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第九章:マボと3人の小人1 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「いい、二人とも。ここから動いてはいけないよ。例えば誰かが名前を呼んだり、泣いて気を引こうとするものがあるかもわからない。でも、迷い森にはそれは邪悪な者もいないとは限らないからね。私はマボをみつけてくるから、ここを動かずにじっとしているのですよ」
こう言われた二人はコクリとうなずきました。ニルバーニアは二人の頭を軽くなでると、すぐにまた彩り豊かな美しいオウムに姿を変えました。それからゆっくりと空高く舞い上がり、頭上を一回転してあいさつしたかと思うと、マボを探しに遠くに飛んで行ったのでした。

一人ぼっちになったマボですが、エルフの妖精キッチュと出遭ったお話は最初にしました。その後、キッチュと別れたマボは、仕方なく再び1人でとぼとぼと森の中を歩きはじめました。何としてもモモとネネ、奇妙な男を見つけ出さねばなりません。そうしなければ、この恐ろしい迷い森で1人ぼっちのままです。マボは足取り重く、先に進みました。

「モモ、ネネ、どこなのー、出ておいでー!」
マボは10歩歩くたびに、繰り返し叫びました。しかし、返事は返ってきませんでした。マボは深いため息をつきながら、カエデの木の下にペタリと座り込みました。マボはこのまま迷い森からも出られず、双頭の魔女に会うこともできず倒れてしまうのではないか、そんな恐怖を感じていました。ですので、マボはあやうくべそをかきそうだったのです。

すると、不思議なことが起こりました。どこからともなく、風に乗って子供がひそひそと話す声が聞こえてくるではありませんか!? それも、1人ではなく、3人ほどの声が聞こえてきます。とても小さく、ささやくような子供の声です。
マボは思わず声が聞こえる方をじっと見ました。すると、切り株に何かがいるのがわかりました。マボはどぎまぎしながら、もしかしたらモモとネネが隠れて、いたずらしているのではないかとも思いました。ですので、マボはじーっと切り株の方を見つめるばかりです。それから、数分もたたないうちに、がさがさ、がさがさと音がしました。マボは野うさぎが草の中で動いているのだろうかと思って目を離さずにいます。
すると、切り株からちょこんととんがり帽子が3つ、飛び出してくるのが見えました。それは、赤、青、黄色をそれぞれしていました。マボは思わず目をごしごしとこすりました。それから、間もなくのことでした。今度は帽子の下にあったかわいい顔が3つ、切り株の上に飛び出したではありませんか! 実をいえば切り株に隠れていたのは、3人の小人だったのです。


マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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遥ナル
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