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「展示力合宿 in かなざわ」〜てめえの作品は〜
今日、僕は11月4日の箔一ビルでの「展示」である 日直テーマ:「てめえの作品は」 のレビュー的なものを書いてみようとしている。
しかし、まずは、昨日のnoteテキスト「 「展示力合宿 in かなざわ」僕たちは鑑賞者を想定しているか?この試みを公開する意味はどこに存在するのだろうか? 」についての応答と反省から始めたい。
僕は、この「展示力合宿inかなざわ」において、「展示力合宿」という構造へのアプローチなしには、自分たちの「展示」という営みに、文脈上・権利上アクセス出来ないと思っていた。
昨日のnoteの終わりに、髙山作品の立ち上げを通して作品と会場をすこしのあいだ注視できたこと、それが僕にとって唯一の救いであったと書いた。(僕のつまらないこだわりに徹底的に付き合ってくれた同グループの参加者には心から感謝している(と申し訳なさ))
昨日のテキストから現時点で導いた回答を言うと、作品にとって・会場にとっての最適解を探そうとすることで“結果論“的に鑑賞者を対象とした場所づくりが発生しうるのではないかということだ(詳しくは一番最後に)。そういう意味で今日の会場空間は、昨日までの箔一ビルでの2日間に比べて、たしかに見るべきところが多かった実感をもっている。
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昨日までの4本のテキストでは、具体的な展示内容や個々の作家について僕が記述するということをほとんど避けてきた。参加者である僕の目線でしか出来事を語りえないため、いわゆる展覧会レビューを試みようとするとどうしても偏りが生じすぎてしまうという理由からだ。それでも今日、展覧会レビュー的なものを試みようとしている理由は2つある。1つは、それぞれの会場が誰かに記述されるべき価値を持っていたこと。2つ目は、箔一ビルでもっとも必要とされているものの1つでありながら、存在していないものが展覧会レビューであると参加者同士の会話から浮かび上がってきたからだ。
今日まで行われていた、グミでのゲーム(公開搬入 ★設営一人くんw/?w/o?★)は、会場で発生する動きと同時に、ゲストスピーカーである石毛健太・上田陽子による実況が行われていた。ゲーム参加者である作家たちは、時間制限とコミュニケーションの禁止、イヤホンの着用、により自身の行動を俯瞰して把握することが出来ない。明日(23.11.5)のトークイベントで共有される記録をもとに僕たちはアートグミのゲームの3日間について把握することとなるだろう。グミほどではないにしても、箔一ビルもまた、自分たちの置かれている状況の把握できなさにどう対応し、「展示」や自身、鑑賞者にコミットさせるか?ということを、ここでもまた問われていることになる。
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展覧会レビューの代わりとして、僕の知りえる情報をメモ的に、断片的に記してみようと思う。(もしもこれを読んでいる参加者がいて、「青木の解釈は違います、もっとこうです」という場合「書かないでください、マジでやめて」という場合、メッセージでも対面でも言ってください。言いたくない場合は、鑑賞精度と人間力の低い奴めと白い目で見て軽蔑してください。)
「てめえの作品は」
本日の日直テーマは「てめえの作品は」である。くじ引きで2人1組のペアを作り、お互いについて理解を深める。本日の日直 粟坂・江口・佐藤・間瀬 はヒアリングと記録撮影を中心に回っていた。
会場空間を構成していたペアは以下。(箔一では、展示する/しない、ルールを守る守らないを含めたすべての判断が各個人/ペア/グループの権利としてある。)
森田翔稀・前田宗志
青木遼・西村颯貴
中村さやか・高升梨帆
小田浩次郎・吉田鷹景
髙山晃・三ツ谷麻野
酒井千明・伊藤日向子
森田碧・ナギ ソラ
1F玄関ガラス 森田翔稀・前田宗志
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1F全体 青木遼・西村颯貴
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3F手前 中村さやか・高升梨帆
