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プロローグ3-8(ソック、ナウマンにつきまとう!)-サイレント・ネオ-boy meets girl-
家から追い出されたソックはとぼとぼと道を歩きながら、
「なんだ、あのどど子は!? 一家の主を何と心得る、たかがボーナスをなくしたぐらいで、家を追い出すとはけしからん!」
と、ぶつぶつと文句を言うしかなかった。
ソックはすぐに、大変なことに気付いていた。ポケットをまさぐるも、一銭もお金がないのだ。
持参しているのはウクレレと常に首にかけている軍の身分証明書くらいしかなかった。
こうなると背に腹はかえられない。
ソックはすぐ近くの軍の独身寮に住むハインリヒ・ナウマンをたずねた。
幸か不幸か、部下であるナウマンは間もなくやってくるであろう彼女を待ち、独身寮の前で口笛を吹きながら車を熱心に拭いていた。
ナウマンも彼女を連れてララに旅行にいく予定なのだ。
しかも、ララでプロポーズもしようと、懐には結婚指輪をしのばせていた。
そこに家を追ん出され、ウクレレを背負ったソックが現れたのである。
「よう、ナウマン!」
ソックはいつになく笑顔で明るく言った。それはソックが考えうる最高の笑顔で、歯がむきだしになるほどである。
「あれ、ソック副隊長。確か、ソック副隊長は明日、ララに行く予定ですよね、そのかっこう…?」
ナウマンはソックの服を指さし、不思議そうに言った。
「まあ、いいじゃないか、細かいことは…お前あれだろ、これから彼女と旅行だろ。うらやましいな」
ソックはなれなれしく肘でナウマンを小突いた。
「いや、そうなんですけど…ソック副隊長は何の用でこられたのですか?」
「俺か…俺はまあ、なんというか、かわいい後輩のために一肌脱ごうというか…そのなんだ…」
「はあ…」
要領を得ないソックに、ナウマンも首をかしげている。
「ところであれだな、ちょっと暑いな…」
「そうですね…ちょっと、車の中で休みますか、クーラーをかけますよ」
人の良いナウマンは親切心を働かせたが、これが非常にまずかった。
「そうか、何だか悪いなあ。旅行前に…」
「いえいえ、ちょっとぐらいなら平気ですよ! それにクーラーが効いていたら彼女も喜ぶだろうし…」
ナウマンは運転席でエンジンをかけると、ソックを車の後部座席に招き入れた。
「うーん、やっぱりクーラーは最高だな。うん、うん、この後部座席もすわり心地がいい。眠くなってしまいそうだ」
「そ、そうですか…」
そこに、ナウマンの彼女であるリサがやってきた。
ソックはリサを見るなり、
「ナウマン、お前にはできすぎた彼女じゃないか、こんなかわいい子をよくつかまえたな!」
とほめそやして、すぐに窓を開けた。
それから、
「はじめまして、ナウマンの上司をしているジャック・ソックです」
とリサに向かって極めて紳士的に挨拶をした。
「あら…ナウマンがお世話になっております。リサと申します」
リサもリゾートに行くのを楽しみにしているのだろう。
キャミソールに薄手のガーディガンを羽織、ジーンズデニムパンツという開放的なかっこうである。
「リサさんね…本当にできた彼女だな、ナウマンにはもったいない。いや、それにしてもおじさんにはちょっと刺激が強いかっこうだな、はっはっは」
ソックは一人で笑っている。
「うん、それにしても夏のクーラーはいいなあ、ここに住みたいぐらいだ」
つづく…
→プロローグ:3-1 3-2 3-3 3-4 3-5 3-6 3-7 3-9
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