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【4選手が語る2025の覚悟】中村桐耶・田中宏武・木戸柊摩・深井一希(北海道コンサドーレ札幌)1次キャンプを終えて

岩政大樹新監督を迎えた北海道コンサドーレ札幌の沖縄キャンプが24日で一区切りを迎えた。

始まる前は期待と不安。2つの感情が入り交じっていたが、練習や練習試合を何度か見た感想としては、着実に楽しみなチームになってきている。

特に守備のはめ方やラインコントロール・スライド類がこれまでより整理されており、攻守における切り替えの意識はチーム全体で非常に高い。

一方で戦術理解をし切れていない選手が前線に入ると、ずるずるとプレスがズレていき、チーム全体で後退するシーンも散見しており、ファーストDFの基準点を作る形になる最前線の選手の役割は得点と同様に重要になってきそうだ。

そういった意味では、昨年の夏に加入し、本領を発揮できずに終わった感のあるバカヨコが面白そうだ。プレスの先導役、ボールを引き出す動き含めて、味方と相手の状況をしっかりと見ながら、プレー選択をできている。

得点数をどこまで伸ばせるか?の課題もありそうなものの、現状、FWの中で開幕スタメンの最有力になってきそうだ。

そして、別格の存在感を放つのが今シーズンより札幌への電撃復帰を果たした高嶺朋樹だ。復帰に当たっての想いは先立って、高嶺選手にインタビューをさせて貰ったので是非こちらをご覧いただきたい。

言葉にそぐわぬ、プレーと存在感を既に放っており、今シーズンのチームの中軸を担うのは間違いないだろう。

改めて、「よくぞ帰ってきてくれた」という気持ちだ。

7シーズンという長きに渡って指揮を取ったミハイロ・ペトロヴィッチから新体制に変わり、チーム全体に競争意識が高まっているのは間違いなさそうだ。

そういった変化を起こしやすい環境下の中、各人がそれぞれの覚悟を持って、新シーズンに臨んでいる。

4選手に2025年への想いを聞かせて貰ったので紹介したい。

①中村桐耶 「僕がこのチームの中心として引っ張りたい」

昨年のJ2降格が決まった後の試合後、クラブの象徴でもある宮澤裕樹はこんなコメントを残している。

【このチームを今後、引っ張っていくのは誰なのか?】

この問いのアンサーとして浮かぶのが中村桐耶である。沖縄キャンプでの彼の振る舞いを見ていると、自分がクラブの中心になるんだという気概を十分感じられた。

「戦い方が変わった以上、イレギュラーが起きるのは当たり前なのでそこをどう修正するか?後ろの選手がより声掛けして、コミュニケーションを取らないといけないと思っています。毎年、覚悟を持ってやっているつもりですけど、いい意味で変われるタイミングだとも思うので。そういうキッカケの1年に出来ればと思ってます。

大樹さんからも、ラインコントロールや守備のはめ方のところ含めて、後ろの選手が前をどんどん動かしていけと言われています。

自分の変化を感じると言ってくださるのなら、自分でもいい方向に向かっているのかな?と思うので、このまましっかりと継続して、周りを巻き込み、いいチームになるようにしていきたいと思います」

広島戦後の、宮澤選手の言葉を今年、25歳を迎える中村はどう受け止めたのか?問うてみると、

「そこは自分自身も薄々感じていました。他のチームを見ても20代前半の選手が中心でやっています。このチームはまだまだ、30代の選手に引っ張って貰っていたところもありましたが、強くなるには、若手からの突き上げが絶対に必要と感じていた中での宮澤選手の発言を見て、感じるところがありました。それも含めて今回のキャンプに入る前から自分が責任を持って積極的に行動を起こせればと。」

クラブの継続的な発展にはアカデミー育ちの選手がトップチームの中軸になる流れが必要不可欠だ。その重責の大切さは中村自身も自覚している。

「今はアカデミー出身の荒野くんや深井くんがチームの中軸としてやってくれています。ただ、彼らの下の年代のアカデミー出身の選手がなかなか活躍しきれていない現状の中、アカデミー出身者として、僕が中心として頑張ることでアカデミー出身の選手が活躍する流れを僕から作らないといけない。昨年の菅くんの満了のリリースを見て、僕も強く思いましたし、そのあと、朋樹くんが入ってきましたが、自分も25と20代中盤に差し掛かってきた中、チームを引っ張る20代の選手が出てこないと、このチームは強くなっていかないと思っているので。先輩任せではなくて僕がその中心として今年は引っ張っていきます

