第五章:迷い森へ3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-
ですので、子供を送り出す大人たちも少しは安心していました。ニルバーニア様のお知り合いならば、とても確かな人に違いない、森の中も熟知して、魔法も使え、とても強くて聡明で、それはそれは子供思いの方だろう、そう思い込んでいたのです。
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そして、その”偉大なるニルバーニア様のお知り合い”は森の中からいきなりぬっとあらわれたのです。その”お知り合い”を見ると、大人も3人の子供もぎょっとして、言葉を失いました。
突然姿を現した男は灰色のフードつきのマントを身にまとっています。マントは丈が長く、地面をひきずるほどです。頭には先が長くてとんがった黒い帽子をかぶり、手には雨でもないのに先が銀色に光っているコウモリ傘を大事そうに抱え、足には黒い長靴をはいています。太い眉は手入れがまったくされておらず左右につながっており、ヤギのような細くて長いあごひげは伸びるにまかせてあり、何ともみすぼらしく、薄汚い印象が際立つ男が立っているのでした。しかも、朝っぱらから瓶にはいったラム酒をひっかけ、赤ら顔をしてしゃっくりまでしています。男はいきなり言いました。
「おせえなあ」
そして、一言いっただけで、あいさつもなければ、名前も名乗らず、ぷいと背中を向けて森の中にすたすたと歩いて消えてしまったのです。
これには大人たちはすっかり顔を見合わせ、誰もが心配そうな表情を浮かべました。本当にあの立派で世界でもとびきり高名なニルバーニア様のお知り合いと信じていいのか、かわいい子供たちを任せるに足る人物なのか、疑念がわいたからでした。
マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。
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