第八章:しゃべるオウム2 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)
「でも、マボは迷い森に今ひとりぼっちで歩いているのよね……私だったら、怖くって耐えられないわ。それに、本当のこと言うと、私もう、家に帰りたいの!」
ネネはもうすっかり弱気になってしまい、今にも泣き出しそうでした。その不安は伝わり、モモは苛立ちながら言いました。
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あれほど強気なモモでさえ、やはり今は不安で不安で仕方ありませんでした。ネネはついに目に手を当てて泣きはじめてしまいましたし、実のところモモも泣く寸前だったのです。しかし、その時でした。
"ばさ、ばさ、ばさ"とそれは大きな羽音が頭上に響きました。2人は思わず泣くのをやめて、上を見上げました。木々の深い緑が頭上を覆っていますが、その隙間から太陽の金色の光がわずかに差し込んいます。その柔らかい光の中をぬうように、色鮮やかな大型のオウムが一匹、悠然と姿を現しました。オウムの頭にはいくつものとがった羽のような金色の冠羽がついています。深紅の体をしており、羽は赤、青、黄、緑色のグラデーションがそれは美しく、モモもネネも涙を忘れてすっかり見入っています。
オウムは大きな羽音をたてながら、ゆっくりと降りてきて、モモとネネのすぐ頭上の梢に止まりました。それから、オウムは独特の高い声で、2人に話しかけました。
「おや、おや、迷い森に女の子が2人だけ、いったいどうしたんだい?」
これにはモモもネネも目を真ん丸にして、びっくりしています。だって、いきなり美しいオウムが現れて、人間のように話すのですから無理もありません。2人とも息をのんで、すぐには言葉が出ないほとでした。
「あらまあ、怖くて仕方なかったんだね。かわいそうに。いったい、何があったんだい、私に話してはくれないかしらね?」
オウムが優しく語りかけるように言ったので、モモは口を開きました。
「きれいなオウムさん、あなた、おしゃべりができるの?」
「ええ、できますとも!」
モモとネネは思わずうれしくなって、胸の前で両手を合わせました。
「ネネ、聞いた? なんておしゃべりが上手なオウムさんなんでしょうね!」
「そうね、モモ。私はこんな賢いオウムさんを初めてみたわ!」
2人は大喜びです。
「オウムさん、私たちはね奇妙なおじさんの案内で、迷い森の奥に住む魔女に会いに行くつもりだったの。でもね、奇妙なおじさんは一人でとことこ、とことこ、後ろも振り返らずに先に早足で行ってしまうの。それで、マボが迷子になってしまったのよ。私たちはマボを探してくれるように頼んだんだけれど、おじさんは全く聞いてくれないの」
モモは一気に言いました。
「そうなの、それどころか、マボを置いて先に行くなんて意地悪を言うのよ」
そこにネネが付け加えたのです。
「おやまあ、それは悪いことをしたねえ。やはりあの男に案内を任せたのは失敗だったわねえ。それにしても、許せないわね、大切な子供たちに意地悪するなんて! 白銀の輪っかのこらしめを、さんざんにしてやらないといけないわ!」
オウムは何でもお見通しとばかりに言うものですから、とても不思議なことでした。
「白銀の輪っかって何?」
モモは首をかしげてたずねました。
マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。
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