『ほぼ命がけサメ図鑑』これが世界でただ一人、サメ専門ジャーナリスト・沼口麻子の生きざまだ! その④
さて、①シャークジャーナリストは、死を覚悟した! ②サメのふしぎと、謎とロマンの古代ザメ、③サメは安全?サメはおいしい?と続き、そろそろ終わりかなー、と雑談モードになったころ。本日最大の衝撃話が沼口さんの口から語られた……。
ドバイの魚市場にて サメより人のほうが、怖いのだ
沼口 :ドバイでサメを食べたときに、じつは私、すごい痴漢にあってるんですよ。ドバイって治安が良くて、夜でも若い女の子が普通に歩いてたりするんですけど、フィッシュマーケットのあったところがよくなくて。
こっちはサメを見たいだけなのに、邪魔をする人間が多すぎる!
塩田 :痴漢??
沼口 :暗闇でどうにかサメに出会えて。その中でも小さくてかなり珍しいサメを値段交渉して買ったんですよ。本書に出てくるホコサキっていうサメなんですけど。
そのとき、四方八方にいる男性30人くらいに囲まれたんです。体触られないように注意しながら財布を出すのが、大変で(笑)。
塩田 :こ、こわー。
沼口 :フィッシュマーケットの敷地内に、買った魚をグリルできるところがあって、そこに調理を頼みました。せっかくなので食べてみようと思って。
でも珍しいサメかもしれなかったので、顎の標本を作ろうと思って、「頭を捨てないように」と伝えたんです。
塩田 :その状況で、冷静ですね……。
沼口 :そしたら、頭も調理されて戻ってきて。
塩田 :あちゃー。
沼口 :頑張って、ホテルに戻って顎標本作りを試みたんですが、油でベトベトでうまく標本ができませんでした(涙)。
でも珍しそうなサメがたくさん水揚げされていたので、すごく面白いフィッシュマーケットでした。また次回行ったときに、リベンジしたいと思っています。
ただ……、ホテルに帰る途中に複数人から待ち伏せされて、はさまれて、走って逃げて。ホテルはすぐ近くだったんですが、安全を考えて、タクシーを拾って遠回りして帰りました。
塩田 :「ほぼ命がけ」って、ほぼサメじゃなくて人のせいですねえ……。
大丈夫か!? シャークジャーナリスト危機一髪?
沼口 :あとインドネシアも、これは本に書いてないんですけど。超楽しかったんですよ。
英語通じるかなと思ったら全然通じなくて。インドネシア語ひとつもわからないのに、漁港を回る一人旅を1週間して。
塩田 :どうだったんですか?
沼口 :タクシーでガイドブックの地図をさして「ここに行きたい」って言ったら、全然違うスラム街に連れて行かれて、降ろされて。
塩田 :えー!
沼口 :ちょっと怖そうな人ばっかりで、タクシーはホテルで手配しないとどっか連れて行かれちゃうかもしれないから、ヘタに拾えない、というかタクシーが来るような大通りではなかったんですよね。
塩田(心の声):(だ、大丈夫か?)
沼口 :そしたら突然、原チャリに乗ったおじさんがプップーって現れて、ジェスチャーで「乗れー!」みたいな(笑)。
塩田(心の声):(だ、大ピンチに、まさかの正義の味方の登場!?)
沼口 :「この人信じていいのかな?」と思ったんだけど、ガラの悪そうなおっちゃんが寄ってきて「誰か連れてってやれよ」みたいなことを言われて。
で、結局その原チャリのおじさんの後ろに乗って、どこに連れてかれるかわからないけど。
塩田(心の声):(インドネシアで、ローマの休日~?!)
沼口 :そこから20~30分かかったんですよ、バイクで。
塩田 :よく30分も乗せてくれましたね。
沼口 :そうそう、それで「いい人なのかな?」と思って。で、降りたら400円請求(笑)。
塩田 :あーやっぱりお金はかかるんだ(笑)。400円て、現地的にはどうなんですか?
沼口 :そのときはよくわからなかったんですが、まあ安かったし。
塩田 :よかったですね……。
沼口 :よかったよかった、4000円とか言われたら困るけど、400円だったら別にいいやと思って。
ちゃんと私が行きたい漁港に降ろしてくれたし。あの場所にあのままだったら、殺されちゃってたかもしれないし。
塩田 :400円で命が助かったと思えば、安いもんですね(4000円でもな……)。
沼口 :そうそう、やったーと思いました。で、行きたかった漁港に行ったら今度は、「サカナ、サカナ」って片言の日本語で話しかけてくる超怪しいおじさんがいて。
わたしが持って行っていたインドネシアの観光旅行本に「観光地に行って片言の日本語でしゃべっている人には、決してついて行かないでください」って書いてあるんですよ。それも1ページ目に!
塩田 :あはは(笑)。
沼口 :でもそのおじさん、やっぱり営業力があるんです。私がサメのバック持ってたから、「サカナ、サカナ」って寄ってきて。でも、日本語、「魚」と「倉庫」しかしゃべれないんですよ。
塩田 :(なんで倉庫やねん?)それ、怪しいですね。
沼口 :いらないって言ってるのに、そのおじちゃん私にずっとついてきて。他の漁港にも連れてってやるからとか言われて、じゃあいくらで連れてってくれるのって聞いたら「お金は後だよ」って教えてくれなくて。
塩田(心の声):(あやし~!)
