
松下優也さん、飛躍の予感 ミュージカル『ケインとアベル』
松下洸平さんを舞台で観たことが無いのと、松下優也さん咲妃みゆさん愛加あゆさん山口祐一郎さんといった、ミュージカルを観に行くと必ずどこかでお見かけするお馴染みの共演者の方々に釣られて、大した事前知識なく観に行った。
結論から言う。大変良かった。
曲が良いダンスが良い芝居が良い。ストーリーは王道なので誰にでもおススメできる。
というわけで、あらすじからご紹介を。東宝のホームページから引用させていただくことに。
物語は、フロレンティナ(咲妃みゆ)の回想で始まる――。
20世紀初頭——ボストンの名家ケイン家に生まれ、銀行家の父の跡継ぎとして祝福された人生を歩むウィリアム・ケイン(松下洸平)。幼くしてタイタニック号の事故で父親を亡くしてしまうも、父のような銀行家になるべく学業に専念し、名門ハーバード大学に入学。卒業後はケイン・アンド・キャボット銀行に取締役として入行する。
ウィリアムが生まれた同じ日にポーランドの山奥でヴワデク(のちの、アベル・ロスノフスキ)(松下優也)は生まれ、貧困と劣悪な環境で育ち、やがて戦争によるロシア軍の侵略により孤児となる。度重なる苦難を乗り越えて、アメリカへ渡り、アベル・ロスノフスキと名乗るようになる。その後、アベルはウェイターとして働く中で、持前の頭の良さと忍耐力を発揮。のちに、ホテル王、デイヴィス・リロイ(山口祐一郎)に認められ、ホテル経営に携わるようになる。同じ移民仲間のザフィア(知念里奈)と結婚する。
しかし、そんな矢先、ニューヨークが大恐慌に襲われる。株の暴落によりデイヴィス・リロイが非業の死を遂げる。
アベルはリロイのホテルへの融資を断ったウィリアムに復讐することを決意。2人は対立を深めていく。
より引用
ちなみにここには書かれていないが、フロレンティナはアベルの娘で、やはり実業家である。
お芝居について
裕福な銀行家を親に持ち、父を早くに亡くすもはじめから「持っている」ケインと、貧困を乗り越え自らの才覚で成り上がるアベル。育ちの良さからちらりと見える野心を丁寧に演じる松下洸平さんと、ギラついた野心を我慢強さで覆い隠す松下優也さんがともに魅力的。
松下洸平さん、フランク・ワイルドホーンの曲を歌いこなしきれているかというとちょっと…という面はあったものの、その分芝居で物語を引っ張っていた。
しかし、この公演で触れておきたいのは松下優也さんの充実ぶり。もともと日本人離れしたスケールの大きい役者さんだけど、その身体性と歌唱力の魅力が、アベルにギュギュッと凝縮されている。
日本ミュージカル界の気さくなキング・山口祐一郎さんと並ぶとスケールの大きさが更に際立ち、魅力が増していく。祐さんが実に楽しそうだったのが印象的だった。
ケインとアベルの対立に巻き込まれる女性たちを演じたのが、知念里奈さん、愛加あゆさん、咲妃みゆさん。咲妃みゆさんは昨年『カムフロムアウェイ』で新人リポーターとCAと世界一カワイイウォルマートの店員とボノボを見事に演じ分けた、恐るべき役者。彼女の芝居力がこの作品を下支えし、深みを与え、周りの人の芝居を引っ張り上げていた。カワイイだけではない役を、また見せてほしい。
ダンスが、上手い!
ダンサーさんだけが踊るわけではなく、主要キャストもみんな踊る、身体能力が必要なミュージカルだった。松下優也さんはまあ踊れるよね、咲妃みゆさんは踊るよね(もともとヅカのトップ娘役さんだし)、までは想定の範囲内。
松下洸平さんがけっこうがっつり踊ってて、新鮮だった。キレもあったし、ぜひまた身体性の高いところも見たい。
終わりに
ストーリーは王道。20世紀初頭のニューヨークのビジネス界を舞台にケインとアベルの対立を描くと見せて、家族の物語に着地する。民族的な背景や歴史の知識無しでも楽しめて、曲が良くてダンスが良くて芝居が良い。
たぶん、この先再演がかかり、長く愛される作品になるに違いない。そんな作品誕生の瞬間を目撃できたことが、素直に嬉しかった。
松下優也さん、次の作品は『キンキーブーツ』。ダブルキャストでのローラ役。こちらも力のある作品で、ローラは名だたる名優の演じてきた役。もともと舞台映えする役者さんだったが、2025年さらなる飛躍の予感。
2030年に完成する新帝劇では、きっと0番に立つ常連となることだろう。
いいなと思ったら応援しよう!
