ミュージカル Mrs Doubtfire 観賞
はい。
またミュージカルの話です。
今回は、「Mrs Doubtfire」の感想を。
まず一言でお伝えすると、
徹底的にお腹を抱えてゲラゲラ笑える、
まさにコメディ・ミュージカルの決定版です。
最近急に寒くなったし、天気も悪いし、日も短いし…で、元気がない人には是非このミュージカルを見てゲラゲラ笑って頂きたい。
以下、雑感を。(ネタバレ注意)
Mrs Doubtfiteとは
そもそもミュージカルMrs Doubtfireとは何なのか…なのですが、
1993年上映の映画『Mrs Doubtfire(邦題:ミセス•ダウト)』がベースになっています。
(因みに、原作は小説の『Madame Doubtfire』。)
主演はコメディの王様、故ロビン•ウィリアムズ。
因みに監督は、ハリーポッターシリーズ1-2作目の監督でもある、クリス•コロンバスです。
↑すんごいシンプルなあらすじ説明ですが、もうまさにその通りでして。笑
ロビン•ウィリアムズ演じるダニエルが、
子供たちと時間を過ごすために、おばあちゃん家政婦(=Mrs Doubtfite)に変装するのですが、
もうこのおばあちゃんがインパクト大。
ミュージカル版は、ロビン•ウィリアムズへのオマージュとして、
ストーリーや登場人物は映画版とほぼ同じで、
おばあちゃん家政婦Mrs Doubtfireを見事に舞台に蘇らせています。
私自身は、もともと映画を見たことがありまして。
高校生ぐらいの時、夜更かししてたらたまたまBSで映画をやっていたので、見始めたら面白くてつい最後まで見ちゃったんですよね…
(”BS”とか久しぶりに言った。笑)
自分が高校生だった時代なんて遥か昔なのですが、
ストーリーラインはほぼ覚えていたので、
それくらいかなりインパクトがあった映画だったのだと思います。笑
なので、去年からWest EndでMrs Doubtfireのミュージカルをやると聞いた時、
「え…あのミセス•ダウト!?!?w」
と驚愕したんですよね。。
まぁでもBack to the Futureといい、
Mean Girlsといい、
スポンジボブといい、
あらゆるミュージカルが成功しているので、
Mrs Doubtfireほどインパクトのある作品がミュージカルになるのも納得…と思ったのであります。
楽曲が良いのばかり。
さて。肝心のミュージカルについて話さなくては。←
ミュージカル・Mrs Doubtfireの良かったところは、それはそれはたくさんあるのですが、
思ってた以上に楽曲がどれも良かった。
私の好みである、大人数のガッツリダンスナンバーも多く、
見ていて気分が上がります。
ハイライトの一つが、
”Make Me A Woman”。↓
Danielが初めてMrs Doubtfireへ変身するシーンのナンバーです。
Danielが、
ヘアメークアーティストであるFrank(Danielの兄弟)とAndre(Frankのパートナー)を訪れ、
「I NEED YOU TO MAKE ME A WOMAN!」
となかなかパンチの効いたセリフを発するところから始まります。笑
ドナ・サマーやら、マーガレット・サッチャーが現れたりと、
かなりカオスな舞台上ですがw、
それでもダンスのユニゾンは圧巻!
また、個人的にお気に入りの一つが、
”Big Fat No”。↓
Mrs Doubtfireに変装し家政婦になったのはいいものの、
元妻のミランダは、既にStuartという男性といい感じになっていて、危機感を覚えるDaniel。
この”Big Fat No”のナンバーで、Mrs Doubtfire /Danielは、
Stuartがジムでワークアウトしている際に、
「Mirandaとは上手くいかない」と説得しようとします。
しれっと男性Swingたちがコーラスに加わったりしてて、
ところどころシュールで面白い。
そしてこのナンバーの面白いのは、
観客とのInteraction(交流)があること!
ナンバーの終盤、Mrs DoubtfireがStuの背中にリンゴを投げつけるのですが、
「あんたなんじゃないの!?」
と観客を巻き込んでくるんですよね。笑
↑の動画はWest End Liveなので、
「Mean Girlsの誰かがやったに違いない!」など、
他のミュージカルも犯人にしてて、West End Liveならではだと思いました。笑
主演のGabriel Vickさんがすごい
このミュージカルのすごさは、
ダニエル役のGabriel Vickさん無しには語れない!