技術的なエラーは長いシーズン少なからず出るものだと思う。だが、今の中村からは心の変化を明確に感じる。

この想いを絶やすことなく、シーズンを戦い続けた時、中村桐耶のクラブにおける立ち位置はまた変わっているはずだ。

もうひとつ、殻を破る予感を感じさせる桐耶の2025年が始まった。

②田中宏武 「今年、結果を出せなかったら終わりだと思っている」

これまでとまとう雰囲気が違う。そう思わせてくれた一人が田中宏武である。
一種の飢えや危機感のようなものを全身から滾らせているのだ。今シーズンは大学時代から得意としていた、左のワイドを軸にプレーしている。

「自分が一番得意のポジションです。ここで出来なかったら。自分のやりたいところをやらせて貰ってダメなら、プロとして後がないと思っています。そういう意味では、結果の部分もそうですし、まずは自分の特徴というのをどんどん出したいと思ってました。沖縄キャンプはいい取り組みができたと思います。」

昨シーズンも幾度かチャンスを得たものの、近藤・菅を中心とした両ワイドの序列をひっくり返すことはできなかった。

葛藤もあった。チームが苦しむ中、田中は右膝を負傷し、手術をして長期離脱をするか否か?の判断にも迫られたが、リーグやカップ戦での出場機会を逃したくないと保存療法で戦う決断を下した。

「膝の半月板を50パーセント断裂してしまいました。元々高校の時にも痛めて、当時も手術をしなかったので、当時の傷なのか?昨年やった傷なのか?はわからないんですが、でも手術をしちゃうと、半年から8ヶ月かかってしまう状況でした。特に昨年はワイドの人数が足りなくなるシーズンでもあったので、なんとか長期離脱を避けたかった。同じ経験をした(駒井)善成くんにも相談して、筋力的な補強含めて対応して、手術しない形でやりながら頑張ろうと決めました。今は全然問題なくできています!」

そんな田中のプレーを見ていたのだろう。今オフ、複数の他クラブから触手が伸びた。中には今季のJ1昇格のライバルになりそうなクラブもあったが、田中宏武は赤黒のエンブレムを背負い、勝負する決断を下した。

「監督も変わる中、0からのスタートですし、札幌で勝負したいと決断をしました。左のワイドはミンギュ・桐耶・大和といますが、自分と似た特徴の選手はいないので。今日の得点もそうですけど、カットインからの得点もあるし、それを見せながら縦への突破もできる。攻撃の違いは自分が一番出せると思います。

左ワイドの競争では絶対に負けたくないなと思ってますし、本当に覚悟を決めてやります。今年結果を出せなかったら終わりの気持ちです
熊本でも対外試合も2つ予定しているので、そこでも結果を残してアピールしてきます。」

現在、対外試合2戦連発中と明確な結果を残している。プロ意識の高い高嶺と沖縄キャンプでは同部屋に。彼の助言もあり、アフターケアもこれまで以上に徹底しており、コンディションも上々だ。

宏武がスタメン戦線に食い込んで来た時は、チームの競争が活性化している証だろう。勝負の一年。覚悟を決めた田中宏武の2025シーズンに注目したい。


③木戸柊摩 「全大卒ルーキーの中で群を抜いた存在感を示す」

沖縄キャンプを通じて、木戸の評価が着実に高まっている。イマジネーション豊かな攻撃のアイデア。それを実行する確かな技術。大学で磨いた守備能力含めて、開幕からスタメンを奪取してもなんら驚かない立ち位置にいる。

「この沖縄キャンプはだいぶ手応えを感じていますね。大樹さんの求めていることと自分の特徴もフィットしていると思います。流動的にどんどんシフトしていくサッカーに自分は対応できますし、周りのレベルも高いのでやっていて楽しいです」と充実感を滲ませる。

だが、4年前、札幌U-18に所属していたあの時では今の自信を持つことは到底できなかった。大阪体育大学での4年間は、木戸にとって本当に充実した日々となったのだ。だからこそ、12月の大学ラストの全国大会では負傷を押してでも強行出場に踏み切った。

「正直、高校でトップに上がれなくて大学に入った時点では、プロになれる実感はなかったです。大学に入った時もこれが大学の強度か?とプロはまだまだ遠いなと思っていました。ただ、大体大でずっと試合にも出させて貰って、色々な経験をさせて貰って今の自分があります。あそこは踏ん張ってやらないと後悔すると思ったので、ああいった判断になりましたね。」

12月で戦いは終わり、大学でやるべきことはやり切った。次のステップであるプロとしてのルーキイヤーで見据えるのは札幌のJ1昇格。そして、大学で凌ぎを削ったライバル達に負けない活躍をすることだ。

「J1やJ2も含めて、多くのチームに大卒ルーキーが存在しますが、その中でも群を抜いた存在感を出すつもりです。その為には得点やアシストという目に見える結果が必然的に必要になってくるので。まずは、得点とアシストで2桁は最低残せるように。そして、コンサドーレを絶対にJ1にあげるために。その貢献を自分が明確にできるように。覚悟を持って戦います。

