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きわめて不愉快です。#センセイたちは怒っている。
2024年2月12日(月)の朝日新聞に、こんな記事が。
同日、新潟日報にも同記事。
おそらく、その他多くの地方紙にも掲載されたはずです。
名古屋市教委、教員団体から金品
校長などに推す名簿と
80団体、5千~3万円
慣例「20年以上前から」
概要
教職員人事担当課は、毎年、小中学校の翌年度の校長、教頭、教務主任の人事について市内の校長会等から推薦名簿の提出を受け、その際に現金や商品券を受け取っていた。
今年度は86団体が推薦名簿を提出し、少なくとも40団体以上が約200万円もの金品を納めていた。
年度末の人事異動の時期には選考作業が早朝から深夜に及ぶといい、職員の飲食代や打ち上げの会合費などに使っていた。
教員仲間からの大変な業務に対する激励費や陣中見舞いだと認識していた。
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1団体平均5万円もの付け届け。
それを名古屋市教委は、仕事に付随する飲食や打ち上げに使っていたとのことです。名目は「会合費」。
これだけの金品を「激励費」という呼称で片づけてしまうご都合主義もひどいです。
個人的には「陣中見舞い」という表現も好きではありません。「戦に勝つために頑張っている仲間のために、金品を送る」。「陣中」も「見舞い」も、行為を正当化するニュアンスで用いられる表現です。
こういった表現は、主に政治の世界で頻繁に見かけます。おそらく当事者は何度も口にしているうちに、感覚がマヒしてくるものと思われます。
推薦名簿に記載があっても校長に就任しない事例も多くあったことから、市教委は「今のところ人事への影響は確認できない」としている。
20年以上前から続いていた慣例だ。
繁忙期に食べ物や飲み物などに使ってほしいという激励として渡されていた。仲間内での支えあいだ。
多様な視点から人事ができるよう参考情報の一つとして渡されていた。その名簿が優先されて人事が決まることはない。
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激務の中で頑張れというような意味合いだった。
名古屋市教委は大きな組織で教諭個人の情報が少ない。そのため人事の参考にしてもらおうと団体推薦があった。
「推薦名簿に記載があっても校長に就任しない事例も多くあったから、人事への影響は確認できない」とする市教委のコメントを聞くと、その感覚を疑わざるを得ません。
名簿に記載があった人物がすべて校長に就任する事態など、一般的にはあり得ません。「選考」の結果、決まるわけですから。いくら倍率が低かろうとも、一定の数の落選は存在します。
問題は、
管理職選考の時期に、
自身の指揮権を発動できる対象から
高額の金品を受け取り、
それを打ち上げなどの遊興費に流用した、
その事実です。
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「どのような認識だったか」ではありません。
「どのような事実があったのか?」、ただそれだけです。
その事実を社会通念に照らした時、当事者としてのあなたはどのように思うのか、ということが大切なんです。
学校現場では、かなり以前から「保護者からの贈答の授受」を禁じています。「うちの子がお世話になりました」と、お菓子を持ってきてくれた保護者は、年に1人2人はいました。受け取りが許されていた頃は、個人に対する贈答であっても、ほぼ例外なくもらった教員が職員室で同僚と分け合いながら感謝される喜びをかみしめていたと思います。
いつの頃からか、贈答の受け取りは禁止されました。ですが、そもそも「お礼が欲しい」と思いながら仕事をしている教員など、一人もいません。それは「おまけ」に過ぎないのです。
私が教員になった30年近く前では、修学旅行の引率教員に対して、旅行業者が「慰労会」を開いてくれることが慣例になっていました。と言っても、宿舎であるホテルの一室を借りて、生徒の部屋の見回りを終えた22時過ぎくらいから日付が変わる前後まで、引率職員と旅行業者で飲むくらいです。
ただ、ビールもオードブルも、これでもかというくらいの量が出てきたことは覚えています。そして、その飲食費は旅行業者が社費から出していることを、誰もが知っていました。つまり、慰労会という名の接待だったわけです。そして私自身、「そういうものか」と恩恵を受けたうちの1人でした。
