【小説】ハルトの残虐な復讐 ~ゾンビ・アポカリプス~
※これはゾンビや死亡描写などが出てくる小説です。
西暦2124年、世界は、実に奇妙なウイルスにより、ゾンビ黙示録に陥った。これは、その中を生き抜こうとする二人の青年の物語である。
「ぐっ!まだこんなに・・・」
18歳のHal・Torge(ハル・トージ)は、向かってくるゾンビに向けて、ピストルを撃っていた。
バン! バン!
ブシャ‼
一人のゾンビの頭部に弾が命中した。しかし、ゾンビは一向に減らない。
カァ カァ
高層ビルの頂上のさらに上の空では、カラスが鳴きながら二匹ほど飛んでいる。
ガリリ!
ゾンビの爪がハルの右目を攻撃した。当分視力は戻らないだろう。かなりがっつりとやられたのだから。
シュ! シュ‼ ザク! ザク‼
ゾンビの手の甲と腕に、二本のクナイが刺さった。
「何だ・・・?」
怪我のせいで視界がどんどん狭くなっていく・・・ 誰だ・・・ あれは・・・
一人の青年がクナイを近接武器にしてゾンビと戦っていた。彼はゾンビの右手の親指を切り落とした。ハルの意識はだんだんと遠ざかっていった。まぶたが閉じていく。
数時間後、ハルは目覚めた。
「ウウッ・・・ ここは、どこだ・・・?」
ハルの顔の右半分は、包帯で手当てされていた。
「あ、目覚めました?」
さっきの青年だ。ハルが目覚めたことに気づいて数秒後、彼はいきなりハルの前で土下座した。
「どうか、僕と一緒にゾンビを滅ぼして下さい!お願いします‼」
ハルはあっけにとられた。
「はあ・・・。あ、助けて下さりありがとうございます。」
ハルは青年に礼を言った。そして、自己紹介を始めた。
「オレの名前はハル・トージ。避難していた時に大群に襲われ、気付いたらここにいました。本当にありがとうございます。」
青年も自己紹介を始めた。
「僕はKai・Walker(カイ・ウォーカー)と申します20歳です。数年前、弟がゾンビにやられてしまいました。」
ハルは思った。なるほど、彼はゾンビ達に残虐な復讐をしてやりたいのだと。カイは説明を続けた。
「そして、彼らの親玉は、Halt・Ishizawa(ハルト・イシザワ)。」
ハルトの『ハル』が、ハル・トージの『ハル』と被るが、これは単なる偶然である。紛らわしいので、ハルトは以後Haltとする。
「さあ、Haltを倒しに行きましょう!」
「ハイ!」
ハルは元気よく返事をした。
In Japan!(日本にて!)
ハルとカイは、古い中学校の前に立っている。
「ここがHaltの基地です。」
「今は廃校だな。」
そして、彼らは中に入っていった。
カイはある教室に着くと、
「この教室からにおいますね!」
と言った。
チャキーン!
彼は日本刀を構えた。刀身が美しく輝いている。
「ヨク、キタナ。」
聞きなれない言語が響いた。そして、後ろには筋肉マッチョのゾンビが立っていた。なんとそいつは、カイの弟の仇なのだ!
「オマエヲ、ヤッツケル!」
「ハッ!」
カイは極度に緊張した。
「カイさん!」
バン!
ハルの銃弾がゾンビの手首に見事命中。ブチッ!と音を立てて手首はちぎれた。
「お前が弟のカタキだな!とどめを刺してやる‼」
カイは激高した。
「オラオラオラオラオラ‼」
日本刀が四方八方に斬撃を入れた。
「ウリイィィ‼」
ムキムキゾンビはバラバラに砕け散った!
「やりましたね!」
ハルもカイも感動した。最高にハイな状態だ。
ふとハルは疑問に思った。
「ところで、さっきあいつが話していたのって、日本語ですか?オレには全くわかりません。」
ハルとカイはアメリカ人であり、公用語は英語だ。
「僕もさっぱりです。」
ゴゴゴゴゴゴ
すさまじい気配が彼らに迫ってきた。
ド
「危ない!」
カイはハルの肩を強く押した。
グシャリ
「ウッ」
カイは顔を引っ掻かれた、いや、引っ掻かれたというよりも潰された。
「Halt!!」
ついにHaltが姿を現した。彼はカイの目玉を手でつまんで持っていた。
「よくもカイさんを・・・!」
カチャ
ハルはピストルを構えた。
「お前はこのHaltにとってのマカクなんだよ ハルゥゥゥゥ‼」
Haltは英語を喋れるようだ。マカクとは、ニホンザルのような種類のサルである。
「えいっ!」
バン!
ヒョイ
「不死身・不老不死・ゾンビパワー!」
Haltは身軽に銃弾を避けた。
「ダイナマイトで決めるゥ!」
ダイナマイトを取り出したハルは叫んだ。
「この世の送別会だァッ‼」
ドカーン
ハルによって投げられたダイナマイトは爆発した。しかし、Haltは頭が残っている。その断面が、触手のようにウネウネと伸びている。
「お前の体を乗っ取る!」
「何⁉」
ザクッ
「くおおっ」
Haltの触手がハルの体に刺さった!
ドカーン‼
ハルは体ごと大爆発した。校舎の天井まで破壊された。すでに外は朝になっており、白い鳥が飛んでいた。
ジュワァァァ
日が差してきて、Haltの頭は灰になり始めた。ゾンビは日光に弱い。
「いつの間に朝に⁉体がアァァ‼」
実は、ハル・トージは、Haltと戦う前、最終手段用に爆弾を体内にセットしていた。そして、Haltの触手に反応して爆発したのだ!たとえハルとカイが散り散りになろうとも、彼らの誇り高き精神は永久に残るだろう。