LinkedIn LearningでMicrosoftのAIコースがリリースされた


MicrosoftがAIに関する5つのコースをリリースしていたので、一通り受講してみて、後学のためにも日本語で要約してみる。

1. AI (Artificial intelligence)とは一体何か

まずはコンピュータの知能と人間の知能の違いについて。

人間がコンピュータをintelligenceであると感じるのは、特定のタスクのみにおいてコンピュータが高いパフォーマンスを発揮しているからであって、人間のintelligenceである点は「多様さ」にあるため、どちらがよりintelligenceである、と同じ土俵で語るのは難しい。中国の部屋の実験を通して、特定のシンボル同士をマッチングさせているだけのコンピュータに高い知能があると言うには疑わしい。

事前にプログラミングされたことしかできないコンピュータに代わって、機械学習の技術が生まれた。インターネットの普及によって膨大な量のデータが世の中に溢れたことにより、機械学習が大きく発展することになった。機械学習の中でも、人間の脳を模倣した人工ニューラルネットワークは特に機械学習の中でも注目されているアプローチであり、大量のデータを通してパターンを理解して、入力されたものを認識する。

それからAIは、日常生活の中の様々な場面に深く関わるようになった。IoTデバイスは物理世界での行動を追跡し、AIによる分析に新たな可能性をもたらしている。これらの技術は、組織が顧客の行動やニーズをより深く理解し、効果的な製品やサービスを提供するのに役立つ。

機械学習の学習プロセスには、2通りの方法がある。監視学習(supervised learning)では、データサイエンティストがチューターのような役割を果たし、正しい答えを示しながらシステムを訓練する。一方、非監視学習(unsupervised learning)では、マシンは独自に観察を行い、データから学習する。監視学習では、例えばAmazonが「多額の買い物をする顧客」を識別し、そのような顧客を見つけるためのパターンをシステムに学習させることができる。非監視学習では、Amazonが顧客データの全体を解析して、独自のパターンを発見するかもしれない。両方の技術は価値ある洞察を提供し、ビジネスにとって非常に有用であることに変わりはない。

具体的な機械学習のアプローチについて3つ紹介されている。
・二項分類…二項分類は、監視学習の一般的な形態で、データを2つのカテゴリに分類する。例えば、クレジットカードの取引が詐欺かどうかを判断するシステムや、メールがスパムかどうかを識別するシステムがこれに該当する。これらのシステムは、ラベル付けされたトレーニングデータを使用してパターンを学習し、その後テストデータセットでその精度を評価する。
・クラスタリング…クラスタリングは、非監視学習の一形態で、システムが自動的にデータをグループに分類する。これは、例えばオンラインショッピングサイトが「一緒に購入されることが多い商品」を推薦する際に使用されたりする。クラスタリングは、人間がカテゴリを事前に定義せず、マシンがデータからパターンを見つけて自身でグループを作成する。
・強化学習…強化学習は、報酬を使ってシステムが新しいパターンを見つけるように動機付ける学習方法。このアプローチは、例えばSpotifyの「Discover Weekly」のような音楽推薦システムにおいて、ユーザーが新しい曲を発見するのを助けるために利用される。システムは、ユーザーの行動から報酬を得て、より良い推薦を生成するように訓練される。

続いて機械学習のアルゴリズムについて。マシンラーニングのアルゴリズムは、多様で統計学から借用されたものが多く、それぞれに特定の使い方がある。監視学習(supervised learning)では、二項分類や多クラス分類を行う一方で、非監視学習(unsupervised learning)ではクラスタリングを行う。
K最近傍法(K-nearest neighbor)、K平均法(K-means clustering)、回帰分析、Naive Bayesについての説明も(あんまりよくわかっていない)。この多様なアルゴリズムからどれを選べばいいのかについても詳細な説明がある。複数のアルゴリズムを併用することもある。

特に複雑なパターンについて使われるのが、人間の脳を模倣した構造をしている人工ニューラルネットワークである。入力されたデータを小さく分解して、Deep Learningを通して複雑なパターンを識別する。人工ニューラルネットワークは誤差をもとにBias(偏り)とVariance(分散)のバランスをとり、自己調整を行って効果的な予測をすることができる。

