IDECOの改正と改悪について
昨年末の税制改正大綱で、改善と改悪が発表されたIDECOについて、自分の見解を述べておこうかと思う。
まず、どういった制度かを自分なりに簡単にまとめると、こうなる。個人型確定拠出年金という別名のとおり、基本的には、自分で用意する年金制度だ。毎月の掛け金で投資をして、その運用益については非課税、掛金部分については、毎年の課税所得からは控除され、最後の受取時に、分離課税の形で課税される。そのときに、退職金扱いになるので、退職所得控除が受けられたり、控除後の課税所得額を1/2にした額が実際の課税所得額になったりと、税制上の優遇措置が受けられる。
以上が、概要になるが、デメリットもある。まず、60歳まで引き出せない。あと継続年数が10年未満でもだめ。口座開いてるだけで、手数料がかかる。ネット証券で171円/月が最低かな。これは、入金をとめても掛かるので、一回始めたら、受け取るまでかかり続ける。あとは、海外に移住なり、転勤なりする可能性がある人はやめたほうがいいかな。あくまで日本在住の人を対象にした制度なんで。他にもあるが、大きなとこは以上。
ここまでが基本。で、年末の税制改正大綱で何が変わる予定なのかという点だが、大きく二つある。これまで、企業型確定拠出年金制度がある大手のサラリーマンだと、12000円/月が拠出限度額だったのが、2025年1月以降は2万まであがったばかりだった。その拠出額が62000円までアップする。自営業者とかは影響が小さいので割愛する。一気に5倍以上になるため、毎年の所得税額の控除額も馬鹿にならない額になる。MAXでかけると、74.4万に、自分が払ってる税率をかけた分が毎年控除される計算になる。仮に、実効税率25%で計算すると18.6万ほどが毎年浮く計算になる。これだけなら、神改正で終わった話なのだが、次の改正が話をややこしくしている。
退職金扱いになると、さきほど書いたが、その場合、退職所得控除が使えることになり、この退職所得控除というのは、メリットが大きいため、乱用できないように、ルールが設けられている。それが5年ルールと、19年ルールだ。5年ルールとは、先にIDECOを受けとった場合に、5年間をあければ、退職金をうけとった際にもう一度退職所得控除が使えるというルール。19年ルールは、先に退職金を受け取ったら、19年以内は、退職所得控除を使えないというルール。この5年ルールが、10年に変更になったよというのが、2つ目の改正内容。これが、拠出額の上限アップと同時に発表になったので、資金拘束のある制度で、後出しでルール変えるなよという話になってるわけだ。60歳でIDECO受取で65歳まで会社で働いて退職金を受け取るというのは、まあわりと可能な将来予想だっただけに、今回のルール変更の影響は大きいと言える。
以上を踏まえて自分なりの結論だが、退職所得控除を2回使えなかったとしても、年収が高い人ほどやる意味は大きい。一応解説をすると、日本の所得税は、累進課税制度で、所得が高いほど、税率は高くなる。5%からはじまって最大45%まで上がる。ここから、掛金分が毎年控除されることになるので、一番税率が高いところを減らすことになるわけだ。受取時に退職所得控除が使えなかったとしても、1/2される点は変わらないため、課税されたとして、毎年の年収の2倍を超える掛金を積立しない限りは、全体で、お得ということになる。また、ここで、最も注目すべきは、税の支払いの繰り延べ効果だと思う。タイミングだけで見ると、毎年払うべき税額を、退職時にまとめて払う形になる。これは、金融工学的にはものすごいメリットになる。何故なら、今の100万と、10年後の100万は同じ価値ではないからだ。S&P500は年利平均7%位と言われているが、100万をこの利率で運用したら、10年で大体200万弱になる。そもそも、日本で生活していると、忘れがちだが、貨幣価値というのはどんどん下がっている。その点も加味して考えた場合、5年ルールが使えなくなったところで、拠出額上限が上がったほうが、よほどメリットが大きい。普通なら、税金の支払いに消える額が投資にまるまる回せるうえに、上限が上がったということは、資金に余裕があるのなら、はじめのほうになるべく多めに拠出して、運用益の増大を目指し、後半は、最低額5000円で続けるなどの調整が可能になったということで、長期投資の考えから行けば、そっちのメリットのほうが大きいよねというお話でした。