舞台『熱帯樹』鬼レポ第2幕※ネタバレ含
熱帯樹!!面白すぎるよ熱帯樹!!
トイレ休憩してきました?第2幕、開幕します…!よろしくお願いしまーす!
「母にも女にもなれなかった律子」
庭に勇を呼び出した律子。
登場した時よりもいくらか沈んでいるような雰囲気で、重たい気持ちをグッとこらえて気丈にふるまっているようにも見える。
警戒心むき出しのチワワ…じゃない勇は相変わらず白シャツで薄着。
「スウェーターを着てくるよ」と振り返って家の中に戻ろうとする。
すうぇーーたーーーー!!すうぇ・・・?!
思わず脳内リピートしてしまう単語!
結局律子に引き留められてお兄様のスウェーター姿は拝めませんでした。(言いたいだけ)
律子は自分の思いの丈をぶつけるように語りだして、勇はただ聞いている。母として我が娘を気にかけているのにこんなにも憎まれ、あまつさえ殺そうと企んでいると知った。恵三郎が言うままに女として着飾っても、彼が見ているのは外面だけで自分の気持ちになんて興味がない。
私には勇だけ。勇が私に抱いている慕情はまぎれもなくて、それだけが縋りつける唯一の真実。拠り所。
一方で自分のしでかした恥ずかしい行為を見られていたと知った勇は動揺します。なんというか「好きな子のリコーダーを誰もいない放課後にアレしてしまった」的な行為を暴露されるんですけど。
そりゃ動揺もするわな。殺せと言われた母にこんな感情を抱いているだなんて口が裂けても言えない。誰も知らない知られちゃいけ~~ない~~~!!(唐突なデビルマンED曲)
律子は優しい勇が自分を拒絶できないのを利用して、「父親殺し」を命じる。
「恵三郎がいなければ私も勇も自由になれる」「母親としてまっとうな生き方ができる」と言いながらその目はどこかギラギラしていて、勇はまた恐怖を覚えたんだろうな。あぁ、この人も郁子と同じことを言うんだって。どちらも愛しいのにどちらも僕に同じように酷いことを強請る。試すようなとっておきの酷いこと。
あ、勇くん一人称「僕」なんですよ、いいよね!!←
結局律子が吐露したのが本心だったのか、偽りだったのか判断はできなかったけど、さっきまで飛び回っていた蝶々が地面でもがいているような息苦しさを感じました。いろいろな感情が流れ込んできて、私は訳の分からない涙が出ました・・・。
「家族をどこまでも愛した兄・勇」
勇はずっと、家族同士が作り上げる醜くどす黒い感情の渦に巻き込まれていました。渦の中心で必死で顔を水面にだして息をするような危うさ。
いつも泣きそうな瞳で家族を見ています。小鹿かな??
そしてとうとう悲劇がはじまるんですよ。
ついに勇が自分を殺そうとしていることを知った恵三郎。母の目の前で勇と恵三郎は揉みくちゃになり、心臓を患う恵三郎が胸をおさえて苦しそうな様子を見せると律子の口からは「あと少し・・・あと少しだわ・・・」と囁く声がもれている。それが、自分の中でずっと描いてきた夢が叶うような高揚感が溢れているように聞こえました。恐ろしい!
いよいよ勇の指が恵三郎の首を絞めようとした瞬間、「これを使って」と差し出された包丁。その場にいた全員が凍り付いて動けない。
包丁に驚いたんじゃない、
包丁を持ってきた郁子に。
客席の私もかたまりました。勇もきっと恐ろしくなったにちがいない。
ここで舞台は暗転。
母は父が死ぬこと、その先の未来を夢見ている。
妹は勇が誰かを殺めることを、命が終わる瞬間に興奮している。
勇の意思はそこにはなくて、ただサーカスの見世物みたいに2人の女に操られているような。
でも勇自身、何をどうしたいという意欲も感じられないから、そうして操られることよりも誰かに必要とされているということのほうがきっと大事なんだろうな。
だから律子にも、郁子にも逆らえない。
逆らうこと、それが自己否定そのものだから。雁字がらめになって涙を溜めることしかできない可哀想な勇…!
あれ??勇、可哀想じゃん!!!?
悲劇のヒロインは郁子じゃなくて、勇?!
