第五章:迷い森へ6 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-
ばあちゃんが戸棚に大事にしまっている袋には、一握りの銀貨が入っているだけです。マボがへとへとになりながらガラクタ集めでもらえるのは、銅貨数枚でした。ですので、金貨など初めてお目にかかったのです。マボは太陽のかけらのようにまばゆく光る金貨から、なかなか目が離せませんでした。しかし、モモは言いました。
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「ネネ、あなたはわかってないわね。私はお金なんてちっともほしくもないし、興味がないの! 私はあなたなんかおいて、森を好きなだけ駆け回りたいだけなの。そして、奥の奥まで行って双頭の魔女に会うのよ。それから、私はその魔女に魔法を習って、魔法使いになるつもりなのよ! だから、本当はあなたなんかにかまってられないの!」
モモはそう言うと怒って、一人大股で先に進んで行ってしまいました。
「モモったら、本当に変わっている子ね。お金がいらないなんていう人、あの変な魔法使いとモモぐらいなものよ。マボ、あなたは私の召使になってくれるでしょ。そしたら、今度金貨を何枚かわけてあげるわよ!」
マボはこう言われましたので、思わず返事をしました。
「う…うん」
というのも、金貨が1枚でもあれば、ばあちゃんがどんなに喜ぶだろうと思いましたし、目が悪いばあちゃんが一日中、糸車を回す日もいくばくか減ると思ったからです。マボの返事を聞くと、ネネは早速命令したのです。
「ねえマボ、私もう疲れてしまったの」
歩いて10分もたたないうちに、このわがままなお嬢さんは言うのです。
「お願いだから、私の荷物も持って頂戴。そしたら、今度金貨を1枚あげるわ!」
「う、うん」
こうして、マボはネネの分も合わせ、2人分の荷物をもって、ふうふう言いながら歩く羽目になったのです。とにもかくにも、3人は迷い森に足を踏み入れたのでした。
マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。
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