1月観劇記録 『イザボー』
宝塚時代から、ダークなお役を演じることの多かった望海風斗さん。卒業後、満を辞してのダークヒロイン役は、フランス史上最悪の王妃と呼ばれるイザボー。共演に甲斐翔真さん、上原理央さん、上川一哉さん、那須凛さん、石井一孝さんら豪華メンバー。薔薇を背負う望海さんを見るとつい、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』を思い出す。
宝塚卒業後初のダークヒロイン。観とどけねばなるまい。謎の使命感を胸に、お久しぶりの東京建物ブリリアホールへ向かう。
観劇日・キャスト
2024年1月27日(土)マチネ
場所:東京建物ブリリアホール
キャスト(敬称略)は以下の通り
あらすじ
感想
圧巻!イザボー・望海風斗さん
まずイザボーの登場が、ほぼ宝塚のトップスター登場。この舞台は彼女のためのものだと否応なしに気付かされる。宝塚のトップスターさんはみんな劇場を制圧する力というか、支配する力が強い。だが望海イザボーは別格だ。目が望海さんにしか行かなくなる。美しく、妖しく、強い。
望海さんの歌の上手さについては、特にここで触れるまでもないくらい分かりきったこと。だがそれでもやはり、まだ新しい引き出しあったの?と驚かされる。ロックテイスト強めの音楽が、イザボーの魅力を引き立てる。本当にこの人、なんでもありなんだな?と変なため息が漏れる。
オルレアン公・上川一哉さんのラップが上手い
曲がラップになる箇所がいくつかあったのだけど、オルレアン公のラップが1番上手かった。カッコいい。ミュージカルにおけるラップの扱いはけっこう難しいと思ってるんだけど、この使い方は…ありなのか?基本的に説明セリフ(歌詞)の多いミュージカルなので、まあ、ありか。
ミュージカル俳優で皆さん歌は上手いのだけど歌が上手いからと言ってラップが上手いとは限らないのだなと、新しい発見があった。また別な才能なんだとわかったのは収穫。
音楽がカッコいい!
グランドミュージカルのようなクラシカルな曲調ではなく、ロックあり、ラップありで曲の異種格闘技戦みたいだった。歌いあげるみなさんはさすがだし、できればCDを出して欲しいなと思う。
ミュージカルでCDが発売される演目はわずかなので、期待せずに待つことにする。
俳優さんたちのお芝居について
音楽もダンスも衣装もセットも良かったのだけど、演出には不満が残る。「芝居」が観られなかったからだ。ここのところ色々作品を観て、「日本語の音では言葉に乗せられることは少ない。代わりに日本人俳優の細やかな芝居で補うところが日本のミュージカルの魅力」と感じてるわたしの目には、歌詞やセリフでみんな説明してしまうのはもったいないと映る。だって、真ん中にいるのは望海風斗なのである。芝居で魅せられる人なのである。なぜ彼女の魅力の一つををわざわざ封印するのか。世界に打って出たいなら尚更だ。やるべきなのは日本語で説明セリフをつけることじゃない。日本人の芝居力を見せつけることだ。
終わりに
歌も踊りもカッコいいし、「ミュージカル観た!」って気になるし、ブリリア特有の音響の悪さも感じなかった。イザボーアクスタを買ってホクホクする程度には楽しかった。
だがやはり、個人的には不満が残る。望海風斗さんの魅力を活かしきれていたか。彼女が一流なのは歌だけではないのだ。芝居をもっともっと見せてほしかったなと思うし、「MOJOプロジェクト」として世界に打って出たいと言うなら、日本人の役者さんらしさを十二分に活かした脚本・演出にした方が良いと思う。
楽しくなかったわけじゃない。イザボーアクスタは机の上にあるし、携帯にはイザボーのキーホルダーをつけてジャラジャラいわせてる。パンフレットも買った。「もっとこうだったらもっと楽しかったな」があるだけ。
再演があったら行く?と誰かに訊かれたら、なんと答えるだろう。今のところ、答えは出ていない。
いただいたサポートは、わたしの好きなものたちを応援するために使わせていただきます。時に、直接ではなく好きなものたちを支える人に寄付することがあります。どうかご了承ください。