沼口 :超怖いなと思って。でもこのおじちゃんについて行ったらサメ見れんのかなと思って。「じゃぁお願いしまーす」って。
塩田(心の声):(マジか、お願いしちゃったのかー。)
沼口 :そしたら今度はすごい暗くて狭い道に連れていかれて、あーこれはもう殺されるなぁと。そしたらそのあと、小ちゃい船に乗れって言われて。
塩田 :それ、超怖いじゃないですか!
沼口 :超怖いです。それで、船は1000円だって。乗ったら何があるのって聞いたけど、何言ってんだかよくわからなくて。
どうも日本で言えば豊洲市場みたいな所を船で外側から見る、みたいなツアーに連れて行きたかったらしいんですよ。
塩田 :あ、ちゃんとしたツアーだったんですね?(この話どうなっちゃうんだろうと思ってすごいドキドキしたよ……。)
沼口 :1000円て多分すごくぼったくってると思うんですけど、私そういう冒険みたいなの超大好きなんですよ。
でもとりあえず「この人に殺されるかもしれないから」と思って、その人の写真撮っておきました!
塩田 :は、写真??
沼口 :あーよくやるんですけど、タクシーなんか乗っても怪しそうなおじさんだなと思ったら、一緒に写真撮ってもらうんですよ。殺された時に、データとして残るから。
塩田 :こいつが犯人だー!って? (なにそれ、用心深いの? どうなの? いや何か根本的に違わない?)
沼口 :そうそう。まぁ、カメラも盗られちゃうかもしれないけどね。でもメールとかでも送っておけるし。
塩田 :……すごいですね。
沼口 :いやこれは友達もよくやってて、私こうしたよって言ったら「私もそれよくやる」って。
塩田 :(ど、どんな友達なんだ?) シャ、シャークジャーナリスト、すごいなぁ~……。
沼口 :でもツアーは結構おもしろくて、大きな漁船が停まっていて、それをぐるっと回ってみたり。ただ、サメはなかったんですよ。
「サメない」って言ったら、「じゃあ次の漁港に連れて行く」って、トゥクトゥクを手配してくれて。2~3時間ぐらい乗って回ったんだけど、結局サメには会えなくって。
で、「ここ、ここも、こっちも」っていろいろ回ってもらってたら、そのおじちゃん途中で疲れちゃって(笑)。
塩田(心の声):(よっぽど、引きずり回したんですね……。)
沼口 :そのおじちゃん、革靴履いているのに、海水の中とかも連れて行っちゃったし、疲れちゃったのかもしれない。
塩田(心の声) :(こんなやつ初めてって、あきれてたのかも~?)
沼口 :まぁ、ふつうにいい人だったんだと思うんですよ。それで最後はレストランでご飯食べて、「いくら?」て聞いたら「いくらがいい?」って。
6000円くらいしか持ってなかったんですよ。だから、そのお金を見せて「私はこれであと1週間過ごさないといけないんだけど、あなたが決めていいよ」って言ったら、4000円……いやもう、3000円でいいよって。
それで3000円払ってそこで別れて1人で歩いてたら、またそのおじちゃんが寄ってきて、今度は博物館案内してあげるって。
塩田 :へー。
沼口 :そしたらやっぱりそのおじちゃん営業力があって、その博物館に無料で並ばずに入れてもらえたんですよ。
塩田 :え、無料?
沼口 :そうなんですよ。どうなってんのかなと思ったら、そのおじちゃん、警備員に袖の下を渡していて。営業力ある人はこういうことするんだなぁと。
塩田(心の声):(感心してていいのか? そもそもそれ「営業力」なのか??)
沼口 :で、まあこの日よかったから、「明日もアテンドして」って頼んだら「いいよ」って言って、帰って行って。でも、次の日来なかったですね。
塩田(心の声):(もうこりごり、って思われたんだよ~。)
沼口 :それで、ホテルから電話したんですよ。そしたら「今日は雨だからやめた」だって。
塩田(心の声):(それ絶対、逃げたんだと思う。)
沼口 :あとで聞いたら、1日3000円は、そこの地域の丸1日のガイド料の相場だったらしいです。
塩田 :じゃあ、結果的にはわりといい人に当たったってことですかね?
沼口 :そうですね。じつはインドネシアではほかにもいろいろあって……●▽★※√♯〇
(と、ビックリ仰天なインドネシア紀行の話はまだ続くのですが、それは沼口さんの今後の著書にて、乞うご期待!)
沼口 :……というわけだったんですよ~。
塩田 :ほ、ほぼ、命がけ……(絶句)。
沼口 :はい、でもそういうときが、人生でいちばん楽しいです!!
→ 本編終わり。番外編に続く。
(本記事に使用した写真やイラストは、著者や出版社の了解を得て使用しています。)
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沼口さんの話から、これを思い出さずにはいられなかった。
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