蛙とカエル

数年前、USJにハリーポッターのアトラクションエリアが建設されて間もない頃、ハリーポッターのグッズストアを見て回った。映画で登場した品物を模した商品が並び、僕も見ていて楽しかった。今では具体的にどんな商品だったか覚えていないが、容器の蓋の上に蛙が引っ付いている商品があった。それは実物でもそこまで気持ち悪くないよと言いたくなるくらい、不気味ささえ漂わせる造形になっていた。カエルと書き表すより蛙と書きたくなるそんな感じだ。僕が気持ち悪いなと思って見ていると、隣で二人の女性客がカワイイと叫んだ。見ていたのは僕と同じ商品だった。不思議なものだと思った。僕は生きているカエルは嫌いではない。黄緑の小さいカエルも土色の手に収まらない大きさのカエルも子供の頃から観察したり、触ったりするなど、嫌悪感を抱くことはなかった。そんな僕でも気持ち悪いと思った見た目を隣の女性はカワイイと言っていた。その二人がこれと同じ見た目の実物がいれば恐らく叫んで逃げるだろう。それでもカワイイと言わせてしまうのはUSJに来ている高揚感のなせる技なのだろうとその時は深くは考えなかった。今、僕の姪のぬいぐるみ軍団の一員にピンクのカエルがいる。本人はカワイイと言って気に入っているが、母親はカワイくないと言って他のぬいぐるみが娘の枕元に居場所を得ているなか、衣装ケースに放り込もうとしている。僕の感性ではそれなりにカワイイ見た目をしていると思う。ピンクのデフォルメされたカエル。目は確かに黒目を長方形にして、丸い瞳の方がカワイイ見た目になるだろうが、所謂ブサカワイイの域から外れていないと思う。姪はピンク色のものは大概カワイイと言うので、これがカワイイの範疇に入るのは無理もないと思った。色々と考えたが僕や母親と姪の着眼点は違うのだ。姪は色味を重要視している。カエルについては良いも悪いも今はない。母親はカエルが嫌いなので色味など関係ない。そのぬいぐるみではなく実物が判断に影響している。僕は単純にぬいぐるみとして見ている。実物に嫌悪感を抱いていないので、ただただ、ぬいぐるみの出来栄えで判断している。だから同じ作り物でもUSJでは気持ち悪いと思ったのだ。僕と母親は実物に対して既に評価を下している。それがぬいぐるみの評価にも影響する。姪はまだそこまでは達していない。まだまだピンク色であることが重要なのだ。彼女もいずれ実物と出会う。その時、彼女自身の感性で判断するのか、それとも、周りの大人の意図せぬ刷り込みを反映して判断するのか、気になる所だ。僕なりの言い方をするならカエルなのかそれとも蛙なのか。・・・恐らく蛙だろうな。


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