ステージが照らされると見覚えある郁子の病室
ここで冒頭、2人が仲睦まじく語り合ったのを思い出して、少しほっとした。
勇はまたそこで郁子に告げられる、あの『約束』。
時刻は夜のはずで、今頃律子は呑気に眠りこけているだろうから今殺して、と。
もう約束じゃなくて命令に近かったと思う。
行ってこい、今すぐ、今ならやれる、私のために、2人のためでしょ?って勇の耳に間髪入れず暗示をかけてくる郁子。
その言葉から逃げるように飛び出した勇。
ほどなくして物音が聞こえて、戻ってきた彼はひたすら怯えて小さく蹲るばかり。
その後を追うようにゆっくりと部屋に入ってくる律子。
勇は、殺せなかったんですね。
だって優しいもん、律子のこと好きなんだもん。
律子も震える声で「勇は小鹿のような、子うさぎのような黒い瞳でただ私を見ているだけだったわ」って。
お母様!!そう!ほんっとに、勇くん、ほんとに小鹿!!いや小鹿をそんなじっくり見たことないけど、奈良公園でしか見たことないけど、多分私が見てきた人間のなかでもトップクラスに小鹿!!…ふぅ〜どうどう。私と同じこと思ってたと知って興奮してしまいましたわ。
結局勇は父も母も殺せなかった。
でも、それこそが勇という人間だった。
彼には人なんて殺せないはずだと、律子も郁子も分かっていたんじゃないでしょうか。
夫の人形としてしか生きられない私も、
ベッドの上で死を待つだけの何も出来ない私も、
勇という人間だけは思い通りにできるんだと。
彼は、勇はずっとその真意を知っていたのかな。知っていながら、それで満足してくれるならいいと思いとどまっていたのか。
可哀想に思うけど、最後まで私には勇の本当の気持ちがわからなかった。
「この屋敷に家族はいなかった」
夜遅く、郁子と勇はあの自転車に乗って海へ向かった。嬉嬉として出かけていくもんだから、ちょっとお出かけでもするのかな?なんて思っていたけど、あ!海に身を投げて心中するんだ…と気がついた頃にはもうペダルの軋む音も遠くなっていて。
この家の住人はみんなワガママですね。
自分の欲望とか理想のために、何かを犠牲にすることを厭わない。
家族であることよりも、自分であることを優先しすぎている。
父ではなく男として、母や娘ではなく女として、勇はそんな家族の中で居場所をなくした。父や母ではなく自分の心を何度も殺して生きていた。家族でもなんでもない男女が互いに偽って憎しみあっていただけ。
叔母の信子にはそれがずっと見えていたのか、諦めたようにこの家を去ります。
誰かが誰かを殺すことはなく、若い2つの命が蝋燭の最期の火のように燃え上がって消えていっただけでした。
静かになった家の中、黒い壁に囲まれた部屋。今までずっとその壁として見守っていた私も息を殺して。
恵三郎はまだ呑気なことを言っている。
相変わらず律子を愛でるばかりで周りのことが見えていない。何も見えていない。
律子は「私、庭に熱帯樹を植えるわ」と言い出す。
この家を覆い隠してしまうほど生い茂る緑の葉
血のような真っ赤な花を咲かせる熱帯樹。
自分の生命力で大きく腕を広げる熱帯樹の中で、彼女は何も叶わなかった夢と自由を隠して生きていくんだなと思いました。
まとめ
いや、長いわ!!!!?!!
てかちょっとこれ…考察がTooマッチ!!
しかしこんなにも書き連ねてしまう魔力がありました。すごい舞台を目撃した。
終わったとき、ステージに並んだ5人を見て思わず「え?!!これだけの少人数で?!」と疑うほどに完成度が高かった。
カーテンコールで熱帯樹キャストがあの扉の向こうからひょこっと顔を出して手を振る光景、めっちゃ可愛い…さっきまでのギスギスした空気をぬぐい去るみたいな、もう浄化効果ハンパねぇな…ってなる可愛さでした。
帰りの電車に揺られながら、ずっと思い返してしまう。
会場から遠ざかっていくのに、気持ちが全然離れてくれない。あの屋敷に自分が縛り付けられたみたいな感覚が続きました。
帰宅して何もできずにただボーッとして、旦那から「帰ります」とメッセージがきて。
もうこんな時間なのかと気づくという。
家族は選べない。
どうしたって血は変えられない。
互いに思いあえない関係を、家族と呼ぶのは難しいんだなと改めて思いました。
私のレポはここで終わり!!
長らくお付き合い頂いてありがとうございます。主観的すぎるかと思いますが、こういう考え方もあるんやなと受け取ってもらえたら幸いです。
次は何のレポになるのか!?
また鬼レポできるのを楽しみにしています!
読了ありがとうございましたぁ!!!目を労わってください!!