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第八章:しゃべるオウム1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

モモとネネは腹をかかえて大笑いです。しかし、しばらくたってすっかり静まり返ると、途端に周りの木々がよりいっそう背が高くなったように感じました。モモとネネも迷い森に、2人きりで取り残されてしまったのですから。

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奇妙な男がいなくなり、子供ばかり2人だけになりました。しかも、はぐれたマボもどこに行ったかわかりません。頭上には太陽が昇っていますが、梢をあちこちに伸ばしている大木たちが光の多くをさえぎっています。鳥たちはそこかしこで鳴いていますが、中には”ギャーギャー”と奇声を上げて、おびえるように飛び立っていくものもあります。こんなところに女の子2人だけ、恐ろしい動物に遭遇すれば大変なことになるでしょう。二人は思わず肩を寄せ合いました。

「大丈夫よ、あの奇妙な男ももうすぐ戻ってくるわよ。さすがに私たちを放り出して、先に行くわけないわよ。こうもり傘だってここに置いてあるのだから!」
モモは心配いらないと言いたくて、精一杯明るい声で言いました。

「でも、モモ。あのおじさんは、マボだって置き去りにするって言ってる悪い人よ。本当に戻ってくるのかしら? それに、こんなみすぼらしい傘を拾いに戻るくらいなら、お花や蝶々の模様が入った綺麗な日傘を買った方がいいと思うのが当然でしょ。ねえ、本当に戻ってくるの?」
一方のネネは違う意見なので、とても心配でたまらないというふうに眉を寄せながら言いました。

「戻ってくるわよ、ええ、そうよ、きっと戻ってくるわ」
「それに、マボだってどこかに行ったままだし、今も大丈夫よね!? ひどい目にあっていないわよね?」
「大丈夫よ、マボだもん。あんな感じだけれど、あれで結構たくましいんだから!」
「でも、マボは迷い森に今ひとりぼっちで歩いているのよね……私だったら、怖くって耐えられないわ。それに、本当のこと言うと、私もう、家に帰りたいの!」
ネネはもうすっかり弱気になってしまい、今にも泣き出しそうでした。その不安は伝わり、モモは苛立ちながら言いました。


マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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