今日は1本目に入れなかったですが、ここから、まだ熊本キャンプもあるわけで、全然狙える位置にいると思っているので。もっとアピールをして本気で開幕スタメンを狙っていきますよ!」

赤黒のクラッキはニヤリと微笑んだ。試合に絡んでくるのは当然の選手だと思っている。ルーキーイヤーから絶対的なレギュラーとなって、Jリーグ全体から、札幌に面白いルーキーがいる。そんな声が広がる活躍を期待したい。


④深井一希  「自分がクラブに残った責任を果たす」

全体でのアップを終えると、深井は新任の京谷洋佑パフォーマンスコーディネーターと共にステップの確認をしていた。

「いかに膝に負担をかけないでトレーニングができるか?の確認をしていました。すごく熱量もありますし、僕を治そうという気持ちをすごく感じますね。本当にありがたいですね。

キャンプの最初はずっと練習をこなしていました。ただ、水が溜まってしまったので今は無理せずにです。その間に、できるだけ膝に負担のかからない動きを実践して言って、少しずつ入っていければと思ってます。」

深井は2025シーズンを自分がサッカー選手としての価値を示せるかどうか?の年と位置付けているという。

多くの知恵と時間と仲間の協力もあって、2024年の9月、深井は約1年ぶりにピッチにカムバック。復帰直後から、当たり前のようにやるべきプレーをして31節の町田、32節の京都とチームの勝点の上積みにも貢献した。

だが、33節のG大阪戦あたりから原因不明の痛みが出てきた。

「G大阪戦の数日前くらいから今までと違う痛みが少し出てきて、何が原因かもわかならい状況でした。
あれだけのことをやって治ったと思ったら、また新たな痛みがきて。チーム状況も難しい状況。自分がやらないといけないという気持ちと原因の分からない痛み。かなり悩みましたね。

今シーズンプレーを続けるのか?含めて色々と考えましたが、オフシーズンに少し良くなったので、これは覚悟を決めてやるしかないなと。」

長らく共に戦った同じアカデミー出身の菅大輝が24年オフには契約満了となった。当然、深井自身、思うところもたくさんある。

「菅はアカデミー出身で長くやってきて、あれだけ貢献をしてくれた選手です。菅がそういう判断になったなら俺を切った方がいいのでは?という思いも個人的にあったのが正直なところです。それでもチームが僕を必要として下さったので、僕はそれに、応える義務があると思います。まずはそれをピッチで示せるようにやっていくしかない。菅だったり、善成くんだったりチームに長年、大きな貢献してくれた選手たちの分の思いも背負って。残った自分はクラブに残った責任を果たさないといけないと思ってます。


そんな新シーズン、公私に渡り、可愛がってきた頼もしい後輩・高嶺も札幌に戻ってきた。

「あいつ自身も色々と考えて考えて、決断したことですし、本当に嬉しかったですね。
でもキャリアの中でも一番いい時期に、J2の札幌に戻ってくることになったことに僕としては責任も感じます。人それぞれの考え方なので、本人にとってこれが一番輝かしい決断になるかもしれませんが、個人的な思いとしては海外でバリバリやれる力がある選手に、それをさせてあげれなかった。札幌をJ1に残していたら、あっちで勝負していたのかもしれない。そこに対して責任は感じつつも、チームのことはこれだけ考えて戻ってきてくれるのは嬉しいですし、本当にありがたないと思ってます。今シーズン、朋樹が中心になってくると思うので。ピッチ内外でしっかりとサポートしていきたいなと」

「もちろん、今も小さなイレギュラーはありますけど、これだけ膝をやってきたら痛みは出て仕方ないなと。原因を探すよりは、今を受け入れて前に進んでいきます。」

3月で赤黒の8番も30歳を迎える。今の自分であるがままに。深井一希の覚悟は強く重い。

「J1昇格のために、自分のできることを全てやりたいなと思ってます。もうベテランと言ってもいい年齢になってきたので、J1昇格と若い選手の成長の手助けなんかもできたらいいなと思ってます。柊摩や克幸みたいな良いものを持っている選手がいるので、彼らがそれを上手く試合で使えるように。自分が伝えられることは伝えていきたいなと。何より自分がサッカー選手としての価値を示せるか?そこに対しての覚悟は大きいです。」

 この日の練習後、木戸とリフティングで遊ぶ深井の姿が何とも楽しそうだった。

「いやあやっぱり、ボールを蹴れるのは最高ですよね。今は痛みも落ち着いてきてるので。」

ピッチ上でサッカー選手としての価値を示す。
不屈の男の覚悟の一年が始まった。

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