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『アルジャーノンに花束を』チャーリイに会うために

髪を切りたい。

普段、髪はいつもショートだ。理由は単純で、手入れが大変だから。伸びたらヘアケアが必須じゃないか。ただでさえ毎日毎日、やることに追われているというのにこの上ヘアケアなんて、と思うのである。

あんのじょう、伸びたら傷みがはげしくなって切れ毛だらけだ。しかし何故か行きつけの美容室の予約が取れない。おかしいな。そんな人気店だっただろうか。ますます美容室から足は遠のく。

よみうり大手町ホールで観た朗読劇の配信チケットを、購入した。生で一度観ているけれど、また観たくなったから。

最前列ど真ん中に座る自分の後頭部がくっきり映っているのを、見てしまった。それどころか、アフタートークのところで実に騒がしく大きめのリアクションをしているのを目撃してしまった。

…誰だ、あれは。
あんなのはわたしじゃない

そう思いたかった。

傷みがはげしくなって切れ毛が多くなった髪をワックスで撫で付け、ひとつに束ねた見覚えのある黒い影。やけに耳が大きく見える。影は肩を振るわせ、手を叩き、勢いよく手を振っていた。

あんなにリアクションが大きいのか。もしこんな冴えない姿が目に入ったら、どうしよう。いや、彼が普段舞台の上で向き合う女優さんに比べたら、どんなにがんばっても冴えないことに変わりはないし、舞台の上から見えるわけではないけれど、もう少し何とかできないだろうか。いや、しなくてはいけない。

舞台の上にいた浦井健治さんに再び舞台で会うまで、あと2週間しかない。

さていつ、髪を切りに行こうか。

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はるまふじ
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