第九章:マボと3人の小人5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)
「やっぱり、そうだ、君は妖精の騎士なんだね!?」
「ぼ、僕は…その…」
さすがにマボはうそをつくわけにもいかないので、口をごにょごにょさせました。ですが、勘違いしたチャッピは大喜び、ぴょんぴょん飛び跳ねながら言いました。
「僕たちはずっと妖精の騎士を探し回っていたんだ。君のような子供の妖精の騎士がいるなんて、ちっとも思わなかったよ!」
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チャッピはすっかり安心して近づくと、マボを見上げて言いました。
妖精の騎士はジェントルマンしかなることが許されません。悪しきをくじき、弱きを守り、誰にでも優しくなくてはならないのです。まして、その対象が子供であるならば、なおさらでした。そして、チャッピがマボを見上げたのは、小人ですからずいぶん背が低いからです。小人の子供の中では一番大きいデカでさえ、マボの腰までしかありません。つまり、マボは小人族の中では、とてつもなく背えたかのっぽなのでした!
マボはもう、うれしくて仕方ありません。村の子供たちの中では前から数えた方が早いマボです。大人からはしばしば”おちびちゃん”なんて呼ばれることさえあるぐらいなのです。しかし、この小人たちを前にすれば、マボの方がどんな小人でも”おチビちゃん”と呼べる立場になるのです。マボは気分がよくなり、迷子になってることなどすっかり忘れてしまいました。
「切り株の後ろに隠れている君たちも出ておいでよ!」
と声をかけ、手招きしたのです。デカとチビもおそるおそるマボに近づきました。
「ねえ、マボさん、どうか、僕たちと友達になってよ!」
チャッピが言いました。
「もちろんだよ、僕たちは今から友達だよ!」
マボは手をさしのべ、本当にちっちゃな赤ちゃんのようなチャッピの手を握りました。
「わあ、妖精の騎士と僕は友達になったよ、わーい!」
チャッピはあこがれの妖精の騎士と握手をして、友達になれと思い込んで大喜びです。何度も言いますが、マボはただの5歳の子供です。
つづく
マボ:5歳の男の子。少し臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。
ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。
キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。
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