またいつか、帝劇でクラップしようぜ! 『ガイズ&ドールズ』再演に祈りを込めて
7月9日、13時。帝国劇場前。
『ガイズ&ドールズ』東京公演千秋楽の幕が上がる時間だ。本来ならば。
何度となく訪れたこの場所を、最後に訪れたのは10日ほど前だ。有休をとって観るつもりでいたその日の公演は、やはり13時開演の予定だった。いつもはテンション高めの観客がざわめく入口付近で聞こえたのは、あたりを行き交う会社員たちのわずかな話し声と、車のエンジン音ばかりだった。
公演再開への祈りを込めて、何枚かの写真を撮った。
映画を2本観て、家路についた。
私の持っていた公演期間後半のチケットはすべて中止対象になったけれど、せめて東京千秋楽だけはと願い、毎日聴いていた「7月7日、晴れ」。
届かなかった。七夕の夜に7月9日東京千秋楽公演中止のお知らせが届く。
いてもたってもいられなくなって、9日の13時ごろ、帝国劇場前に行った。6月26日の昼公演から中止になった公演は、全41公演のうち21にのぼる。
初日のカーテンコールが脳裏によみがえる。
スカイを演じた井上芳雄さんの、
ワクワクしつつも清々しい顔。
サラを演じた明日海りおさんの、
緊張を帯びつつも嬉しそうな顔。
ネイサンを演じた浦井健司さんの、
どっしりとだけど神妙な顔。
アデレイドを演じた望海風斗さんの、
正しいお辞儀に戸惑う困り顔。
「初・帝劇の人!」と井上芳雄さんに呼びかけられて、元気よく手を上げたビッグ・ジューリ瀬下尚人さん。正しいお辞儀が分からなくて戸惑う望海さんに、「合ってます」と教えてくれたナイスリー・ナイスリー・ジョンソン田代万里生さん。一人一人の胸の中にあった高揚感と疾走感は、2階の奥のほうにいた私にまで飛んできた。
どこからか、「If I Were A Bell」が聴こえたような気がして振り返る。
慣れないおしゃれをして、ハバナへ行って、羽目を外して楽しそうに伸びやかな声で歌い、「帰りたくなぁい」とスカイに甘えるサラは、居なかった。
居たのは、『ガイズ&ドールズ』の看板の前で、入れ替わり立ち替わり写真を撮っている、たくさんの人たちだった。
観客の落胆と演者の皆さんの無念さが、胸に染みる。
祈らずにはいられなかった。
「いつの日か、またここで、このカンパニーで再演を」と。