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第十一章:マボとトロル兄弟!?5 樫の木庵のマボ-大賢者ニルバーニアと双頭の魔女-(連続小説/児童文学)

「そうだが…こんな時にエルフを呼び出されたら、面倒なことになるかもしれんな」
用心深い兄トロルはそう言うと、輿の中に指を入れてマボの腰をつかんでひょいと掴み出したのです。

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マボは空中で手足をばたつかせましたが、どうにもなりません。さらに下を見ると、その高いこと、目がくらむことといったらありませんでした。はるか下にポツン、ポツンとはえた低木は、黒い点にしか見えません。マボと同じ高さのところを、鷹が旋回しているほどでした。トロルが指を気まぐれに離そうものなら、マボは何十メートルも下に落ちてぺしゃんこになってしまうでしょう。

「ありゃ…こりゃ、小人でねえなあ、人間だべ!」
兄トロルはマボを見ると、驚いて目を白黒させました。
「本当だべ、いったいどうなってるんだ!」
弟トロル-名前は”たごさく”といいます-も同じでした。
「しかも、兄者よ、このチビの首元をみろ。エルフのメダルをかけているでねえか!」

トロル兄弟はマボがかけるエルフのメダルの輝きに釘付けになりました。というのも力では誰にも負けない自負があるトロルですが、妖精の騎士の強さはこのような辺境の荒れ地にもとどろいており、噂に聞いていたのでした。

「おい、小僧。その、メダルはどうした、盗んだのか!?」
兄トロルがたずねました。マボは首を横に振り、何とか声をふりしぼりました。
「違うよ、キッチュにかけてもらったんだよ」
「あ、兄者、やっぱりこの小僧、キッチュの友達かなにかだぞ。どうするべえ。エルフどもを敵に回すと、面倒なことがおきるぞ。それに、妖精の騎士だったら、えらい目にあうかもしれん!」
たごさくはマボの言葉を聞くとすっかり落ち着きがなくなりました。しかし、兄トロルのはちべえは弟よりも頭が少しばかり回りました。

「たごさく、心配するでねえ。この野兎みたいなチビをみろ。オラの指先でぶるぶる、ぶるぶる震えているでねえか。こんな子供が妖精の騎士のわけはねえだ。それに、妖精の騎士だとしても、オラが負けるわけねえ!」
このトロル達は実際に妖精の騎士と戦ったことがあるわけではありません。この界隈では一番強いと言う自信もありますので、怖い者知らずだったのです。それから、マボを地面にこそいったん降ろしましたが、逃げないように周りを巨大な手で覆っていました。

樫の木庵のマボ(第1巻 全話完結)|遥ナル (note.com)

マボ:5歳の男の子。臆病で控えめだが、優しい子供。家は貧しく、町はずれの傾いた掘立小屋で暮らしている。
モモ:5歳の女の子。おてんば、おしゃべりで元気な子供。施設育ちで、街一、二位を争う金持ちシュールレ奥さんにひきとられている。
ネネ:5歳の女の子。お金持ちの子供で、つんとおすまししたお嬢様。

ニルバーニア:めったに人界に姿を現さない大賢者。若い娘のような顔立ちだが、老婆のような話し方をする。動物(特に鳥族と仲が良い)と話すごとができ、様々な魔法を使うことができる。自宅のログハウスでは、猫のピッピをかわいがっている。

キッチュ:エルフの女の子。愛しのバブバブ坊やを探している。人間の子供を見つけると、虫に変えようとする。

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