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第九章:マボと3人の小人3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「でも、デカ、チビ、あの子が首に下げているものをごらんよ。あれは妖精の騎士だけが持つことができるエルフのメダルじゃないかな!?」
「本当だ、でも、なんであんな子供がメダルを首から下げているんだろうねえ!?」
「きっとあの子は剣の使い手かもしれないねえ」
「弓の名手かもしれないよ!」
「こん棒を振り回すのかもしれない!」

と口々に言っています。マボはすっかり小人たちに気付きますと、まるで気づかないふりをして、よそを見ながら高らかに口笛を吹き始めました。

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しかも、自分が妖精の騎士に間違われるなんて、何とも気分が良かったのです。もちろん、得意げにしているマボの坊やは、剣も弓も棍棒も使えません。ただの迷子の子供ですし、村で手にするものと言えばガラクタ集めのトングだけでした。さらに言うと、マボは喧嘩も強くありませんし、そもそも喧嘩は嫌いだからしません。ですので、村の子供たちには、マボはてんで弱いと思われていました(ただし逃げ足と隠れることに関しては、油断ならないと言う子供もいるようです)。

「ねえ、チャッピ、あの子は妖精の騎士かもしれないね、お願いしてみたらどうだろうか…?」
 デカが言いました。
「そうだよ、あの子、てんで強くなさそうだけれど、もしかしたら、魔法でも使えるんじゃないかな!?」
 チビが期待を込めて言いました。リーダー格のチャッピは少しばかり腕組みして考え込みましたが、ついにうなずきました。
「そうだね、あのメダルはエルフのメダルに違いないよ。きっと、僕たちの村を助けてくれると思うよ。二人はここで隠れているんだよ、僕が頼みに行ってくる!」
チャッピはさすがのリーダーで、こういう風に言ったのです。

それから、チャッピはマボの様子をうかがうと、大きく息を吸ってから切り株を飛び出しました。そうして、一番近くの木の後ろにさっと移動しました。
その素早いことと言ったらありません。マボが瞬きする間の一瞬だったのです。妖精の中でも姿かたちともに小さい部類の小人ですが、このように非常に早く移動することができます。ですので、ふだんは人間を目撃しようものなら、瞬く間に逃げてしまうのです。気配や音を感じた人間であれば、小さな獣が逃げ去ったと思うだけでしょう。チャッピは素早く木と木を移動しながら、少しずつマボに近づいたのです。そして、10m離れたブナの若木の後ろに隠れ、顔だけ不安そうにのぞかせてマボをじっと見ました。

マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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