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プロローグ3-7(ソック、家を追ん出される!)-サイレント・ネオ-boy meets girl-

「あなた大丈夫よね、いくらなんでも…他の人は振込だっていうのに、あなたは現ナマが一番って口癖のように言ってるけれど…」
「シャリーン、私だってばかじゃないんだ…こんな大事なものなくすわけないだろ…カバン中かな…」

と今度はカバンの中をまさぐった。しかし、見つからず、中身をひっくりかえして細かく調べた。
「あれ…おかしいな、ここにもないのか…」
あわてるソックのそばで、トド子の顔がみるみる赤くなっていく。
まるで電気ストーブの電熱灯のような色である。

「あ、あなた、まさかねえ、そんな、ボーナスがなかったら子供の学費やら、車のローンやらねえ…」
あわてふためくソックはもうトド子の声も耳に入らないほどで、背広とカバンを行き来し、何度も何度も確かめた。
しかし、見つからずソックは頭をかきむしりながら、ナスのように青ざめて泣きそうな顔になった。

「あなた、昨日いったいどこをほっつき歩いてたの、どこかに落としたんじゃないの!?」
「そ、そうだな…給料をもらって繁華街にナウマンたちをさそって繰り出したんだよな…それから、酔っぱらって…気づいたら薄暗い感じのスナックで飲んでいた。
ここが良心的な店でな、安かったんだ…ここまではボーナスで払っていたからあったんだよな…で、そのあと気付いたらホテルにいたんだ…あ、あの女だ!」
「ホテル、女!?」
トド子は鬼のような形相でソックをにらみつけた。

「いや、その、なんだ…女っていうのはホテルの従業員のことだよ…あの、若い女だ、どこにいった!?」
「あなた…わかっているでしょうね。ボーナスがなかったらどうなるか…」
「どうなるかって、シャリーン…明日から一緒にララに温泉に…」
「ボーナスもないのに、温泉なんか行けるわけないでしょう!」

怒りが爆発したトド子はソックを家からひきずりだすと、ウクレレも外に放りだして、バタンと閉めてしまった。
よれよれ立ち上がったソックは、ドアを叩いて懇願した。
シャリーン、開けてくれよ~ボーナスなくしたのはあやまるから~、
近所の人に見られたら変だろ~

すると隣の奥さんが通りかかった。
ソックは急に背筋をしゃんと伸ばし、
「どうもこんにちは、奥様。これからララに水入らずの旅に行く予定でしてね…ええ、ですからこんなかっこうをしているんですよ」
「あら、そうなんですか。気を付けていかれてくださいね」
とこんな会話をし、その奥さんが帰ったのを見計らうと、
「シャリーン、一緒に混浴入るの楽しみにしてたじゃないか~、なあ、開けてくれよ~」
と言うが、ドアの向こうから返事はなかった。

それでも、ソックがドアを叩き続けると、
「この甲斐性なしのごくつぶしが! ボーナス見つけるまで帰ってくるな!!!」
と雷が落ちたような大声で、シャリーンが叫ぶのだった。
こうしてソックは、家から追い出されたのである。
まだまだつづく・・・次はプロローグ3 ソック、ナウマンにつきまとう。お楽しみに!

企画/ソック×ボイスアクター/プロローグ3に登場する、ソックの4つのセリフ(黒文字で表記)を実際に声に出してもらっています!※Cocommuより
→へいさん

プロローグ:3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-8

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遥ナル
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