第五章:迷い森へ1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-
そんな父親を見て、世の中にはお金に動かされない人間がいることを、ネネは初めて知ったのでした。
こうして、選ばれし3人の子供になった、マボ、モモ、ネネは迷い森に向かうことになったのです。
1
3人の子供たちは何人かの大人に見送られ、森の入り口に向かって町の外れにある原っぱを歩いていました。モモは手をつなぐシュールレの奥さんを引っ張るようにはりきって足取り軽く、心配そうな顔をしているマボは普通に、ネネは何かを引きずるように重い足取りでした。子供たちは大人たちが用意してくれた数日分のお弁当、怪我をした時用の薬などが入ったリュックを背負っていました。
アルマンゾさんは、一人娘のネネを送り出すことが不安で仕方ありません。実のところは今でも迷っているのですが、大賢者ニルバーニアの言いつけを破るわけにはいかないのです。しかし、ネネはネネで行くのは絶対に嫌でした。ネネは家の中で人形遊びをすることが大好きで、外をかけまわることなんてまっぴらごめんだったのです。
ですが、そうも言ってはいられません。3人の子供たちは森の奥に住むと言う双頭の魔女に会わなくてはいけません。仮に子供たちが「一抜けた!」をしたならば、村や国、世界に広がる病気をどうすることもできなくなってしまうでしょう。何とも不思議なことですが、小さな村に住む3人のかわいい子供たちが、世界の運命を背負う羽目になったのでした。それを知っているのは、小さな村の村人と偉大なる大賢者ニルバーニア様だけでした(ニルバーニアは占いを終えると、気配もないままに村から姿を消してしまいました)。
マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。