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クリスマスイブと私

一生懸命用意したお手紙も読んでくれなかった。
欲しいものも、何ひとつくれたことはない。
サンタクロースは何故我が家に来ないのか。「煙突が無い家には来ないのかも」大真面目にそう思っていた。

ことはもっと単純で、我が家が貧乏だっただけ。

大学生になってからは、バイトに明け暮れた。冬休みとなるクリスマスイブにはシフトを入れた。遊ぶお金が欲しかったこともあるけれど、我が家は定期代も教科書代も、わたしの負担。働かずにはいられなかったのだ。

自分の家庭を持ってからは、サンタさんのふりをした。子どもたちの枕元にあるお手紙をもらい、隠しておいたプレゼントはリビングに飾ったツリーの下に置いた。何年そうしていただろう。いつの間にかファンタジーとリアルの区別がつくようになった子どもたちは、直接親に欲しいものをねだるようになった。

ユーミンは「恋人がサンタクロース」だという。

恋人とデートして、美味しいレストランで食事して、プレゼントを交換する。そんなキラキラフワフワした記憶はない、クリスマス。夫と結婚する前だってそういう瞬間はあったはずなのに、もはやキラキラもフワフワも遥か彼方に行ってしまった。わたしにとってのクリスマスは、ほかの日とあまり変わり映えのない日常。少し周囲が浮き立っているだけ。

しかし、である。

今年のクリスマスイブに備えて、わたしはワンピースを買いに行った。小さめのパールのネックレスを買って、編み上げブーツを買った。

メイクの仕方を教えてもらいに行かねばならない。普段はファンデーションと口紅のみ。その口紅もマスクの下に隠れているから、塗り直すことはない。自分を魅力的に見せる方法など、どうでも良くなったのはいつのことだったか、思い出せないでいる。

これではダメだ。少しでもマシな自分で、クリスマスイブを迎えたい。女優さんのように美しくなるのは無理だけど、いまできるいちばん綺麗なわたしでいたい。

2023年12月24日、浦井健治 Christmas Dinner Show。今年の観劇ライフをあざやかに彩ってくれた彼と一緒に過ごすイブのひとときを想像して、こころが沸き立つ。

ブーツを今から履き慣らしておかなくては。
ワクワクが止まらない。

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はるまふじ
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