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飛行機は落ちるから

カナダに行くので飛行機に乗ることになる。落ちたら死にます。
新幹線は落ちても死なないかもしれないのにです。

それでこれを書こうと思った。

教えている教科の学生の多くが谷川俊太郎や宮沢賢治の詩を選んだので、なんて偉いのだろうと感心した。それで期末レポートを返したのを機に、『今日は誰にも愛されたかった』(2019年)に載っていた谷川俊太郎の自己紹介をプレゼントした。

読み進めていると市川という人が出てくる。誰なのかな。
市川イイナ。市川は来ないかなと言う時に現れるのだ。今日歯を磨いていたら現れた。市川は前回は男か女か分からない眼鏡をかけた人間の様子をしていたが、今日は折り目正しいアイロンのピシッとかかった明るいブルーのワイシャツを着ている。

それで犬のことを話した。
今何をしているんだろう、犬は大丈夫だろうか。きっと前あしに顎を乗せて寝ようかな、どうしようかなと思いながら小さくフンとか言っているのだろう。そう言うと、お腹が出ていますねと私のことを言う。家では服を着ていないからだ。

それで
―カナダから帰ったら隣のジムに通うんだ。

とうがいをしながら言う。

そうしながら、何かとても楽しみにしていることがあったのだという意識が湧きおこってきて、そうだったLINEメッセージが学生から来ていた、ということを思い出す。その学生もコロナになった。

大体が大学生に恋をしたのでこんなことになってしまったのだと市川に言った。

―一を教えると十倍返し。
―ほぉ。全員が?
―んなわけない。
―でもわかるなぁ。なんか長い長い道のりが前にあるということでしょう?
―彼らの
―彼らの

そこなんだなぁ、やっぱり市川は分かってるなぁと思う。気が付いたらもういなかった。
さて学生からのLINEを読もう。