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辻占は、観測者の受け取りと判断により占いで利用する要素が決定する。高升は、自身の本企画での立ち位置を「企画参加者・来場者を個人として扱い・繋げる変換器」であると称している。高升が収集した情報と占いの結果は、中村作品と展示空間にどのように作用したのだろうか。
3F奥 小田浩次郎・吉田鷹景
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4F手前 髙山晃・三ツ谷麻野
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4F奥 酒井千明・伊藤日向子
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小石が敷き詰められた台、宙に吊るされ光に透けて見える酒井のペインティング、ステンドグラス、伊藤のブラウン管、プロジェクター…制作物と既存物が静けさを保ちながら並列される。
森田碧・ナギ ソラ
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興味深かった点としては、今日(11.4)の箔一ビル1Fでの作家と来場者の動きには、昨日までなかった流れがあったことだ。森田翔稀の映像には道行く人が反応していたし、扉をくぐって来てくれた来場者のほとんどが1Fの奥まで辿り着いてくれていたように見えた。箔一ビルの1Fはガラス張りという特性と、歩道から地続きであることから外部への作用のしやすさ、内部へのアクセスのしやすさいうポテンシャルを今日の展示は示してくれた。
それと同時に1階以上の階でも、作家にとって意義があり会場空間にも注視した空間(僕の知る限りでは髙山・三ツ谷ペアの認識に対する試みと達成・森田碧+ナギソラによる映像作品)が生まれていた。
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最初の回答に戻るが、何かのポリティクスのために作品を用いるということは、そもそもの箔一ビルでの僕(たち)の在り方として最適解ではない。僕(たち)は出品作家/インストーラーとして本企画に参加しているわけである。
構造のために作品を用いるのではなくて、作品を中心にしてその他の要素を引き出すこと。作品こそが、結果論こそが、重要であると言ってみること。(しかしここで言う作品こそが大切というのは「絵描きは絵で語れ、言葉は邪道だ」というような(美大教員にこういう人多すぎません??)スタンスではない。)いったん回答不可能な問いを留保して自身にとっての問題(作品・会場・設営)に取り組むことで、その先の問題へとアクセスする回路を構築しようとすること、そしてそれを展覧会という機能を用いて接続させること。
構造の持つ矛盾とポリティクスに答える仕事は僕(たち)の仕事ではない、とここではいったん言い切ってみる。しかし、これは構造の問題を投げ出すことではない。ここにたどり着くまでに頭のカタい僕は本当に時間がかかってしまった。
これは逃げではなくて、挑戦だと言ってみたい。「結果よかった/結果論でしかないけれどよかった」になんとかしてこじつけること。結果論に行きつけるかどうか、それが最終日までの(運営・企画・参加者)全員にとっての挑戦であると、様々な留保を留めつつも今は言いたい。
こう俯瞰してみて(そしてアートグミゲームの対比で)、昨日11月3日の日直テーマであった「あなたがいること・いないこと」の想像力の必要性が際立ってくる。
ある参加作家が芸術村壁面(展覧会記録として利用している)に掲示した、11月2日のほぼ解読不可能な反転文字からみつけたことばを自戒として今日のテキストを閉じたい。
みんなその人をどう料理するか考えてるんだ。その人全員を生かす方法を考えればいいのに。僕はジャマしたくないしそれぞれを尊重して展示をインストールしたいし展示全体のクオリティを上げたいと思っていた。
その人全員を生かす方法、この思想に繋がるのが「あなたがいること・いないこと」「てめえの作品は」なのだろう。
(23.11.5 5:21 青木遼)
「展示力合宿 inかなざわ 」
[会 期]2023年11月1日(水)〜11月16日(木)入場無料
[会 場]金沢市民芸術村PIT5アート工房・金沢アートグミ ・箔一ビル
参加作家: 青木遼、 荒山莉子、 栗坂萌子、 伊藤日向子、 江口湖夏、 Munehiro OHTA / mooney、 小田浩次郎、 小野綾花、 酒井千明、 佐藤莉於、 白川真吏、 高升梨帆、 高山 晃、 寺林俊太、 中村さやか、ナギソラ、 西村颯貴、中西航基、 前田宗志、間瀬円也、 的野仁紀、 三ツ谷麻野、 森田碧、 森田翔稀、 吉田鷹景、 吉田コム