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キャッツ・シアターにさよならを
小学校4年生の時に観た劇団四季の『キャッツ』。寝ても覚めてもあの幻想的な不思議な世界が忘れられませんでした。言葉にできないくらいの衝撃。この空間に自分も入りたい!と即座に惹かれて、以来ミュージカル漬けの人生を歩むことになるのです。
井上芳雄 『井上芳雄のミュージカル案内』より
福岡の普通の小学生だった井上芳雄少年の運命を決定づけた作品、『キャッツ』。日本では1983年に初演がかかり、以来各地で上演されてきた。
キャッツ・シアターは、劇団四季が『キャッツ』のために、東京・大井町に作った専用劇場だ。2018年8月にこけら落とし公演が行われて以来、ロングランを続けてきた。
「ある演目のためだけの劇場」なんて、勉強不足なのかもしれないが、私は聞いたことがない。なんたる贅沢なのだろうと思う。『キャッツ』の世界観を存分に楽しめるように設られた空間で、『キャッツ』を楽しむ。これ以上の幸せがあるだろうか。
キャッツ・シアターの内装については、詳しく文章で綴るより劇団四季のホームページに以下のようなものを見つけたので、そちらに説明を譲ることにする。
座席はこんな感じで、ステージをぐるっと囲むように配置されている。
『キャッツ』というミュージカルについて一言で説明するなら、「個性豊かな猫たちが歌って踊るミュージカル」としか説明のしようがない。観客はステージ上の個性豊かな猫たちに、人間社会と似たものを感じつつ、ステージで個性を炸裂させる猫たちの歌と踊りを、存分に楽しむ。そんなミュージカルだ。
一応、劇団四季ホームページにあるストーリーへのリンクを貼っておく。
リンク先を読んではみたが、やはりしっくりこない。ジェリクルキャットに選ばれるために猫たちが踊っている、というストーリーだと書いてあるが、全然そんな感じはしない。
猫たちは、踊りたくて踊っている。歌いたくて歌っている。客席からはそう見えた。
専用劇場のキャッツ・シアター観客席に座る私たちは、猫たちが集まるゴミの山の中にいる。しかも、猫と同じサイズになって。いわば、私たちも『キャッツ』の世界に取り込まれている状態なのだ。もしかしたら、私たちも猫なのかもしれないとすら思う。
個性的な猫の皆さんたちであるが、私が好きなのはオバサン猫のジェニエニドッツと、鉄道猫のスキンブルシャンクス、カッコいいボンバルリーナである。好きポイントは、それぞれダンス、出てくる場面全体、ダンスと歌という感じだろうか。
有名な「メモリー」を歌い、最終的にジェリクルキャットになるグリザベラよりも、ほかの猫たちが私にとって印象に残ったのは、きっと大いに個性を主張した猫たちが、最後にジェリクルキャットになるグリザベラに注ぐ視線が、優しいからだろう。
とまあ、そんな風に『キャッツ』の世界観を余すところなく大いに楽しむために作られた専用の空間、キャッツ・シアターが今月20日の千秋楽をもって閉館してしまう。
『キャッツ』の公演自体は、7月下旬から福岡に移動して続くわけだけれど、専用劇場が無くなるのは寂しい限り。だけど、これは劇団四季が考える次のステップなのかもしれない。『キャッツ』というミュージカルを次のステージに引き上げるための。そう思うことにしよう。
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