深夜のコンビニバイト

 僕は大学の四年生の時に海外旅行に行くためにバイトを頑張った。内容は、クラブのボーイとコンビニの深夜バイト。クラブの方は土日祝日が賃金が高かった為、平日をコンビニに充てていた。
 ほぼ毎日をコンビニで過ごす店長も人間なので、夜は寝ている。そのため深夜こそ信頼のおける人間を選んで働かせるべきだと思ったのだがうまくいかなかったのか、なかなかの粒揃い(もちろん悪い意味で)達が働いていた。横領をして首になった会社員、パチンコ屋を転々として毎回逃げる様に辞めてきたおじさん、大学に六年間通ってる先輩となかなか濃いメンバーが揃っていた。
 その中で、僕が強く覚えているのが深夜バイトのメンバーで数少ない大学生仲間のイズミ君。そもそも深夜のコンビニで働く大学生は意外と少ない。大学生がバイトに求めるものは賃金よりも出会いであり、友情や恋愛といった付加価値にある。だから深夜のコンビニで働くイズミ君はちょっとおかしかった。彼の特徴は名前の通り、愚痴や不満が泉の様に湧き出てくる事だ。世の中の全てが気に入らない、口を開けば「こんな時間に子供が起きてるなよ」だとか「タバコ買うだけにコンビニ来るなよ」、「夏におでん買うなよ」とかあらゆる事に文句をつける。もちろん僕に対しても沢山の文句をぶつけてくるのだが、ここまで人に対して強く出れる人間を知らなかった僕は彼を気に入っていた。彼の口から出る言葉はどれもそこまで言わなくてもいいじゃないかと思う事や、それは違うだろって事ばかりだったのだが未だに思い出すとクスッとしてしまう言葉がある。
 深夜バイトの業務に雑誌の梱包もあるのだが雑誌の決まったページに付録を入れて袋を被せてテープを貼る作業。婦人向けの雑誌に何かしらとコラボしてある財布を梱包中、イズミ君が「おしゃれになる為に、雑誌を買うんだろ。そんなやつが付録の財布を持ち歩くかよ。」と放った言葉が今でも忘れられない。
 

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