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第九章:マボと3人の小人4 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

チャッピは素早く木と木を移動しながら、少しずつマボに近づいたのです。そして、10m離れたブナの若木の後ろに隠れ、顔だけ不安そうにのぞかせてマボをじっと見ました。

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しばらくは、頭の後ろで手を組んで口笛を吹きながら、そっぽを向いて知らんぷりしていたマボですが、チャッピはそれ以上はなかなか近づいてはきません。きっと、子供とはいえ人間のことが怖いのでしょう。よく見るとぶるぶると震えています。チャッピの後ろでは「がんばれ、チャッピ、あと少しだよ!」と、デカとチビが応援しています。マボはチャッピがかわいそうに思い、口笛をやめるとついに話しかけました。

「どうしたんだい、君、僕に用があるの?」

しかし、返事はありませんでした。それどころか驚いて、チャッピが顔をひっこめて、木の後ろにさっと隠れてしまったのです。突然、話しかけれたから驚いてしまったのでしょう。
「大丈夫だよ、出ておいで、僕はマボだよ、君の名前はチャッピでしょ!」
マボは思わず言いました。小人たちのささやくような声が、メダルのおかげではっきりと聞こえているからでした。すると、チャッピも驚いて顔をひょこっと出しました。

「どうして、僕の名前を知っているの、妖精の騎士だからなの!?」
マボは得意になって鼻をぷくっとふくらませました。というのも”妖精の騎士”にあこがれていたマボですから、自分が妖精の騎士なんて呼ばれることは夢にも思わなかったからです。実際はマボは妖精の騎士でもなんでもない、ただのお子さんでした。マボの首にかかっているメダルはキッチュから借りただけのものでした。

しかし、チャッピはすっかりマボを妖精の騎士と思い込んでいるようでした。マボは調子にのって指をさして言いました。
「あの切り株の後ろに隠れているのが、デカとチビだね! 僕は知ってるよ!」
こうなるとマボは何だか自分が何でもお見通しの騎士のように思えてきました。実際は足し算だって苦手なぐらいなのに!

「やっぱり、そうだ、君は妖精の騎士なんだね!?」
「ぼ、僕は…その…」
さすがにマボはうそをつくわけにもいかないので、口をごにょごにょさせました。ですが、勘違いしたチャッピは大喜び、ぴょんぴょん飛び跳ねながら言いました。
「僕たちはずっと妖精の騎士を探し回っていたんだ。君のような子供の妖精の騎士がいるなんて、ちっとも思わなかったよ!」

マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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