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私の本棚#19『僕はイエローでホワイトで、ときどきブルー2』にみる教育とは

こんなにポップで読みやすく、社会問題を映し出しているエッセイは他にないのではないか。前作を読んだ際の感想だ。今回の作品も一気に読んでしまった。スマホばかり見てしまうあなたに、ふとしたときに本書を手に取ってほしい。

『僕はイエローでホワイトで、ときどきブルー』は英国在住の筆者の息子である「ぼく」が、元底辺中学校に通い、人種差別、貧困、ジェンダーの問題などに出会い、考え、悩み、乗り越えながら過ごす成長を綴った物語。中学2年生に進学した「ぼく」の生活は、大人へと一歩近づくスナップショットのようであり、それを見守る筆者は、常に「社会問題」について考えを巡らせている。

私が中でも一番印象的だったのは、次のシーンだ。「ぼく」が学年委員の推薦を受けた際、リーダーの資質は何だと思うかと質問されたときのこと。

「言葉だけで指示するのではなく、自分がまずやって見せることが大事」と書かれていた。ふーんと思いながら目を走らせていると、もう一つの回答が目に留まった。
「導く(LEAD)ということは、前から引っ張るということだけではなく、ときには一番後ろに立ち、後部が離れてしまわないように押し上げる(PUSH UP)こと」
これは私の保育の師匠、アニーがよく言っていた言葉だ。
だから私もその言葉を息子に言ったことがあったのか、あるいは、昔、底辺託児所でアニーが息子の面倒を見ていたときに言っていたのか、それはわからない。
わからないが、彼女の言葉は息子の中に生きていた。
(中略)

教育とは、教えて導くことではなく、授けることであり、授けられ、そして委ねられることなのかもしれない、と感じた。

『ぼくはイエローでホワイトで、ときどきブルー2』

この部分を読みながら、目頭が熱くなった。Push Upするリーダーの資質もそうだが、教育とはこういうものなのか。私は、中高一貫校に通い、国公立大学に進学し、いわゆる詰め込み教育を受けてきた。いい部分ももちろんあったが、こんなふうに授けられ、そして自分の心の中に生きている言葉はあるだろうか。なかなか見出すことはできない。

本日も最後まで読んでいただきありがとうございました。

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