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第八章:しゃべるオウム3 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

オウムは何でもお見通しとばかりに言うものですから、とても不思議なことでした。
「白銀の輪っかって何?」
モモは首をかしげてたずねました。

「それはね、いずれわかることですよ、モモ。戒めの輪っかなのよ。欲望を抑え込むこともできるの。きっとあなたたちも、それを必要とする時が来るでしょう。でも、それは先のお話なのよ」
 これを聞いて、モモとネネはさらにびっくりしました。だって、自分の名前を知っているなんて思ってもみなかったからです。
「ねえ、オウムさん、なんで私の名前を知っているの!?」
「モモだけじゃないわよ、ネネだって知ってるわ」
 オウムは湾曲したくちばしを器用に動かしながら、人間のように話しています。モモとネネは顔を見合わせました。理由はわかりませんが、何だかとても安心できて、うれしい気持ちになりました。

この不思議なオウムはいったい何者なのでしょうか。その答えはすぐにわかりました。オウムは赤や青、緑の美しい羽を羽ばたかせながら、モモとネネの前に降り立ちました。すると、何ということでしょうか。むくむくと体が大きくなっていき、ゆっくりと姿かたちを変えていくではありませんか! オウムはモモとネネほどの大きさになり、さらにぐんぐん高くなり、ついには赤い法衣を着たあの大賢者様に変わったのです。それは、子供たちがもっとも今、この場所で出会いたい人でした。この人さえいれば、どんなに恐ろしい人食い虎や邪悪な者が現れたって恐れる必要がないことがわかっています。だってこの人は、世界で最も智恵を持ち、賢いと言われる大賢者ニルバーニア様なのですから!

モモは思わず”わっ”と叫んで、ニルバーニアの体に顔をうずめたのです。一方、ネネはニルバーニアとわかると、途端に顔を曇らせました。まだ以前に”わがまま”と言われたことが尾をひいているのです。内心はほっとしてとてもうれしかったのですが、ネネの気持ちは複雑だったのです。
「ああ、怖かっただろうさ、悪かったねえ、あんな奇妙な男に案内をさせてしまって。星石の占いであの男に案内させるようにと出たんだけれどねえ、私の占いの腕もずいぶん落ちてしまったようだ。年の瀬には勝てないもんさね」
ニルバーニアはそういうと、足元に落ちていたコウモリ傘をひろって、袖の中にすっぽり仕舞い込みました。


マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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