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記事を書きながら、少し前の宝塚歌劇団のいじめのことを思い出しました。2023年9月、25歳の劇団員の女性がマンションから飛び降りて亡くなった事件です。
当の宝塚歌劇団自体が上級生によるパワハラの存在を認めなくても、その存在を裏づける証言がニュースで多数報道されています。
厳しい情報統制や、密告者探し
深夜まで密告者を追及
先輩は絶対的存在で意見はご法度
嫉妬、中傷、もの隠し
先輩が乗る阪急電車に挨拶
辞めても波風を立てればいじめ継続
下級生は問題を指摘されたら反省文、暗唱、詰問
時間が取れず入浴できない
組織風土として上記の事柄が容認される状態にある中で、「パワハラは存在しません」と言われて、誰がその言葉を無条件で受け入れるでしょうか。
「疑わしきは罰せず」。それは構いません。
ですが、疑わしい状況が日常的に発生している点に、私たちは目を向けなければいけないし、それを容認してはいけません。
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以前勤務していた学校で、学年の会計係をしていたことがあります。年度末の書類作成作業では、2週間以上、数字とにらめっこしていました。
領収書を探し、費目を割り振り、定型書式に貼り付け、通帳をにらみながら帳簿をつけ、期日までに報告書を仕上げ、会見監査役の保護者に確認してもらう作業です。数字が苦手な私にとって、校務の合間の会計作業は大変負担が大きいものでしたが、それ以上に「1円合わない」ことの重大さをかみしめていました。
落とし物係を務めていた時期もありました。その多くは自動販売機のお釣りのとり忘れでしたが、担当を引き受けてから2年間で、1万円近くのお金を保管していました。
「いつ、どこに、いくら残されていたか」。同僚や生徒から落とし物としての小銭が寄せられるたびに、この3点についてエクセル入力して学期末の分掌会議に提出します。
この手の取り忘れで持ち主が現れることはほぼないため、結局その1万円近くのお金は後任の係に引き渡しましたが、1円単位で出所をはっきりさせておく必要がありました。
私は、この程度の些細な金額の取り扱いに透明性が与えられなければ、責任ある仕事はできないと思っています。
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教育委員会は、学校を統括する組織です。
学校やそこで働く教員に対して保護者からの付け届けがあれば「受け取ってはならない」と命じる立場にある組織です。
多くの教員は、1円単位のお金のやり取りに関して、それなりにシビアな姿勢で臨んでいます。小さな金額を適切に管理できなかったり、自らを律することができなかったりすれば、生徒に対して胸を張れないからです。
「賄賂ではない」と強弁しても、そうみなされるような状況が事実としてあれば、周囲は「賄賂」とみなします。
教育委員会と学校の関係性については、長く続いている上下関係を見直す時期に来ています。「部下に命じるなら上司からまず襟を正せ」と言いたいところですが、この発想自体、すでに効力を失っていると言えます。それは日本人の精神性の根幹をなす、「相互監視」「相互規制」を肯定する物言いだからです。
互いを見張り、相手の落ち度を指摘するだけで、どうしたらうまくいくかについて真剣に考えることもしない。これでは、時間が経つばかりで、何も変わりません。
個人が高い精神性を保ち、誇りある仕事への取り組みを実現させるためには、この日本で人を育てることの本質的な意味をその都度考えなければなりません。
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追記
ほとんどの学校職員は、きちんとやるべきことをしています。
ですが、一教育委員会の陋習はそのまま、他の教育委員会の、そして各学校の陋習に通じているのも事実です。
日本の学校教育にまつわる「思考停止」から脱却しないと、次世代に見捨てられるのは私たちです。今回の件に限らず、教育関係者のメンタリティを育ててきたのは、ほかならぬ日本の学校教育ですから。
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