このようにAIは急速な発展を遂げており、複雑な問題の解決に使われるようになっている。このコースではAIを利用していく上でのAIの背後にある技術の概要が提供されている。マシンラーニングの概念、技術、さまざまなアルゴリズム、人工ニューラルネットワークの使用、およびネットワークが誤差から学び、精度を向上させる方法が紹介されている。

2. 生成AIの基礎

生成AIは、我々人間から退屈な仕事や危険な仕事、そして難しい仕事を取り除き、人間が仕事の本質、ビジョン、目的に対して集中できるようにしてくれている。現在では生成AIはカスタム製品のデザイン、音楽、スピーチ、視覚効果、3Dアセット、サウンドエフェクトの制作までできるようになった。

生成AIには様々なオプションがある。
①自然言語生成:GPT(Generative Pre-trained Transformer)は、自然言語処理で広く使われている。GitHub CopilotやMicrosoftのBingなどがその応用例です。しかし、GPTには共通感覚や創造性の欠如などの限界がある。
②画像生成サービス:Midjourney、DALL-E、Stable Diffusionなどのテキストから画像を生成するサービスがある。例えば、Cuebricは映画の背景制作に、Stitch Fixはファッションスタイルの発見に、マーケティングや映画制作ではコンセプトやストーリーボードの生成に使用されている。
③敵対的生成ネットワーク(GAN):GANは、生成者と識別者が互いに競争しながらリアルなデータを作成する。応用例としては、Audiのホイールデザイン、Bekoの映画制作、金融詐欺検出などがある。
④異常検出:変分オートエンコーダ(VAE)は、正常なデータセットでトレーニングし、それから通常と異なるデータを識別する。UberやGoogleでは金融取引やネットワーク侵入の検出に、工業品質管理や医療画像分析にも使用されている。

生成AIの影響は大きく、長期的に見れば、建築、都市計画、工学におけるリアルなシミュレーションの作成、製造業やテキスタイルデザインにおける新素材や製品の開発、コンテンツ制作(ニュース記事、書籍、映画スクリプト)の自然言語生成の向上、自動運転車のリアルな仮想シナリオ生成、音声からアセット生成などが期待されている。確かに古い職業がなくなっていく事例もあり、これからもその可能性があるが、代わりに新しい職業が生まれていく場合もある。人間のリーダーシップ、問題解決能力といった創造的な面に集中できるような仕事がこれから大事になっていくだろう。生成AIによる革命は、人々が自身の創造スタジオになり、ビジョンとその具現化の間の障壁がなくなることを意味している。複雑な映画、音楽、執筆、その他の創造的な生産ツールが簡素化され、直接手に入るようになる。そうなると人間は消費者から創作者へと進化し、将来の仕事市場で成功する人々は、コンピュータが真似できない独自の個人的感情スキルを強化することが重要。

AIに対する最大のBiasとは、人種、民族、性別ではなく、人間の劣等感である。AIが人間よりも優れていると認識してしまうことは、AIが中心の創作をしてしまうことになり、人間性が失われてしまうことに繋がるだろう。人間の創造性と意思決定の重要性を常に強調するべきであり、AIは人間がアルゴリズムを書き、概念化し、監督することで望ましい結果を生み出す。

AIに対しての劣等感を解消するためには、AIの本来の用途を考え直すことにある。多くの人々が「AIが自分の仕事を奪う」「自分の代わりが務まる」「AIが自分の仕事を始めたら自分は何になるのか」という恐怖を感じているが、基本に戻ってAIが単なる人間のサービスのためのツールであることを思い出すべき。AIについて研究することが、AIに対しての恐怖を克服する一番の方法である。AIの背後に存在するのは自分自身なのだから、何も恐怖することはないはずだ。

3. インターネット検索の進化

従来の検索エンジンは、検索ボックスに検索したい単語を入れるだけだったのが、現在では会話型AIとの対話によって望んでいる検索結果を出力してくれるようになっている。このシステムを効果的に使う方法について解説している。

従来の検索エンジンは主に「クローリング」、「インデックス化」、および「ランキング」という3つの主要な機能を実行している。現在の推論エンジンでは、利用可能なデータと知識に基づいて結論を導き出し、意思決定を行い、情報を要約し、問題を解決している。従来のものと違って出力が関連性の高いwebページではなく、自然な対話を出力するようになったが、その情報が正確であるとは限らないため、注意が必要である。これから先は、Bing chatがソースとしたwebページも同時に出力するように、二つのエンジンが統合される形で提供されることになるだろう。

