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第四章:ニルバーニアと選ばれし3人の子供12 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-

すると、誰もが驚き、目を見張りました。皺だらけの老人とばかり思っていたニルバーニアですが、何とも美しい若い娘のような顔立ちだったからです。短めでくせっ毛の強い茶色い髪、目は快晴の空のように青い瞳をしており、誰もが見とれてしまいました。その老人のような話ぶりと全く釣り合わないニルバーニアは、いったどれほどの年齢なのかはわかりません。ここにいる誰よりも長く生きているのは確かなのですが…。

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ニルバーニアは布きれの上に、星石を3つだけしまわずに残していました。そして、その最後に残っていた3つの星石を手のひらに乗せると、今度は壁際に座っている子供たちを、その澄んだ青い瞳で一人一人見つめたのです。マボもモモもネネもニルバーニアとそれぞれ、目が合いました。ニルバーニアの空色の瞳は、何とも優しげでした。

広間にいる誰もが、ニルバーニアのことをじっと見守っています。ニルバーニアは目を閉じると、ぎゅっと手のひらの石を握り、
「願わくば星石に宿る精霊よ、運命をお示しくだされ…」
こう念じると、おもむろに星石を天井高くに投げあげました。すると、その星石は頂点に達すると、意志を持ったかのように三つに散らばりました。部屋の誰もが上をみあげ、星石の行先を目で追いました。星石はゆっくりと弧を描いて落ちていき、3人の子供の前にピタリと落ちたのです。その3人の子供とは、マボ、モモ、ネネだったのです。ニルバーニアはじっくりと、3人の子供の顔を見回し、それからパッと顔を明るくさせて、
「なるほど、まだ星石は私のことを見捨ててはいなかったようじゃ!」
「と、申されると!?」
アルマンゾさんが目を白黒させてたずねます。
「星石は選んだのじゃ、この3人の子供に迷い森に行くようにと!」
「迷い森ですと!」
大人たちがいっせいに声をあげます。

マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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