガのキャットアンドドッグやカエルストレッチなどを取り入れるのが得策っぽいです。また可動域トレーニングに関しては別の機会にまとめて書きます。
二人組系
最後に二人組のメニューです。これは楽しみながらやるより普通のフィジカルトレーニングに近いメニューを提示します。なので小学生の高学年や中学生向きなメニューになります。
膝立ち基礎練
は軸足の安定性を鍛えることのできるメニューです動画では片足が終わったら反対のようにしていますが、片足連続で10回、できるだけ足は上げたままでやるとより軸足の安定性、軸足の中殿筋のトレーニングになります。
二人組スクワット、屈伸
二人組で軽く、引っ張りながら行うことで1人では安定させることが難しい動作も比較的に安定してできるのでフィジカルトレーニング始めたての子供たちでも安全に行えると思います。
手押し車
手押し車は腕で身体を支える要素と体幹の安定性を鍛えることの出来るトレーニングです。この状態で10m~20mほど前進しましょう。その時にお尻が上がったり、お腹が下がったりしないように注意を払い気になる選手がいれば声をかけてあげましょう。
※二人組の問題点はふざけ合ってやる場合があるので怪我のないように観察しながらやってみてください
まとめ
今回はフィジカルコーチがいない4種や3種の指導者向けに楽しみながら、安全にできるフィジカルトレーニングについて書いてみました。
僕自身小学生に対してフィジカルトレーニングを指導したことがないのでここで書いたメニューが実施できるのか心配ではありますが、4種年代でフィジカルトレーニングを導入するきっかけになれば嬉しいです。そして実際にやってみてみた方がいれば感想を教えていただけると嬉しいです。
今回はフィジカルトレーニングの導入のきっかけとし楽しみながら出来るメニューを書きましたが次回は自重での筋力トレーニングの効果や具体的なメニューについて書いていこうと思います。
Twitterフォロー、拡散、感想色々お待ちしております!
参考
ハイパフォーマンスの科学−トップアスリートをめざすトレーニングガイド− https://www.amazon.co.jp/dp/4905168457/ref=cm_sw_r_cp_api_i_z8mvEbSKHER7F
ラグビー 最強・最速になるヤマハ式肉体改造法 (ヤマハラグビー部の㊙トレーニング) https://www.amazon.co.jp/dp/4837672582/ref=cm_sw_r_cp_api_i_v8mvEbQA9N3X0
編集後記
vol.1をサポートしていただきました。noteでのサポートが初だったのでとても嬉しいです。こんな実績もない人間が書いた、文章も薄っぺらいnoteに共感してくれる人がいるのは励みになります。これからもより良い文章が書けるように努力を続けて行きたいです。