人間側には、推論エンジンと対話するために必要なプロンプトエンジニアリングが求められるようになる。例えば質問をするだけではなく、質問に回答例を添えることで、欲しい形式での回答を得ることができるようになったり、具体的な文脈を提供することで、望ましい回答を得られるようになるということ。比喩を使った説明や、ディベートスタイルでの質問を重ねることによって、プロンプトエンジニアリングの技術を磨いていくことができる。もちろん技術の向上には、実践の反復が必要不可欠である。

4. Bing chatで作業を合理化する

具体的なBing chatの使い方について基礎的な解説を行っているコース。

Bing AIと対話するためのchatタブだけではなく、composeタブ、insightタブでできることも解説している。Bingはwebページの内容だけではなくpdfファイルの中身も読むことができ、その点でも最大限の活用をするように薦められている。

Bing chatは調べるときだけではなく、日常の作業を効率化するときにも使われる。データを要約したり、プレゼントを考えたり、ドバイの時間を教えてくれたり。特に文章の作成について高い能力を発揮し、ソーシャルメディアへの投稿や顧客へのメール、パーティへの招待状などを作成するのに役立つ。

パーティの招待状を送るだけならリスクの低い使い方だが、法的または安全上の懸念が関わるリスクの高い場合では、Bingの回答を二重チェックすることが重要。Bing AI検索では、引用された最新の結果を提供しているので、これらの引用は回答に表示され、どこからデータが来ているかを知ることができるため、リンクをクリックしてサイトを確認し、信頼性があり、現在のものであるかを確認することが常に重要。法律の問題については、よく確認しておく必要がある。

5. AI時代の倫理

AIと機械学習の進化、特に生成AIの可能性と課題について解説している。銀行業界や農業など、様々な分野でAIが活用されており、人事管理などの組織内プロセスにも影響を与えています。AIは効率化や新しい機会の創出を可能にしますが、同時に倫理的な問題やバイアスの問題も含んでいる。そのため、AIのデザインと利用において、倫理的な観点や責任あるデータの使用、透明性の確保が重要。

AIの倫理的な使用には、組織全体の関与が必要であり、これには技術チーム、経営陣、顧客、そして社会全体が含まれる。AIの開発と展開におけるそれぞれの役割と責任を理解し、適切なガイドラインと監視機構を設けることが求められている。また、AIを使用する際に、ステークホルダーが果たすべき役割についても解説している。例えば、経営者や取締役は、倫理的なAIの使用に関する文化やポリシーを確立する責任があり、技術者や開発者は、透明で偏見のないAIシステムの設計と開発に責任を持つべきである。また、顧客やユーザーも、フィードバックの提供や、AIシステムの倫理的な使用に関する情報の入手に一定の責任を持っている。総じて、AIの倫理的な使用とは、技術だけでなく、社会全体の福祉を考慮し、多様なステークホルダーの参加と協力を基に進められるべきものである。

AIの倫理的な側面を理解し、専門家として成長するための方法はいくつかある。一つは、地域社会の組織と連携して解決すべき価値のある問題を見つける方法を模索し、既存のツールの影響を拡大することを目指すこと。これにより、技術が単に製品を作るためだけではなく、地域社会の問題解決に貢献することができるようになる。また、技術を追求するだけではなく、製品の選択が経済的機会にどのように影響するかを理解する能力を高めることも地域社会や人類全体の課題に対応するための力になる。最後に、日々の業務において、人間中心の未来を育成する意図を持つこと。この瞬間の決断が将来の世代に大きな影響を与えることを認識し、AIによって動かされる倫理的な社会の構築に向けて働きかけることが重要である。


以上のAIに関する5コースが追加されていた。

個人的には、アイデアを出すのは人間であり、AIはそれを実現するためのツールでしかないのだから、AIに対して恐怖を抱いたり劣等感を持つのはおかしいということを、理解はしていたもののわかりやすく言語化された…というより要約する上で言語化してみたのは初めてだったので、なるほどその通りだな、という気持ち。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?