↑Daniel/Mrs Doubtfireを演じるGabrielさん。
何がすごいかって、
West Endで通常求められる、
ハイレベルな歌+ダンス+演技に加えて、
Daniel↔️Mrs Doubtfireの素早い声変換という高度なテクニックが求められているのです…。。
Mrs Doubtfireはスコティッシュのかわいらしいおばあちゃん…という設定なので、
Daniel本来の地声よりも地声より3オクターブくらい高い声なのですが、
同じ人間が出している声とは思えないくらい、ナチュラル!
Mrs Doubtfireの「Helloooooooooo!」が癖になります。笑
しかも、
舞台上でDanielからMrs Doubtfireになったり、
Mrs DoubtfireからDanielに戻ったりと、
変身の様子をありのまま見せてくれるんですね。笑
ありのままを見せてくれるお陰で、
変身が間に合うか、観客である我々も手に汗握りながらハラハラ見届けられるわけです。
さらに、Danielの職業柄、冒頭に色んな人物のモノマネを披露するシーンがあるのですが、
それがどれもめちゃくちゃ似てる。笑
しかも、バイデンとかトランプとか、結構タイムリーな人物が多い。w
(流石にカマラ・ハリスはなかったけどw)
(でも米大統領選挙が終わったらここのパートどうするんだろう、というささやかな疑問も。。笑)
そして極め付けは、DJのシーン。
なかなか定職に就けないDanielですが、
清掃員として働いているTV局のDJブースで、
誰も見てないのをいいことに、思いのまま自分の芸をやってみます。
↑こちらはNYのブロードウェイ版ですが、そのDJのシーン。
このシーン、自身でLooper(エド・シーランがよく使ってるやつ。)を操作してるんですよね…。
歌って、モノマネして、Looper操作して、、、めちゃくちゃハードだと思います。。
90年代の映画から、変化したこと
ストーリーは1993年の映画とほぼ同じ…という話をしましたが、
やはり1993年と、現在の2020年代では、
だいぶ見識が変わってきたんだなぁと思うことがありました。
映画で描かれていた点が、ミュージカルでは異なる描写になっていた点がいくつかありました。
①嘘の家政婦候補
Danielは、確実に自分が子供たちの家政婦になるために、
Mirandaが載せようとした”家政婦募集”広告の電話番号を勝手に変更。
そして、自身の声マネのスキルを活かして、
家政婦としては望ましくないような人たちを演じ、
家政婦候補たちとしてMirandaに電話をかけます。
そして最後に、おっとりとしたスコティッシュ老婦人であるMrs Doubtfireとして電話をかけ、見事、家政婦の座をゲットするわけです。
…とこの一連の流れは、映画もミュージカルも同じ。
なんですが、↑の”家政婦として望ましくない人たち”の内の一人に、
映画では、”元男性のトランスジェンダー女性”をDanielは演じています。
↑この動画の00:28くらい。
「I have two girls and a boy.」と説明するMirandaに対し、
Danielが電話の先で演じている家政婦候補は、
「Oh a boy. I don't work with the males 'cause I used to be one.」
(私、男性は無理なのよね、私もそうだったから。)
と話します。
それを聞いた瞬間、Mirandaは速攻電話を切り、
「Yikes!!」
と呟くんですよね。
流石にこのシーンは、ミュージカルではカットされてました。
2020年代の現在、このシーンをミュージカルでも同じように再現させていたら、トランスジェンダーへの差別で大炎上してたと思うんですよね。
やはりLGBTQ+への見方、アプローチの仕方が、
90年代から変化したんだなぁと思いました。
②子供達にバレたきっかけ
↑と同様にトランスジェンダーへの配慮だと思うのですが、
上の子ども2人(長女のLydiaと長男のChristopher)に正体がバレたきっかけが、
映画とミュージカルでは少し異なります。
映画では、DanielがMrs Doubtfireの姿のまま、
トイレで、男性スタイルで(笑)、
小便を催しているところをChristopherに見られてしまい、
Christopherがパニックになって、
Lydiaに「Mrs Doubtfireはhalf-man、half-womanなんだ!」と知らせ、
