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【ネタバレなし】役者・高橋一生を味わう 『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』

大人気コミック『ジョジョの奇妙な冒険』。
累計販売部数は、1億冊を超えているという。

その人気キャラクター・漫画家岸辺露伴を主人公にしたスピンオフ作品『岸辺露伴は動かない』が実写ドラマ化されたのは、2020年の年末。それから毎年年末に実写ドラマが放映され、今年5月26日、満を持して映画が公開された。選ばれたエピソードは、ルーヴル美術館バンド・デシネプロジェクト作品として荒木飛呂彦先生が描いた『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』。

年末の実写ドラマを楽しみに観ていたわたしは、原作を購入し何度も読んで、ワクワクしながら公開を待っていた。公開2日目に観た『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』は役者・高橋一生さんの魅力がぎゅうぎゅうに詰まった作品で、さて次はいつ観に行こうか?と思わされた。まだ公開3日目なので、これからご覧になる方のためにあらすじと個人的に感じた見どころのみを、書いておこうと思う。

あらすじ

「この世で最も黒い絵って、知ってる?」

岸辺露伴(高橋一生さん)は自宅で執筆中、ふと昔出会った女性に言われたことを思い出す。連載漫画の取材のため立ち寄った骨董屋で見つけたオークションの出品リスト。そこに載っていた「黒い絵」に導かれ、ルーヴル美術館に所蔵されているという「この世で最も黒い絵」を探しに、露伴と担当編集者・泉京香(飯豊まりえさん)はフランス・パリへと向かう。そこで二人が目の当たりにしたものとは・・・

はるまふじ的注目ポイント:画づくり

テレビドラマのシリーズでも画作りは特徴的だったけれど、どこか異世界を思わせる画面の色味はそのまま、じっとりとした湿気を感じる映像になっている。作品全体の持つ湿度が、ジャパニーズホラー感を増幅させる。

青年露伴が夏を過ごす祖母の家と露伴邸とが、ともに露伴の「心のホーム」であるというつながりを映像で感じさせる。美術や小道具でも、これまでテレビドラマでは描かれてこなかった露伴の内面に踏み込んでいる。

はるまふじ的注目ポイント:ルーヴル美術館所蔵の美術品たち

ローアングルを多用する本作は、ほんもののルーヴル美術館所蔵の美術品たちや建物の壮麗さを「これでもか」と見せつけてくる。もはやため息しか出ないほどだ。素晴らしい芸術の数々につい陶然としてしまう。

ある意味、これだけのアート作品が一か所に集まっていると「世界一どんな不思議なことが起こってもおかしくない場所」なのではないかという気にさせられる。それほどに、ルーヴル美術館は強いパワーを放っていた。

いつもは不遜な岸辺露伴が、なんだかちっぽけな存在にも思える。だが畏怖さえ覚えるあの空間に飲み込まれることなく、矜持を漂わせ立つ露伴を体現する高橋一生さんは、さすがとしか言いようが無い。

はるまふじ的注目ポイント:役者・高橋一生の芝居

もう本当に観てくれと言うほかない。今まで高橋一生さんのお芝居を色々観てきたという自負はある。映画、テレビドラマ、舞台とさまざまな表現形式で一生さんを観てきたけれど、『岸辺露伴 ルーヴルへ行く』の高橋一生さんが演じているのは、なんというか岸辺露伴であって、岸辺露伴ではない。

スクリーンに岸辺露伴が姿を現した時、姿かたちはテレビシリーズの岸辺露伴だった。けれども、そこに居たのはいままで観てきた岸辺露伴とは違う人物にも見えた。傍若無人さや不遜さがなりをひそめ、胸の奥のある女性との思い出に対峙し、決着をつけようとしている男とでも言おうか。

詳しくは言えないが、映画後半の高橋一生さんのお芝居とあわせて考えると、こんな高橋一生はどこでも観られない。唯一、この作品でしか。

めんどくさいが愛おしい男ならいくつか作品は頭に思い浮かぶし、女性役(入れ替わり含む)だって2回やってるし、ひたすらピュアで優しい人も思い浮かぶ。

だが、少なくとも高橋一生さんの本作のようなお芝居を観た記憶は、わたしには無い。

それだけでも、何度か観に行く価値があるというものだろう。もはや「漫画原作の実写化」を超えたお芝居を堪能する、貴重な機会に感謝したい。


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