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【高額療養費】が見直されたら・・
こんにちは。
しなやかライフ研究所の小谷晴美です。
私たちの命を守るセーフティネットともいえる
「高額療養費制度」の見直しについて、
先月、厚生労働省から詳細が公表されました。
「第192回社会保障審議会医療保険部会」資料2↓
https://www.mhlw.go.jp/content/12401000/001393881.pdf
今年の8月から令和9年8月まで段階的に
医療費の自己負担限度額が引き上げられる見直しに、
患者団体などから反対の声が上がり、
一部は凍結される見通しとなりました。
まだ国会で審議されている途中ですが、
今日は「高額療養費制度」がどのように見直されようとしているのか、
見直された場合の影響について紹介したいと思います。
■高額療養費制度とは
その前に、そもそも「高額療養費制度」とは・・・
からお話します。
「高額療養費制度」とは、
1カ月に支払う医療費が高額になった場合、
一定金額を超えた部分を支給する制度です。
これは会社員等が加入する健康保険にも
自営業の方が加入する国民健康保険にも
備わっていて
日本の健康保険制度に加入している方は
どれだけ高額な治療を受けても
健康保険が適用される医療費であれば
一か月に負担する医療費には上限があります。
例えば、手術や入院費用として医療費が100万円かかったとします。
①通常、医療費の自己負担割合は3割ですから
窓口負担は30万円となりますが、
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②高額療養費の支給により、さらに自己負担額は減額されます。
この自己負担限度額は、年齢や収入によって異なります。
70歳未満の場合、次のようになります。
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あなたはどの区分に該当しますか?
会社員や公務員の場合は「健保」の収入目安を参考に、
自営業の方は「国保」の所得を参考に
確認してみてください。
例えば、給与収入600万円の方は区分ウに該当しますので、
一か月の医療費が100万円かかっても自己負担額は87,430円で済みます。
仮に医療費が倍の200万円かかってたら
自己負担はいくら増えるか、というと
97,430円と1万円増えるだけです。
また、治療が長期化して高額な医療費が続いたり、
直近12カ月の間に高額療養費を3度利用した場合、
4カ回目からは44,400円(区分ウ)が上限になる
「多数該当」と言う制度もあります。
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このように日本の健康保険制度には手厚い給付があります。
ですから健康保険の対象になる医療費については、
さほど心配する必要はなく、
高額な保険料を支払って医療保険に加入する必要はありません。
高額療養費制度は健康な人にとっても
安心して暮らせる大切なセーフティネットと言えます。
■高額療養費見直しの影響
今年8月から高額療養費制度が見直され、
医療費の自己負担限度額が段階的に引き上げられると、
医療費が100万円かかった場合の自己負担額は下のように推移します。
あなたの自己負担額がどのように変化するか確認してください。
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例えば、
給与収入600万円の方は、87,430円の自己負担限度額が
今年8月から95,260円と8,000円近く上昇し、
来年8月から107,440円に13,000円以上上昇し、
更に翌年8月から119,620円と今より2万円以上上昇します。
なお、赤字は見直しにより直近より増額となるケースです。
但し、※の区分アの上位2区分の高額所得者については
窓口負担額の30万円全額が自己負担となりますので、金額が変化していません。
医療費100万円のケースでは変化が見られませんが、
年収目安1410万円以上の高額所得者の方は、
現在252,600円+αの自己負担限度額が、
令和9年8月以降、下記金額となります。
年収約1650万円~ :444,300円+α
年収約1410~1650万円:360,300円+α
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また、治療が長引いた場合など
直近12カ月に高額療養費を3回利用した方が
4回目以降の自己負担額を減じる「多数該当」についても
以下のように見直される予定でしたが、
「多数該当」については今回、凍結される見通しとなりました。
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長期に渡り高額な治療が続くような場合こそ、
家計に与えるダメージは大きくなることを考慮して、
多数該当の金額については据え置かれることになりました。
■健康保険の保険料は?
昨年一年間に支払った
健康保険または国民健康保の保険料を確認してみてください。
加入している健康保険や自治体によっても異なりますが、
年収500万円の会社員の方は25万円程度を
保険料として納めているのではないでしょうか?
さらに会社も同額を負担していますので、
実質、50万円程が健康保険料です。
自営業の方は、
国民健康保険の保険料納付額をご確認ください。
病気やケガに備えて 、既に私たちは収入の中から
これだけの金額を保険料として納めています。
さらに万一の病気やケガに備え、
「保障」にお金を投じなければならなくなったら、
今の生活に必要な「消費」や
未来の自分を支える「投資」に
回るお金が少なくなってしまいます。
そうならないよう
国民の命と暮らしを守るセーフティネットが
維持されるよう願うばかりです。