#4 出会い【いなかったはずのあなたへ】
困惑
「ここ、私有地ですよ」
女の子は不安そうに私を見上げた。
不安というか、ものすごく困惑しているようだった。
いたずらが見つかってしまったから
焦っているのかと最初は思った。
が、それであれば声をかけた瞬間に一目散に逃げるはず。
「大丈夫?」
と声をかけたが、立ちすくんだまま言葉が出ないようなので、
仕方なく下に降りて話を聞こうと思った。
今思うと、年下の女の子といえど不法侵入者に
丸腰でのこのこ会いに行くのはどうかしてたが、
なんとなく大丈夫な気がしていた。
というか、知り合いかもしれないと思ったのだ。
面影
そう思った理由もその子に近づいてから分かった。
女の子の数歩手前まで来て、もう一度
「大丈夫?どうしたの?」
とその子の顔を見た時、パッと昔の記憶がよみがえった。
ずっと前に見た白黒の写真が思い起こされる。
母屋の前で家族並んで、その子と同じ年齢くらいの女の子が微笑んでいる。
おばあちゃんだ。
いたずらだの泥棒だの現実的な解を思い浮かべてた私も、
何か不思議なことが起こっていると感じた。
おばあちゃんはもう数年前に亡くなっている。
この子は誰だ?おばあちゃんの亡霊か?
ふと口をついたのは
「節子ちゃん?」
おばあちゃんの名前だ。謎にちゃんづけしてしまった。
ついにその子が口を開いた。
「真理子です。」
まだ困惑しているようだが、はっきりした声だった。
「真理子ちゃん、ここで何してるの?
人の家に勝手に入ったらダメだよ。」
「でもここ私の家です。」
訴えかけるように私の目を見て言った。
何を言ってるんだこの人は。
次に何を言おうか考えていたら、
「お母さんはどこ?みんなは?」
と女の子はうつむきながら呟いた。
「お母さん、、、」
と顔を覆って泣きじゃくってしまった。
私は混乱しながらも、そっとその子の肩を抱いた。