二人で「警察を呼ぶよ!」とMrs Doubtfireに迫ります。
追い込まれたMrs Doubtfireは、父Danielの声で二人に語りかけ、正体がついにバレます。
このシーンは、ミュージカルでは、
DanielがMrs Doubtfireのマスクが痒くなってきたため、
半分くらいマスクを取った状態でいたのをChristopherに目撃され、
ChristopherがLydiaを呼び、二人にバレる…
という流れに変更されています。
映画で描かれていたような、
「”女性の姿で、男性のスタイルで小便をしていること”への嫌悪感」
が、今の時代、LGBTQ+の人たちを考え、NGになっているのかなぁと。
映画では、
Mrs Doubtfireが実は男性かも…と分かった瞬間、
子供達2人は明らかな嫌悪感を表しているので、
これはもう今の時代NGなんだなぁと感じました。
まぁ…難しいですよね。。
もちろん、LGBTQ+の人たちの人権は尊重されるべきですし、
差別は良くない。
でも一方で、それを逆手にとって、
トランスジェンダーじゃないのに、そのフリをして、女装して女子トイレに入ったり、さらには温泉の女湯に入ろうとする人もいますし。。(本当に最悪)
こういう人たちがいるせいで、
「おばあちゃんが立ちションしてる姿を目撃しても、冷静でいられるか?」
て聞かれると、私はまだ冷静ではいられないかもしれない…。。
なんて思ってしまったりもします。
…と、時代の変化を感じさせられた、描写の違いではありました。
アメリカらしい終わり方
さぁ、こんな長文、ここまで読んで下さってる方が果たしていらっしゃるのか分かりませんがw、
最後に思ったのは、エンディングについて。
エンディングは、映画もミュージカルも同じ内容で、
DanielとMirandaは離婚したまま。
ですが、MirandaはDanielの子供達への愛を認め、
毎日子供たちの学校の送り迎えに行かせること許可します。
”両親が別れてしまっても、子供達への愛は変わらないよ”
というメッセージと共に、終了します。
ミュージカルでは、
最後のナンバーで、MirandaとStuartが寄り添い、
DanielがStuartに握手し、
Stuartも入れて、全員で家族写真を撮る描写があります。
この、DanielとMirandaがよりを戻さないところが、
リアルで、アメリカらしいなと…!
(あ、そもそも話の舞台はアメリカ・サンフランシスコです)
日本だったら、時代が変わってきているとはいえ、
まだそもそも”離婚”というものが珍しく(特に子供がいるなら尚更)、
且つ、ネガティブなものと捉えられている傾向だと思うので…
このDanielたちのような、
「パパとママは離婚しちゃって、ママには新しい彼氏がいるけど、
パパと新しい彼氏の関係も良好で、パパも毎日お家に来てくれて、
皆仲良しだから、全員で家族写真を撮るよ!」
みたいなシチュエーションって、
なかなか日本では想像できないのではないかと。
一方アメリカは本当に離婚率が高いことで知られてますし、
子連れでも離婚することは割とメジャー。
(寧ろ、子供がいるからこそ離婚するケースが多い?)
イギリスの離婚率をググってみたところ、
日本より気持ち多いくらいみたいなので、
アメリカほどではなさそう。
なので、ロンドンWest Endの観客たちは、
このエンディングにどう思ったのか…気になるところではあります。
個人的にはDanielとMirandaがヨリを戻さない結末で良かったと思いますし、
「こういう家族もありですよ」
と提案してくれる感じで良かった。
最後Mrs Doutfireが、
「お父さんとお母さんが一緒に暮らすよりも、
離れて暮らしていた方が仲良くなれることもある」
と語りかけていましたが、本当にその通りだと思う。笑
別にこの価値観を押し付けるわけでもなく、
「こういうケースもあるよね。」
という感じで丸く収めてて、個人的には良かったと思います。
…と、また長々と語ってしまいました。
長く語った割には、
冒頭でお伝えした「徹底的にお腹を抱えてゲラゲラ笑える、
まさにコメディ・ミュージカルの決定版」は全然伝わってこない気がします。。笑
とはいえ、老若男女全ての世代におすすめですので、
ぜひ一度は見に行ってみてくださいね。
では。
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