ソック、サシャにたかる9-サイレント・ネオ-boy meets girl-
「偶然というか…それ、俺だけど」
ムサシがあっさり言うと、ソックは腹を抱えて大笑いした。
「はっはっは…ムサシ君、冗談がうまいねえ。まさか、こんなところにムサシ・ミナモトがいるわけないだろ!」あまりにおもしろいのか、口から白い泡をふきながら、せき込みさえした。
「ぶほっ、はっはっは…ムサシ君、冗談がうまいねえ。まさか、こんなところにムサシ・ミナモトがいるわけないだろ!」
「だから、俺はムサシ・ミナモトだって」
すると、ソックはまだ笑いが止まらいようで腹を抱えながら、
「わかった、わかった。君は白い死神だ、天下無双のムサシだ。おじさんが今度相手してやろう。青い死神と言われたこのJ・ソックがな!」
ソックはこういったが、内心では
『ははー…この青年、きっとムサシ・ミナモトに憧れてるCAマニアだろう。
名前まで一緒なはずないでわないか、もっとましな嘘はつけんのか! きっと偽名なんだろうな。ここはいっちょ、彼のほらに付き合って、合わせて置いた方が何かと都合がいいな』
このソックの勘違いがのちほど、とんでもないことになる。
「話が長くなったが、どうだい、この提案、君たちに悪いものではないとおもうが…」
「そうだな…」
ムサシはまんざらでもない返事だったが、テディ・Dたちは、
「おじさんも一緒についてくるっていうの…私は正直気が進まないわ…オジャム、どう思う?」
「そ、そうだね、僕もどちらかと言えば…」
「さーたんも…」
とソックの旗色は極めて悪い。
だが、ここでムサシたちに見捨てられれば、後がないソックは必死である。
「ムサシ君はどちらかといえば賛成だね…で、お嬢さんは反対、残念だが意見は尊重しよう。
それでオジャム君はどちらかと言えば…賛成と言えなくもない、かもしれない、どうだいオジャム君。こういう時はね、意見なんてはっきり言う必要はないからね、言ってごらん」
「だから、僕はどちらかといえば、テディ・Dの意見に賛成というか…」
ここで、素早くソックが割り込み、
「テディちゃんの意見に賛成というか反対というか…どちらともいえないと言うことかな。それも立派な意見だね。
これで賛成1、反対1、どちらでもないが1だ…最後はサシャちゃんだね、サシャちゃんはさーたんもって言ってたね」
「うん、そうだよ。さーたんも…」
「サシャちゃんもオジャム君と一緒ということかい、そうだよね、そう言ってごらん」
「だから、さーたんも…」
ソックは最後まで言わさず、
「サシャちゃん、どうだい、こういうことで。今度おじさんがサシャちゃんにありさんの絵本を買ってあげるっていうのは?」
「ありさんのえほん?」
「そうだよ、おもしろいよ、今度買ってあげるよ、きっと、いつの日か、忘れたころに! だからね、オジャム君と同じ意見でいいかな」
サシャはわけもわからずうなずく。
「これで、みんなの意見が出そろったな! 賛成1、反対1、どちらでもない2」
ソックは自分の思い通りになったとばかりに、手を摺合せうれしそうにしている。
「こういう時はね多数決がいい。物事はね、やはり民主的でなくてはいけないからね。
意見は五分五分だけどね、一人、忘れている人がいるね、誰だかわかるかな!? そうだ、このソックおじさんの票も入れないといけないよね。おじさんはもちろん賛成だ! ということで、テディちゃんは残念だけれども、多数決の結果、おじさんも一緒に行くこととなりました! みんな、仲良くしようね、旅は道連れ、世は情けだ!」
とソックはまくしたてたのだった。
「ますます大人が嫌いになったわ…」
テディ・Dがあきれてつぶやいた。
「よくしゃべるおっさんだな…まあ、仕方ないさ。確かに大人がいる方がこの先、何かと都合がいいだろうよ」
ムサシがあきれながらも感心して言い、ぽんとテディ・Dの肩を軽く叩いた。
こうしてソックも一行に加わったのだった。
サイレント・ネオ-boy meets girl(全話掲載予定)-|遥ナル
登場人物
テディ・D:ゴスロリの格好をし、腕には9.8と数字をほり自死がんぼうがある少女。
オジャム:お飾りの提督をしていたが、父親をころされたあげく、砂漠に追放された。命からがら助かり、ゴサクの家で豚小屋などを掃除して糧を得ている。心優しい少年。
サシャ:誘拐船でオジャムと出会った6歳の女の子。勘が鋭く、ゴサクに気に入られている。その正体は…!?
ムサシ:地球(テラ)・ネオ東京出身の19歳の青年。愛機サイレント・ネオをあやつり、第5次地球・コロニー戦争において100機墜としを達成、英雄認定及びスーパーエースの称号を得た。地球のCAリーグにも参加している人気パイロットでもある。しかし、戦う意味を見失い、月歌に放浪の旅に出る。
ソック:ムーンキングダム・斥候隊副隊長。ボーナスをなくしてしまい、恐妻トド子に家を追い出された悲しき中年男性。
シャギ:極悪非道の仮面騎士と呼ばれる男。若いころは、義侠を持ち黄金のシャギと呼ばれていた。青年時代に地元の若者たちと悪党を結成、砂漠地帯で暴れまわったが、ゲンバ提督の娘に手を出したことで怒りをかってしまう。顔を切り刻まれ、腕と足を切り落とされたあげく、投獄された。しかし、復活後は人が変わったように残酷になり、シャギ党を結成して、ついにはカイバの提督の座を強奪するに至った。
ムドー:月歌だけでなく、コロニー連合などで十数年の間、傭兵として戦場をわたりあるいてきた猛将。残酷な攻撃をすることもあるが、騎士道と義理を尊ぶ武人。シュトライツァー党では義兄弟のシュトライツァーの副将として活躍、北国随一の武将とまで呼ばれるにいたった。ダークブルーのパンツァーを愛機としており、精鋭の青備え50機を率いる。
ガスズ:ムサシのライバル。CAリーグでは常にムサシと同時に昇級しており、何度か土をつけている。黒いCAヤシャをあやつる。唯我独尊を地で行く男。
マギー教授(おねえ)とみなみちゃん(アイドル):一年前に地球(テラ)から月歌に向けて出発したが、未だに到着せず。かつてスーパーエースだったマギーは戦闘での怪我のため、現役を引退して士官学校で教授をしている。裏の顔はおねえである。
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