演劇脚本を書いた。『バケツをひっくり返したら』おぼえがき
春巻丸掃 と申します。
演劇『バケツをひっくり返したら』の脚本を書かせていただきました。
2023年10月22日に千秋楽を迎えてから早一週間、つれづれなるままに、もろもろの所感を書いていきます。
◆演劇脚本を書くことになった経緯
店でカツ丼を頬張っているとき、演出を担当した “鈴木あさひ” から電話がきました。「演劇の脚本書けって言われたらどう?」などと聞かれました。 私は「やってみるか」と返事をしました。 自転車に乗って帰路を走ると、袖口から風が心地よく抜けていって、何かが起こる、そんな予感がしました。
◆春巻丸掃
私は何者なのか。――何者でもありません。
元は「春巻」だけでぼんやりと生きていましたが、パンフレットやメディア各所に名前を載せるにあたり、その二文字では味気ないだろうと感じたため、改めて春巻丸掃と名乗ることにしました。世界中に私ではない “春巻さん” がたくさんいることもあり区別のためにも……。
普段は漫画やアニメを食べ、ゲームを着て、本を枕に、映画を掛け布団にして眠っています。会員登録の職業欄にはフリーターに堂々とチェックマークを入れ、明け方の空と不景気を遠く眺めながら生活しています。
雑多な文章を書き、ごくたまに気が触れて賞レースに応募するも、雨後の水溜まりで釣りをしているかのごとく、成果が出たことは未だありません。これに関してはもっと数を打て。
◆演劇の出来栄え
出来を評価できるほど、私は演劇に詳しくありません。
でも、最高でした。どこか夢を見ているよう。
しかし最高だったが故に、もっと上手く書けたなら、表現できたならと思うところもあります。また脚本の私だけでなく、役者やスタッフの間にもそういった話があるとちらほら聞き及んでいます。
◆感想をもらえるということ
終演後、アンケートの回収を行っていました。 全4公演を行ったなかで、観客の皆さんのほとんどが座席に残り、アンケートに感想を記入してくれていました。 皆さんの胸中に「なにか感想を書いてやろう」という意志が生まれたことは、その内容如何に関わらず、激励であっても痛烈な指摘であっても、とてもありがたく嬉しいことです。この世に生まれ出た作品のほとんどは感想をもらうどころか、見向きもされずに埋もれていくのが常ですから。 紙のアンケート以外にも、Twitter(現X)にて「#どんどバケツ」のハッシュタグを用いて感想をつぶやいていただくなど、様々な形で皆様の声が届いております。 重ねてお礼申し上げます。まことにありがとうございます。
◆物販、800円という値段
終演後の物販にて、本演劇の脚本(と書き下ろしの小説)を販売しました。
そもそも、始めは脚本を売るということに懐疑的でした。「誰が買うの?」というところが分からなかったのです。自分の作ったものを卑下する気持ちはまったく無く、素直な考えでした。
結果としては、予想を上回る部数が売れました。有頂天です。浮かれています。釣銭を渡す手が震えていたのはきっと寒さとは別の何かがあったからです。
用意していた在庫が無くなって急遽帰宅して刷り直すこともしました。幸いにも雨が降っており、恵みの雨を浴びながら劇場と家とを往復しました。至福の雑用でした。
私個人の力だけでは到底起こりえなかったことです。これもひとえに、良い演劇を作ってくれた役者とスタッフのみんなのおかげです。
安くないチケット代に、さらにお金を上乗せして買っていただいたということを忘れてはいけない。現金な話ですが、世間に出回っている本や映画、その他娯楽の値段を考えると無視できないことです。
本当にありがとうございます。
◆「良い意味で演劇らしくない」
脚本を買ってくださった方から、帰りしなこの感想をいただきました。おそらく、私が演劇畑で育った人間でないことが要因だろうと思っています。
他にないオリジナリティ、あるいはマイノリティを突き進んでいくことは創作にとって重要なファクターだと思っているので、素直に嬉しかったです。
しかし、はたして次に脚本を書いたときにその “らしくなさ” を出せるのか。一度書き上げてしまったことによって余計な力が入り、えぐみのようなものがすっかり抜けて凡庸になってしまうのではないかと、そんな不安が募るばかりです。
そもそも完成させないことには意味が無いのですが……。転ばぬ先の杖を用意することもいいですが、まずは歩き出せよ。
◆以上、感謝
本当に良い経験をさせていただきました。
とりとめもない文章でしたが、私が総じて伝えたいのは「皆さんへの感謝」に他なりません。
こんな何者でもない私に脚本を任せてくれたこと、そして演劇を作ってくれたこと、劇場に足を運んで演劇を観てくださったこと、感想を書いてくれたこと、脚本を買ってくれたこと、全てに感謝いたします。
◆次回
未定です。気持ちはあります。
しかしながら、余力によるとしか言いようがありません。
我武者羅を絞り出し、それを積み上げて出来たのが『バケツをひっくり返したら』です。完成できたのはその我武者羅の歯車がうまく噛み合っただけなのかもしれず、次回も書けるという保証はありません。
臆病すぎるかもしれませんが、実力を過信してはいけません。創作における一番の難関は「完成させること」です。
ただ、気持ちはあります。
続報があればX(旧Twitter(現X))で何か発言しますのでお待ちください。
これにておしまい。
せーの!